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スペインかぜから学ぶパンデミックの教訓4つ


1918年から1919年にかけて全世界的に大流行したインフルエンザ、通称「スペインかぜ」は致死率2.5%以上で、死亡者数は全世界で4000万人~1億人といわれています。甚大な被害を及ぼしたスペインかぜはなぜこんなにも大流行したのか、そこから得られた教訓4つがイギリスの大手新聞the Guardianで論じられています。

Four lessons the Spanish flu can teach us about coronavirus | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2020/mar/03/four-lessons-the-spanish-flu-can-teach-us-about-coronavirus

◆1:パンデミックに名前をつけない


「スペインかぜ」と呼ばれる1918年のインフルエンザですが、最初に症状が報告されたのは1918年、第一次世界大戦で戦うヨーロッパの兵士たちでした。新型インフルエンザは従来の季節性インフルエンザよりも強烈で、塹壕の環境が劣悪だったことが流行の要因と考えられました。しかし、「『スペインかぜ』が塹壕で流行している」という弱みを知られないようにするため、イギリス・フランス・ドイツといった国々は新型インフルエンザの流行を隠したとのこと。そして、第一次大戦において中立国家だったスペインに病気が上陸して初めて、正確な報告が出され、パンデミックに名前がつきました。

国や民族と病気を結び付けて誤認することは、差別や汚名につながります。インフルエンザのダイナミクスについて研究する数学者であるケンブリッジ大学のJulia Gog教授は、スペインかぜという名称が、その後長期にわたりスペインに対する攻撃を生み出したと指摘。「私たちは『1918年のインフルエンザ』と注意して呼ぶようにしています。この病気はスペインが起源ではないのです。『伝染病が初めて現れたと言われる場所は、たいがい最初の場所ではない』という冗談があるほどです。武漢は正しいかもしれませんが」とGog教授はコメントしています。

◆2:真実を伝え人々に警告する


1918年にインフルエンザが流行した時、各国の当局は兵士の士気が下がり国が混乱することを避けるため、「スペインかぜは大したことではない」という安心感を生み出そうとしました。1918年6月、イギリスで大流行が起こる前に大衆紙であるDaily Mailは「新型インフルエンザはかぜよりも深刻ではなく、多くの死者を生み出すものではありません。人生を前向きに考えましょう」といった論調の記事を出版しており、The Timesも当初はジョークを飛ばすような軽い受け止め方だったそうです

ロンドン大学の医療歴史学者であるMark Honigsbaum氏は、「全ての伝染病は、その存在が無視できなくなるまでは脅威が否定されるという、似たような弧線を描きます」と述べており、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)についても一部のリーダーによって軽視されている点が懸念されるとのこと。伝染病の深刻さを軽んじるコメントは、人々の脅威へのアドバイスに対する反応を変えてしまう、とHonigsbaum氏は語りました。

◆3:制御されていなムーブメントは悲劇を生み出す


1918年インフルエンザが流行した理由の1つに、戦争の存在が、人々の行動をねじ曲げたということが挙げられます。通常であれば病気の人々はベッドで体を休めますが、第一次大戦中は最前線に送られました。これが病気を短時間で流行させ、多くの国は戦争と公衆衛生のバランスを取るのに困難を極めたとのこと。

入港船・出港船の取り締まりが遅れたニュージーランドでは1918年後半、およそ2カ月の間で人口の1%が死亡しました。またこれがサモア独立国での大流行のきっかけとなり、最終的にサモア独立国では男性の30%、女性の22%、子どもの10%が死亡しました。

◆4:第2波の危険性


1918年インフルエンザの第1波はそこまで深刻なものではありませんでしたが、8月になるまでには第2波がフランスからヨーロッパ、イギリス、全世界に広がりました。この頃にはウイルスがより致死性が高いものに変化し、まだ人々が暴露されていない地域を襲いました。

インフルエンザウイルスはコロナウイルスと根本的に異なり、そのゲノムが頻繁に変化、つまり株が急速に変形します。このためインフルエンザワクチンは毎年うつ必要があります。一方で新型コロナウイルスは遺伝子的に安定しており、突然変化し新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の致死率を上げるとは考えられていません。ただし、新型コロナウイルスがこのまま終息するのか、第2波があるのか、それとも風土病となるのかという問いについては、いまだ答えが出ていないとのことです。


ウイルスの伝染は温度や湿度に大きく影響されるため、当初新型コロナウイルスは春に終息して翌冬に再び現れるという見方がされていましたが、イランなど暖かい地域でも流行が見られることから「夏に向かって病気が収まっていく」という考えは合理的ではないとGog教授は述べています。

また第2波の有無は、一度ウイルスにかかった人が、その後長期にわたって免疫を維持できるかどうかにも関係します。日本では感染後回復した人に再度陽性反応が出たという報告があり、回復後数週間から数カ月で免疫が衰える可能性も考えられるとのこと。これによる第2波もあり得ますが、この可能性は症例が増えるにつれ専門家が見解を出すことになるとみられています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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