アート

「AIが作った芸術作品に著作権はない」とアメリカ著作権局がAIの著作権を否定


技術の進歩により、アートを生成するAI音楽を作曲するAIが登場するようになりました。そこで問題となる「AIが生成したアートの著作権」について、アメリカの著作権当局が「AIが作った作品に著作権はない」との判断を下したことが分かりました。

2022.02.14 SIGNED Paradise (AI) Draft Review Board Letter
(PDFファイル)https://www.copyright.gov/rulings-filings/review-board/docs/a-recent-entrance-to-paradise.pdf

The US Copyright Office says an AI can’t copyright its art - The Verge
https://www.theverge.com/2022/2/21/22944335/us-copyright-office-reject-ai-generated-art-recent-entrance-to-paradise

アメリカ合衆国著作権局は2022年2月14日に、「Creativity Machine」と名付けられたアルゴリズムが生成した絵画に著作権を認めるよう求めた申請を却下したことを発表しました。発表の中で同局は、「AIが生成した画像には著作権によって保護されるのに必要な基準である『人間の著作権』の要素が含まれていない」と決定したことを表明しています。

以下が、AI研究者のスティーブン・セイラー氏が著作権保護を求めたCreativity Machineの作品「A Recent Entrance to Paradise」です。この画像は、セイラー氏が「臨死体験のシミュレーション」と題したシリーズの1つで、アルゴリズムを用いて写真を再加工して制作された作品とのこと。元となった写真を含め人がまったく関わっていないわけでありませんが、人間の介入が最小限になっているという点が、「人間の著作権の要素がない」と判断された理由になったと見られています。


この作品に限らず、著作権保護当局や裁判所は「人間の精神と創造的表現の結びつき」が著作権の重要な構成要素だと考えており、人間以外の主体が生み出したものに対して著作権を認めることには消極的な姿勢を示しています。例えば、天界からの啓示により筆記されたと主張される新興宗教の教典の知的財産権が争点となった1997年の裁判で裁判所は、「著作権法が保護することを意図しているのは神のような存在の創造物ではないため、当該書籍が著作権を有するには人間の創造的要素が必要である」との見解を示しています(PDFファイル)

また、野生のサルによる自撮りの著作権が問題になった裁判でも、アメリカの司法当局は「サルが偶然シャッターを押した写真の著作権をサルが所有することはできない」との判決を下しました。

著作権が問われた「サルの自撮り」の法廷闘争がついに完全終結 - GIGAZINE


IT系ニュースサイトのThe Vergeによると、今回のAIの絵画についての判決は、AIが関与したあらゆるアート作品が著作権で保護されないとするものではないとのこと。そのため、誰かが他人の作品を「AIが生成したものだ」と主張した場合、今回とは異なる結果になる可能性があります。また、セイラー氏が別の作品についての訴えを起こした場合、著作権局が別の判断をするということも考えられます。

その上でThe Vergeは、「今回の著作権局の判断は、機械で生成された作品における人間の主体性の重要さを強調したものです。ただし、今後AIがアーティストの活動の中で大きな役割を果たすようになれば、この結論の限界が試され続けることになると考えられます」と指摘しました。


なお、セイラー氏は以前AIを特許の発明者として申請しようとしましたが、この時もアメリカ合衆国特許商標庁が「発明者になれるのは自然人に限られる」と判断したことで特許の登録に失敗しています。

「AIは特許申請時の発明者として登録できない」とアメリカ特許商標庁が公式見解を発表 - GIGAZINE

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in ソフトウェア,   アート, Posted by log1l_ks

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