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ビル・ゲイツが「私たちはパンデミックの準備ができていたのか?」を語る


Microsoftの創業者であるビル・ゲイツ氏は、2015年から「戦争や核に準備するように、人類は疫病の大流行に対して準備を進めなければならない」と訴えてきました。ゲイツ氏がパンデミックで多くの死者を出さないようにするためにすべこととして提案した内容は以下から読むことができます。

ビル・ゲイツが「もし次の疫病大流行が来たら」を語る2015年公開のムービー - GIGAZINE


ゲイツ氏の予測通り、2020年になって世界的に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大流行していますが、ゲイツ氏はこの状況をどう見ているのか、2020年3月25日にゲイツ氏が語っています。

How we must respond to the coronavirus pandemic | Bill Gates - YouTube


まずゲイツ氏は「2015年にあなたが行った警告について人々は耳を傾けましたか?」と問われ、「残念ですが、その答えは『いいえ』です」と回答。いくつかの機関はワクチンという側面で進展があったものの、診断や抗体、抗ウイルス薬という面では、病気との闘いにおいて「すべきこと」として講演で挙げた内容は実施されてこなかったとゲイツ氏は答えました。


ただ、天然痘は患者の30%を殺しますが、COVID-19にかかった人は多くが生き延びることができます。これはつまりCOVID-19がSARSやMARSよりも感染力が高く、致命的ではないことを意味しています。COVID-19の流行は前例を見ない事態ですが、うまく抑えることができれば多くの人を死から救える可能性があるとのこと。一方で、今後さらに致死性が高い呼吸器型ウイルスが発生する可能性があることにもゲイツ氏は言及しました。

2015年の講演ではスペインかぜこと1918年インフルエンザウイルスがいかに広がっていったのかというシミュレーションを示しましたが、2020年という時代は、1918年よりもずっと人が流動的になっています。これが感染を広めた一因ではあるものの、一方で、人々を治療するための医療システムも進化しています。


ゲイツ氏が最優先で議論すべきと考えているのは「検査」について。現段階で、多くの地域において検査が追いついておらず、必要な人が検査できないという状況が続いています。医療従事者の多くも、検査が必要にも関わらず、検査ができていません。「検査」を受けられるようにすることが最重要であるとゲイツ氏は強調しました。

そして次に「隔離」について。隔離は人々にとって耐えがたく、経済にも打撃を与えます。しかし、隔離を行うタイミングが早ければ早いほど、日常に戻れるタイミングも早く訪れます。

ムービーでインタビュアーは「賢明な科学者たちは、このような状況になることがわかっていたはずです。ゲイツ氏もまた、2020年2月の時点で感染者数や死亡率を使ってシミュレーションを行っていますが、なぜ何百人もの人々が死ぬと分かっていて、このような『賢明な人々』が1カ月間で行動を起こせなかったのか」という点について尋ねました。

ゲイツ氏はこの点について、2月の時点で状況が把握できていながらそれを有利に働かせることができなかったと認めつつも、家庭用PCR検査キットの開発が進んでおり、医療機関の負担を減らせることを述べました。研究者たちは検査キットのデータをアメリカ食品医薬品局(FDA)に送ったところであり、実用化には至っていませんが、うまくいけば「患者に綿棒を送り、綿棒を送り返してもらうだけで、24時間以内にテスト結果が患者のもとに届く」ようになるとのこと。

この検査法が医療機関を介して行われるのか、それともAmazonのような宅配サービスで届けられるのかは、記事作成時点では未定とのこと。しかし、ゲイツ氏の頭の中ではウェブサイトを設置し、アメリカ政府あるいは地方政府が主導で行われるイメージが描かれているようです。


一方で、検査を拡大させると、本当であれば隔離させるべき人々を1箇所に集めてしまう可能性があります。この点について、ゲイツ氏は、「検査を受けることで『自分は隔離すべきだ』と判断する指針になる」と考えています。つまり、無症状患者の多いCOVID-19において、症状が軽い人は活動しても大丈夫だと考えてしまいがちですが、検査で陽性が出ることで「自分は隔離すべき人だ」という自覚が出るというわけです。このため、「検査を拡大する」「人々が密集しない方法で検査する」という2つセットである必要があるわけです。

また、「隔離戦略によって得られるもの」についても多くの人が注目しています。みんなが家にこもり、日常業務を数カ月にわたって行わなければ、経済に与える影響は計り知れません。多くの国が行う隔離戦略は間違えである可能性もありますが、ゲイツ氏はこの点について「集団免疫により乗り越えるという戦略もありますが、集団免疫は人口の半分以上が感染するまで意味がありません。医療システムに負荷がかかるため、致死率は1%ではなく、3~4%まで上昇します。これは非常に無責任なアイデアです」「必要なのは極端なシャットダウンです。うまくいけば6~10週間で日常に戻ることができます」とコメント。ヨーロッパでは多くの人が「人口の1%が病気になる」という事態を重く受け取らなかった一方で、韓国ではこの事態を重く見て早期に検査を行ったために極端な封鎖が実施されるまでに至らなかったとのことです。

そして、「もし自分が大統領だった場合に何をするか?」と尋ねられたゲイツ氏は「まず『隔離戦略以外に方法がない』と明確なメッセージを発すること。そして、一定期間それが続くこと……中国のケースを見ると、6週間ほどですね。それに対して人々に備えさせることです。隔離がうまくいけば20日以内に数値は実際に変化します。経済に与える影響は計り知れませんが、経済を回復させることは、死んだ人を生き返らせるよりは容易です」とも語りました。


また、豊かな国で機能することが、途上国で機能するとは限りません。経済的に苦しい人は食べていくために働かざるをえず、スラムに住んでいる人が人と社会的距離を開けるのは困難です。このような国では、ワクチンや薬の開発に頼らざるを得ません。感染者の5%に人工呼吸器が必要という状況を鑑みても、途上国の被害を最小に抑えるためには、豊かな国が資金を提供し、ワクチンや医療物資を提供することが不可欠だとゲイツ氏は述べました。新型コロナウイルスの流行によって多くの国が他国を非難し始めていますが、ゲイツ氏は「今は協力の兆候と敵対の兆候の両方が見えます」としており、回復した国は他国を助けるべきであり、偏見は避けなければならないと述べました。

加えて、アフリカや南アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、インドネシアといった南半球では新型コロナウイルスの流行があまり見られないことにもゲイツ氏は言及し、「感染力が低いのか、それとも検査結果に表れていないのかはわかりません。新型コロナウイルスが季節性のものであるかどうかは、今後の数カ月で明らかになるはずです。それは北半球にとっていいニュースですが、南半球にとっては悪いニュースです。北半球にとって次の季節まで時間かせぎができるのはいいことですが、数カ月で南半球は秋冬に入ります。南半球には高齢者は少ないものの、HIV陽性の人が多くいますし、室内喫煙で肺に問題を抱える人もいます。ウイルスの変異も考えられます」と途上国の対処について懸念を示しました。

最後にゲイツ氏は「5年前、私はパンデミックが『準備のできていない脅威』だと語りました。もし正しい行いがされてきたのなら、我々は今回、もっと準備ができていたはずです。しかし、私たちには科学があります。次のパンデミックに備える方法は明確です。何百億ドルと必要でしょうが、何千億、何兆ドルというわけではありません」とし、痛みや困難を伴うものの、人々が互いを助け合うためにステップアップすることは可能だという見方を示しました。

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in 動画, Posted by darkhorse_log

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