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本来は違法なはずの市場価格操作を「アプリを通して行う」ことで法の網をかいくぐる手法とは?


企業が競合他社と談合して市場の製品価格を調整する価格操作は、自由な競争を阻害する違法行為とされています。この価格操作を「アプリを通して行う」ことで法の網をかいくぐる手法について、ジャーナリストのコリー・ドクトロウ氏が解説しています。

Pluralistic: It’s not a crime if we do it with an app (25 Jan 2025) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow
https://pluralistic.net/2025/01/25/potatotrac/#carbo-loading


近年はインフレによってさまざまな製品の価格が上昇しており、その理由としては新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックやロシアのウクライナ侵攻、原材料費の高騰などが挙げられています。本来であれば、コスト増加の段階で競合他社同士の価格競争が起こるはずですが、実際には複数の企業が足並みをそろえて値上げをするケースが多々みられます。

ドクトロウ氏は、少数の企業が大きなシェアを持つ一部の分野では企業同士がカルテルを形成し、共謀して値上げすることで利益を得ていると主張しています。今回ドクトロウ氏が取り上げているのは、ラムウェストンJ.R.シンプロットマッケイン・フーズCavendish Farmsの4社によってシェアの97%が支配されている冷凍ポテト産業です。

これらの企業は以前からじわじわと値上げを行っていましたが、パンデミック後のインフレを機に本格的な値上げにかじを切りました。調査報道機関のThe Leverに証言したスポーツバー経営者によると、これら4社は冷凍ポテト製品1ポンド(約450g)あたりの価格をほとんど同時に、ほぼ同じ金額だけ値上げしているとのこと。冷凍ポテト製品は他の供給品とバンドルされており、他のメーカーから仕入れることは事実上不可能になっているそうです。


The Leverのカーチャ・シュベンク記者は、冷凍ポテト業界を複占する4企業を「Big Potato」と呼び、Big Potatoが一種のカルテルを形成していると指摘しています。Big Potatoは業界団体やロビー活動で協力しており、幹部はカルテル内の企業を転々としているとのこと。そして、犯罪にならない方法で冷凍ポテト製品を価格操作するため、「Potatotrac」というサードパーティーのアプリを使用しているとドクトロウ氏は指摘しています。

各カルテルのメンバーは、Potatotracに供給コストや価格設定、売上高といった商業上の機密データを送信し、Potatotracはそのデータを基に企業へ「最適な価格設定」についてアドバイスします。これにより、実際に各企業のメンバーが直接談合をすることなく、協調的な値上げを実施できるというわけです。


「アプリを通して合法的に価格操作を行う」という策略は、決して冷凍ポテト業界に限った話ではありません。実際に、アメリカの食肉加工業者らは「Agri Stats」というデータブローカーを通じて、Potatotracと同じような方法で肉製品の価格操作を行っているとのこと。

しかし、ジョー・バイデン前大統領の政権はこの慣行を問題視しており、2024年にはアメリカ連邦取引委員会(FTC)が、アルゴリズムを使用した価格操作も違法になる場合があると警告。その後司法省は、不動産賃貸市場でベストな価格戦略を提案するソフトウェアを開発する「Realpage」を、反トラスト法違反で提訴しました。

アルゴリズムによる価格操作が独占禁止法に違反している場合があるとFTCが警告 - GIGAZINE


問題はドナルド・トランプ新大統領の政権でも、アプリやアルゴリズムを通じた価格操作を違法と見なす方針が継続されるかどうかです。ドクトロウ氏は、「インフレにはさまざまな原因があるというのは事実です。しかし、ある産業がデータブローカーを利用できるほど統合されていたり、暗黙の談合をしていたりする場合、戦争・病気・天候といったインフレの原因が何であれ、全セクターが一斉に価格を引き上げ、ショックが去った後もずっと高値を維持できてしまうのです」と述べ、アプリを通じた価格操作は公正な競争を妨げると主張しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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