2019年11月05日 21時00分メモ

ビットコインの価格操作に仮想通貨・テザーが利用されたという指摘

by Aleksi Räisä

仮想通貨・Bitcoin(ビットコイン)の相場は2017年2月に急騰し、約3年ぶりに史上最高値を更新しました。この価格の上昇は価格操作によるものであると一部の研究者たちが指摘しています。

Did Bitcoin Price Manipulation Fuel 2017 Surge? Study Says Yes - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-11-04/lone-bitcoin-whale-likely-fueled-2017-price-surge-study-says

ビットコインは2013年11月に1ビットコイン(BTC)辺りの史上最高値を記録しますが、2014年のMt.Gox消滅によりバブルが崩壊。その後、しばらくの間は価格が乱高下して落ち着かない時期が続いたのですが、2017年2月に約3年ぶりに史上最高値を更新しました。2013年9月から2017年2月までの値動きは以下のグラフの通り。

2017年に入って高騰したビットコインの価格について、一部の研究者から「価格操作によるものである」という指摘が出ており、2018年1月には論文形式でビットコインが価格操作された可能性が指摘されています。

ビットコインの高騰は数名による価格操作であった可能性があることを研究者が指摘 - GIGAZINE

by Antana

この論文と同じように、ビットコインの高騰は価格操作によるものであると主張する論文「Is Bitcoin Really Un-Tethered？」を、テキサス大学のジョン・グリフィン教授とオハイオ州立大学のアミン・シャムス教授が2018年6月に公表しました。論文では、仮想通貨取引所のBitfinexは特定のしきい値を下回るとビットコインの価格を上げると指摘されており、価格操作には仮想通貨のTether(テザー)が使用されたとも記されています。

Is Bitcoin Really Un-Tethered? by John M. Griffin, Amin Shams :: SSRN
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3195066

テザーはビットコインなどの価格変動の激しい仮想通貨とは異なり、アメリカドルとの等価交換を行うステーブルコインとして知られています。しかし、テザーがステーブルコインとしてドルと等価交換をしないままに新規通貨を発行し、その新規発行分がビットコインの購入に使用されたのではないかとグリフィン教授とシャムス教授は主張しています。

2人が2017年3月1日から2018年3月31日までのテザーとビットコインの取引状況を調査した結果、ビットコインの価格が一定の割合低下するたびに、Bitfinex上でテザーを用いたビットコインの買い取引が増加し、その結果としてビットコインの価格が高騰したと結論付けています。この不自然な動きについて2人は、「このパターンはテザーの新規発行後にのみ見られるもので、単一の大口のアカウント所持者により実行される、他の仮想通貨取引所では見られない動きです」と記しています。

さらに、Bitfinex上で見られるテザーとビットコインの相関性(ビットコインの価格が低下するとテザーが新規発行され、ビットコインの買い取引が増加する)について、シミュレーションの結果から「偶然により起こる可能性は非常に低い」とも指摘し、1人の大口の仮想通貨ユーザー、もしくは1つのユーザー集団が「ビットコインの価格変動に大きな影響を及ぼしている」とも指摘しています。

論文の著者であるグリフィン教授は、海外メディア・Bloombergによるインタビューの中で、「我々の調査結果は、数千人の投資家がビットコインの価格を操作しているのではなく、1つの大きな集団が価格を操作していることを示しています」と語り、ビットコインの高騰は価格操作によるものだと指摘しています。

by Dmitry Demidko

これに対してテザーで法務顧問を務めるスチュアート・ヘグナー氏は、「論文には学問的な厳密さが欠けている」として、グリフィン教授らの主張を真っ向から否定しています。さらに、「マクロ経済の専門家や仮想通貨エコシステムの利害関係者は、このような指摘は仮想通貨が世界的に台頭してきたが故のものと理解しています」とも語っています。

しかし、Bitfinexとテザーに対しての嫌疑は長らく存在しています。というのも、Bitfinexはビットコインやテザーといった複数の仮想通貨を取り扱う取引所でありながら、親会社がテザーと同じiFinexという企業であるため。2019年4月にはBitfinexの損失隠しでテザーの資金が不正に利用されたことなどが報じられ、iFinexはニューヨーク州の司法当局と度重なるやり取りに直面しています。

ただし、アメリカの司法省はテザーがビットコインの価格操作に使用されているのかどうかについて捜査を行っていますが、記事作成時点では連邦商品先物取引委員会や連邦捜査局(FBI)がBitfinexやテザーを不正行為で告発したことはありません。