アメリカの食品当局が「赤色3号」を禁止、がんを引き起こすとの動物実験を受けて
アメリカ食品医薬品局(FDA)が2025年1月15日に、合成着色料の「赤色3号」を食品および服用薬に使用することを禁止すると発表しました。その理由として、当局はラットを用いた動物実験で赤色3号が発がん性を及ぼすことが判明したためと説明していますが、「赤色3号がラットにがんを引き起こす仕組みは人間では発生しません」とも発表しています。
FDA to Revoke Authorization for the Use of Red No. 3 in Food and Ingested Drugs | FDA
https://www.fda.gov/food/hfp-constituent-updates/fda-revoke-authorization-use-red-no-3-food-and-ingested-drugs
FDA bans red dye No. 3 in food | Live Science
https://www.livescience.com/health/food-diet/fda-bans-red-dye-no-3-in-food
Red dye No. 3: FDA bans ingredient from food | CNN
https://edition.cnn.com/2025/01/15/health/red-dye-no-3-ban-fda-wellness/index.html
FDAは「連邦食品・医薬品・化粧品法のデラニー条項に基づき、赤色3号の使用許可を法律問題として取り消します」と発表しました。
デラニー条項とは、どんなにわずかであっても、人や動物にがんを引き起こすことが判明した添加物の使用は認めないという法律です。
FDAによると、赤色3号をラットに投与した2件の実験で、ラット特有のホルモン機構によりオスのラットにがんが発生したとのこと。実験のうち1件では、オスのラット70匹に、生涯に摂取する標準的な量の4%に相当する高容量で赤色3号が投与されました。その結果、15匹のラットの甲状腺に腫瘍が発生しましたが、そのほとんどはがんではありませんでした。また、低容量で投与されたオスのラットには問題がなかったほか、メスのラットでは投与量にかかわらず腫瘍が発生しませんでした。
さらに、ラットではなくマウスを用いた実験では、マウスの性別にかかわらず腫瘍は見られませんでした。
赤色3号ががんを引き起こすメカニズムはラット特有のもので、人間では発生しないため、FDAは「食品や服用薬に赤色3号を使用すると人々に危険が及ぶという主張は、入手可能な科学的情報によって裏付けられていません」と述べました。
しかし、デラニー条項では対象が「人や動物」とされており、人間では問題がなくてもラットに大量摂取させると腫瘍が発生したことから、FDAは前述のとおり科学的な検証プロセスに基づく審査ではなく「法律問題」として赤色3号を禁止する措置を講じました。
ニューヨーク大学グローバル公衆衛生学部の公衆衛生政策・管理学准教授のジェニファー・ポメランツ氏は「人間への健康被害に関する科学的情報の有無は問題ではありません。なぜなら、デラニー条項に基づくFDAの命令では、動物や人間にがんの兆候が見られる場合、食品供給から排除しなければならないとされているからです」とコメントしました。
伝えられるところによると、FDAが赤色3号の使用許可を取り消すことを決定した背景には、着色料の発がん性を懸念する複数のロビー団体や個人らが2022年11月に提出した請願書があるとのこと。FDAに先駆けて、カリフォルニア州では2023年に赤色3号の使用が禁止されていました。
赤色3号はエリスロシンとも呼ばれる添加物で、石油から合成され、食品に鮮やかなチェリーレッドの色をつけます。FDAによると、赤色3号は主にキャンディー、ケーキ、クッキー、冷凍デザート、フロスティングやアイシングなどに使われますが、他の着色料に比べるとそれほど広く使用されていないとのことです。
赤色3号の使用禁止には猶予期間がもうけられており、赤色3号を食品に使っているアメリカの食品メーカーは2027年1月15日までに、医薬品メーカーは2028年1月18日までに、製品を再配合しなければなりません。アメリカ以外の国では使用が禁止されていませんが、アメリカに輸入される食品はこの決定に準拠する必要があります。
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