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「AIを発明者とは認めない」という判決がアメリカで下る、他方オーストラリアは「認める」


アメリカ特許商標庁が2020年4月に発表した「AIを発明者とは認めない」という見解の是非を問う裁判について、アメリカではアメリカ特許商標庁の見解を支持する一審判決が、オーストラリアではアメリカ特許商標庁の見解を支持しない一審判決が下りました。

IN THE UNITED STATES DISTRICT COURT FOR THE EASTERN DISTRICT OF VIRGINIA
(PDFファイル)https://regmedia.co.uk/2021/09/04/ai.pdf

Commissioner to appeal court decision allowing artificial intelligence to be an inventor | IP Australia
https://www.ipaustralia.gov.au/about-us/news-and-community/news/commissioner-appeal-court-decision-allowing-artificial-intelligence

Only 'natural persons' can be recognized as patent inventors, not AI systems, US judge rules • The Register
https://www.theregister.com/2021/09/04/ai_patent_ruling/

US judge rejects bid for patent by AI 'inventor'
https://techxplore.com/news/2021-09-patent-ai-inventor.html

今回の裁判の争点となったのは、2020年4月にアメリカ特許商標庁が発表した「AIを発明者とは認めない」という見解です。2019年、アメリカ・ミズーリ州のAI開発組織Imagination Enginesの創設者であるスティーブン・セイラー氏が、自身が開発した「DABUS」というAIを用いて「形状が変形する食品容器」に関する技術と「非常用懐中電灯」に関する技術を発明。セイラー氏はこの技術に関する特許出願を行う際に、AIであるDABUSを発明者として申請しました。

この一件から巻き起こったのが、「AIを発明者として認めるのか否か」という議論です。従来のアメリカ特許法においては「発明者として資格を持つのは『個人』に限られる」という条項があるのみで、AIが発明者になるというケースは想定外。セイラー氏と特許法の専門家グループは「セイラー氏自身は食品容器や懐中電灯に関する専門知識を有しておらず、出願した技術はあくまでDABUSが開発したもの」として、AIを発明者として認めるように求めましたが、アメリカ合衆国特許商標庁は「発明者になれるのは自然人に限られる」と公式見解を下しました。

この一件については、以下の記事で詳しく解説しています。

「AIは特許申請時の発明者として登録できない」とアメリカ特許商標庁が公式見解を発表 - GIGAZINE


この公式見解が発表されたことを受け、セイラー氏らはアメリカとオーストラリアで「AIを発明者として認めるか否か」に関する訴訟を展開。そして2021年9月4日、バージニア州東部連邦裁判所がセイラー氏の訴えを退ける判決を下しました。

審理を担当したレオニー・ブリンケマ裁判官は、被告となった特許庁のドリュー・ハーシュフェル長官の見解を支持し、「個人とは自然人に限られる」と裁定。判決文の中で、「特許法の範囲を拡大してAIを発明者として認めるとしても、それは議会の管轄である」と語りました。


この判決についてセイラー氏陣営は上訴の構えを見せていますが、他方オーストラリアではアメリカとは逆の「AIを発明者として認める」という一審判決が下りました。

オーストラリアの一審判決に関して、被告となった特許関連の行政機関・IPオーストラリアは上訴を決定。この上訴はオーストラリア政府の政策的立場とは無関係であるとしつつ、「公共的に重要である」とコメントしています。

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in ソフトウェア, Posted by darkhorse_log

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