ペストやスペインかぜなど伝染病の歴史から生まれた「5つの隔離島」とは?
By Garry Knight
「黒死病」と呼ばれたペストや、発疹チフス、黄熱、スペインかぜ、ハンセン病などの大流行した伝染病は数多くの人の命を奪ってきました。医療の発展によって各伝染病の危険を抑えられるようになっていますが、ワクチンが開発されるまでは致死率の高い強力な伝染病に対して「隔離」という対策が取られたのは当然の経緯なのかもしれません。そんな伝染病の拡大を防ぐために生まれた世界各地の「隔離島」がHakai Magazineでまとめられています。
Five Islands We Are Really Sick Of | Hakai Magazine
http://www.hakaimagazine.com/article-short/five-islands-we-are-really-sick
◆1:サンタ・マリア・ディ・ナザレ(イタリア)
By Baltasar Vischi
14世紀のヨーロッパでは「黒死病」の別名を持つペストの大流行によって、全人口の約3割が命を落としました。初めてペストがヨーロッパに上陸したのは1347年のイタリアと言われており、強力な感染病が地中海の港から上陸していることに気付いたヴェネツィア共和国当局は、検疫のため港に着いた船を40日間にわたって強制停泊させる法律を作りました。この「40日間」は、悪魔に誘惑されたイエス・キリストが砂漠を放浪した期間からきているとされていますが、疫病の潜伏期間としても正しかったとのこと。
1377年にはラグーザ(ドゥブロヴニク)が孤島でペスト感染者の隔離を開始。ヴェネツィア共和国もそれに従って、サンタ・マリア・ディ・ナザレ島で感染者の隔離を開始したことで、世界初の総合検閲所を設けた「隔離島」が生まれたというわけです。その影響から、島の名前に含まれる「Nazareth」はイタリア語の「Azaretto」の語源となり、現代でも病気を隔離する意味を持つ言葉として使われているとのことです。
◆2:パートリッジ島(カナダ)
By Magnus Manske
1840年代に発生したジャガイモ飢饉によって、ジャガイモを主食としていたアイルランド人の間から、100万人以上とも言われる餓死者が出ました。飢饉から逃れるために何百万人ものアイルランド人がアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどへ移民として旅立ちましたが、飢饉で好発する発疹チフスが流行していたため、移民船の中では10人に3人が新天地を踏むことなく死亡していたとのこと。
発疹チフスを患った大量の移民流入に備えるため、カナダはニューブランズウィック州にあるパートリッジ島を感染者の隔離島として使用。1847年におよそ10万人のアイルランド難民がカナダへ到着しましたが、そのうち1万5000人をパートリッジ島に滞在させていたとのことです。後に発疹チフスのワクチンが発明されたことで、パートリッジ島検疫所は1942年に閉鎖されたという公式記録が残っています。
◆3:フロレス島(ウルグアイ)
By Baijinho
1800年代後半、ブラジル・リオデジャネイロは黄熱の温床となっていました。当時の黄熱病の検閲は、ウルグアイのフロレス島を含む3つの島で行われており、まず最初の島で24時間の監視がつけられます。病気の徴候が見られた人は、2つ目の島にある病院に鉄道で移送されて隔離されました。このプロセスの中で死者が出た場合は、3つ目の島にある火葬場に送られるという、3つの島からなる効率的な検閲システムが構築されていたそうです。
◆4:アメリカ領サモア
By sari_dennise
1915年からアメリカ領サモアの知事を務めていたのはジョン・マーティン・ポイヤー氏。1918年になり、世界的にスペインかぜの流行が始まったとき、ポイヤー知事は「隔離島」の仕組みを逆手にとったアイデアを実施します。それはアメリカ領サモア地区を封鎖し、全ての上陸船を5日間にわたって停泊させるというもの。付近の西サモアでは5人に1人がスペインかぜで亡くなっていましたが、アメリカ領サモアはスペインかぜで死者を出さなかった世界有数の場所となりました。
◆5:小鹿島更生園
1916年に設立された韓国の小鹿島更生園は、ハンセン病の隔離治療のための療養所。当時の入園患者は強制労働や麻酔なしの不妊手術、および医学的実験を強要されていたとも言われています。1945年には小鹿島虐殺事件という82名の犠牲者を出した事件も起こっていますが、現在は「国立小鹿島病院」に改名して存続しています。ハンセン病から回復した元患者の中にはトラウマを受けたことから残留している人も多く、世界で最後のハンセン病療養所となった小鹿島病院ですが、現代では人々の精神のケアが行われているとのことです。
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