ビル・ゲイツの回顧録「Source Code: My Beginnings(ソースコード:私の始まり)」出版にあわせたインタビューが公開される
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by Governor Tom Wolf
Microsoftの創業者として知られるビル・ゲイツ氏が、2025年2月4日(火)に全3部作となる回顧録の1作目「Source Code: My Beginnings(ソースコード:私の始まり)」を発表します。この回顧録の出版にあわせて、日刊紙のニューヨーク・タイムズがゲイツ氏へのインタビューを公開しました。
Bill Gates Isn’t Like Those Other Tech Billionaires - The New York Times
https://www.nytimes.com/2025/01/30/technology/bill-gates-tech-billionaires-memoir.html
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◆他のハイテク億万長者とゲイツ氏の違いとは?
ニューヨーク・タイムズの記者であるデイビット・ストライトフェルド氏は、近年注目を浴びているテクノロジー業界の大物には政治思想が右に偏っている人物が少なくない中で、比較的左寄りの思想を持つゲイツ氏は目立っていると指摘。この点についてゲイツ氏は、「私はいつも、シリコンバレーは中道左派だと思っていました。今、中道右派のグループが大きくなったという事実は、私にとって驚きです」と述べています。
また、ゲイツ氏は基本的にテクノオプティミスト(テクノロジー楽観主義者)であるものの、SNSの発展によって政治的分断の加速といった予期していなかった悪影響が生じたことを認めています。また、仮想通貨や非代替性トークン(NFT)については否定的な考えを持っており、仮想通貨については「何の使い道もありません。IQが高い人は自分自身をだましているだけです」と主張しました。
AIについてはゲイツ氏自身も投資を行っており、グラフィカルユーザーインターフェース以来の革命的な進歩だと考えています。その一方で、「今、私たちはAIを使用する悪い人々を心配しなければなりません」と述べるなど、使い方によっては問題が生じるという見方をしています。
MicrosoftはWindowsを展開することで1990年代に大きく成長しましたが、その一方でゲイツ氏にはネガティブなイメージがつきまとい、1998年にはアメリカ司法省から独占禁止法違反の疑いで提訴されました。しかし、近年のゲイツ氏は慈善事業に数十億ドル(数千億円)もの寄付を行っており、大富豪であるにもかかわらず資産をひけらかすような行動を見せないことから、ゲイツ氏に対する反感は和らいでいます。テクノロジーアナリストのポール・サッフォ氏は、「(その他の権力を持って強権的になる億万長者と比較して)ビル・ゲイツ氏は聖人のようだというのが共通認識です」と述べています。
なお、ストライトフェルド氏はゲイツ氏が2021年に元妻のメリンダ氏と離婚したほか、売春あっせんで起訴されたジェフリー・エプスタイン被告との交際が取り沙汰されるなど、いくつかの騒動で評判を下げたことにも言及しました。また、ゲイツ氏はMicrosoftの取締役を退く前、Microsoft幹部から「女性従業員に不適切なメールを送るのはやめるべき」と進言されていたことも報じられています。
ビル・ゲイツは「女性社員に不適切なメールを送ること」をやめるようMicrosoftの幹部から進言されていた - GIGAZINE
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◆億万長者は非合法化されるべきなのか?
ゲイツ氏が出演した2024年のNetflixのドキュメンタリーシリーズ「What‘s Next? ビル・ゲイツと考える未来の展望」では、第4回に「富裕層は社会に必要なのか?」というトピックを取り上げました。その中でゲイツ氏は、民主社会主義者として知られるバーニー・サンダース上院議員らに「あなたはお金持ちになりすぎましたか?」と質問しており、このような富に対する自己批判的な言及は、億万長者としては珍しいとストライトフェルド氏は指摘しています。
しかし、番組内でゲイツ氏は「億万長者を非合法化するべきですか?」という質問に対しては、「それに対する私の答えは、偏っていると言われるかもしれませんが『ノー』です」と回答。その一方で、より多くの税金を億万長者から徴収する累進的な課税には賛成しています。ゲイツ氏は自身がこれまで支払ってきた税金を、消費税を除いておよそ140億ドル(約2兆1600億円)ほどと計算していますが、より良い累進課税制度があればその金額は400億ドル(約6兆1700億円)だったと推定しました。
ゲイツ氏は非政治的であろうと努めていますが、2024年のアメリカ大統領選挙には初めて財政的な関与を行い、民主党候補のカマラ・ハリス氏を支援する主要な外部資金調達グループに5000万ドル(約77億2000万円)を提供したと報じられています。しかし、この件についてゲイツ氏は公に話すつもりはないそうです。
なお、ストライトフェルド氏がゲイツ氏にインタビューを行った後、ゲイツ氏はトランプ新大統領と3時間にわたり会食し、HIVやポリオといった健康問題について話し合ったと報じられました。ゲイツ氏は、「私は最初のトランプ政権の時と同じように、できる限り政権に関与するつもりです」とコメントしました。
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by Gage Skidmore
◆子ども時代に両親から受けた影響や反抗期
「億万長者の幼少期」と聞くと何か劇的なイベントがあったり、神童的なエピソードがあったりするのが一般的です。しかし、ゲイツ氏が1960年~1970年代にシアトルで過ごした子ども時代は、本質的にドラマチックなものではなかったとのこと。「多くの人は幼少期がいかに過酷だったか、そしてその出来事が競争心をあおる一因になっていると語ります。私にはそういうものがありません」とゲイツ氏は語っています。
その一方でゲイツ氏の母親は、当時の上流階級の女性としては珍しく社会活動に積極的で、非営利団体の資金調達キャンペーンであるUnited Wayのキング郡支部で初の女性代表を務めました。「彼女は私にとって強烈過ぎました」と、ゲイツ氏は当時の母親のことを回想しています。
母親は食事のマナーや生活態度に厳しい人でしたが、ゲイツ氏はそうした母親の考え方に反発することも多く、反抗的な態度を取ったりプログラミングに没頭したりしていたとのこと。6年生(日本の小学6年生に相当)の頃、ゲイツ氏は何日も食事と学校の時以外は部屋から出ず、親からの指示に何も従わない時期もあったそうです。ゲイツ氏は、メアリー氏は息子が何を必要としているのかを、直感的に理解していたのかもしれないとも考えています。ゲイツ氏は、「私は母の期待を超えたかったのです。彼女はいつもハードルを上げるのがとても上手でした」と語りました。
ゲイツ氏は10代の自分について、もし現代の病院で診察を受けていたら自閉スペクトラム症と診断されていたかもしれないと述べています。今ではゲイツ氏は、自身が持つ自閉症的な傾向がMicrosoftに優位性を与えたと考えているそうです。
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◆現代のテクノロジーを取り巻く問題
「Source Code: My Beginnings(ソースコード:私の始まり)」の終わりは、Microsoftが設立された時点となっています。Microsoftが開発したスプレッドシートやデータベース、ワードプロセッシングは現代から見れば原始的なツールであったものの、ユーザーの生産性を大きく向上させました。しかし、当時のゲイツ氏らは「未来はもっと良くなる」とばかり考えて、物事のマイナス面を見ようとはしてこなかったとのこと。
その後もゲイツ氏は長い間、テクノオプティミストとしての立場をとり続けてきました。2017年にはイスラエルの哲学者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書「ホモ・デウス」を読み、その中で警鐘が鳴らされているエリートと大衆の格差拡大について、「この未来は定まったものではありません」と批判的なレビューをしています。
しかし、現代人のテクノロジー依存を批判的に分析したハラリ氏の最新著書「NEXUS 情報の人類史」を読んだゲイツ氏は、「ハラリ氏は情報が増えるのは常にいいことだと考えていた私のような人間をバカにしています。基本的には彼が正しく、私が間違っていたと言いたいです」と述べ、テクノロジーの発達が悪い影響をもたらしたことを認めました。
とはいえ、ゲイツ氏はハラリ氏に謝罪したわけではなく、依然としてテクノロジーの力と良さを信じ続けています。その上で、母親が伝えた「マナー良くすること」「良いことをすること」「夢中になりすぎないこと」といった教訓がまだゲイツ氏の心の中に残っていると、ストライトフェルド氏は述べました。
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by COP26
ゲイツ氏の回顧録3部作の第1作、「Source Code: My Beginnings(ソースコード:私の始まり)」は2025年2月4日(火)に出版される予定です。
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in メモ, Posted by log1h_ik
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