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「AIが生成した作品は著作権で保護される余地がない」との判決が下る


AIによって制作された作品が著作権で保護されるかをめぐる裁判で、「著作権の主張には著作者が人間であることが必要」だとして、AIの作品の著作権登録を求めた原告の訴えを退ける判決を下しました。一方裁判を担当した判事は、AIが人によって制作された作品でトレーニングされた場合における保護の範囲など、生成AIの登場により今後難しい課題が生じてくるだろうとの予想も示しています。

Artificial Intelligence Lawsuit: AI-Generated Art Not Copyrightable – The Hollywood Reporter
https://www.hollywoodreporter.com/business/business-news/ai-works-not-copyrightable-studios-1235570316/

AI-generated art cannot be copyrighted, rules a US Federal Judge - The Verge
https://www.theverge.com/2023/8/19/23838458/ai-generated-art-no-copyright-district-court

2023年8月18日に判決が下された今回の裁判は、ニューラルネットワーク企業・Imagination EnginesのCEOであるスティーブン・セイラー氏が、「クリエイティブ・マシン(Creativity Machine)」というAIシステムによって生成された作品の著作権はAI、ひいてはその所有者である自分が保有するはずだと訴えたものです。

以下が、セイラー氏が「クリエイティブ・マシンが自発的に生成した」と主張する作品である「A Recent Entrance to Paradise」です。


セイラー氏はこの作品の著作権を当局に申請しましたが、当局は著作権による保護には「人間の精神と創造的表現の結びつき」が必要だとして申請を却下しました。

これに対しセイラー氏は、「職務の一環で文芸・音楽・映像・ソフトウェアといった著作物を創作した場合、創作した個人本人ではなく、創作を指揮・監督した雇用主や業務委託者が著作権を有する」とする職務著作の原則を引用し、AIに生成させた当該作品の著作権は自分が所有すると主張していました。

そして、コロンビア特別区連邦地方裁判所のベリル・A・ハウエル判事は今回の判決で、「作者が人間であることは著作権の基本的な要件である」として、AI作品の著作権登録を拒否した当局の主張を支持しました。


過去の裁判でも同様の見解が示されており、ハウエル判事の判決はAIが生成した作品には著作権が認められないというこれまでの司法判断を改めて擁護するものとなっています。

「AIを発明者とは認めない」という判決がアメリカで下る、他方オーストラリアは「認める」 - GIGAZINE


一方でハウエル判事は、「アーティストが新しい映像作品などを生成する際にAIをツールとして採り入れるようになってきており、著作権における新しいフロンティアが近づいているのは間違いありません。生成された作品から人間の創造性が減っていくにつれて、AIツールのユーザーが生成された作品の著作者として認められるにはどのくらい人間の入力が必要なのか、出力された画像はどのくらいの範囲で保護されるのか、AIが既存の作品によってトレーニングされた可能性がある場合はどう評価すべきかなどといった難しい問題が生じるでしょう」とも述べました。

すでに、生成AIをめぐって数多くの訴えが提起されており、AIが生成した画像を使用したグラフィックノベルの裁判でストーリーや画像の配置に著作権が認められ、原告が判決を歓迎すると表明した事例もあります。またソフトウェアの分野では、GitHubのコードで学習した「Copilot」の提供は著作権の侵害であるとする集団訴訟も行われています。

セイラー氏の弁護士であるライアン・アボット氏は、「私たちは裁判所の著作権法の解釈に謹んで反対します」と述べて、判決を不服として控訴する意向を示しました。

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in ソフトウェア,   アート, Posted by log1l_ks

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