メモ

なぜ航空会社はマイレージプログラムなしでは生き残れないのか?


商品の購入額が多かったりサービスを多く利用したりするような優良顧客に対して特典を用意する施策を「ロイヤルティプログラム」と呼びます。航空会社が展開する、フライトの飛行距離や予約したクラスに応じて「マイル」がたまり、マイルに応じた特典が得られる「マイレージプログラム」もロイヤルティプログラムの一種です。なぜ航空会社がマイレージプログラムを採用し続けるのかについて、
アメリカの経済紙であるウォールストリートジャーナルがムービーで解説しています。

Why Airlines Can’t Survive Without Loyalty Programs | WSJ Case Study - YouTube


かつての航空旅行は無料のカクテルや機内ピアノ演奏があった贅沢な体験でしたが、現在は満席の機内、限られた荷物スペース、追加料金を払った座席の後ろで子どもが蹴ってくるような状況が一般的となっています。


この変化を理解するには、1978年にアメリカ連邦議会で可決された航空規制緩和法の成立まで遡る必要があります。この規制緩和により航空会社は独自のフライトやルートを設定できるようになり、これが利益と市場シェア確保のための競争を生み、世界初の航空会社ロイヤルティプログラムへとつながりました。


記事作成時点で、アメリカの航空会社は乗客1人あたり平均13ドル(約2000円)の利益しか得ていませんが、2020年の状況から、ロイヤルティプログラムは航空会社自体よりも高い価値を持つことが明らかになりました。


1970年代後半、アメリカン航空は市場での影響力を失いつつありました。


規制緩和により、新しい小規模航空会社が低価格で市場シェアを獲得し始め、従来の航空会社は同じルートを維持しながら、価格を保ち、顧客を失わない方法を模索する必要に迫られました。


広告代理店からの提案を受け、アメリカン航空は当時のボブ・クランダルCEOと外部コンサルタントのハル・ブライアリーを含む小チームを結成し、アイデアを練り始めました。


チームは商店での景品交換制度にヒントを得て、顧客に「マイル」と呼ばれるポイントを付与する「アドバンテージ」の初期バージョンを考案しました。初期の特典は単純に無料フライトでした。


アメリカン航空は、プログラムが引き付ける事業価値が特典の償還コストを上回ると見込んでいました。


平均的な消費者が年間約4万マイル飛行することを知っていた同社は、特典の基準を5万マイルに設定しました。また、プログラムに1年間の期限を設け、顧客を追跡する方法も開発しました。


当時は予約システムがまだ新しく、同一顧客の異なるフライトを紐付けることが課題でした。これを解決するため、アメリカン航空はレンタカー会社からヒントを得て、顧客に固有の番号を割り当てる方式を採用しました。


1年以上の計画期間を経て、アメリカン航空は1981年5月1日にアドバンテージを開始しました。


その1週間後にユナイテッド航空はアメリカン航空に追随し、その後トランス・ワールド、コンチネンタル、ノースウエスト・オリエント、ブラニフ、テキサス・インターナショナルも同様のプログラムを導入しました。


最初にマイルを利用したプログラムを打ち出したアメリカン航空は、他社に対して時間的優位性を持っていました。他社がマイル計算システムを整備している間に、アメリカン航空は予想の倍となる100万人の顧客を獲得していたとのこと。


しかし、ユナイテッド航空が期限なしのプログラムを開始したことで状況が変化し、アメリカン航空も1年間の期限を撤廃せざるを得なくなりました。これにより、多くの飛行機ヘビーユーザーが複数の航空会社のプログラムに加入するようになりました。


航空会社は互いに競い合い、上位2%の顧客向けのゴールドプログラムなど、マイル数に応じた特典を用意するシステムを確立しました。ファーストクラスへの無料アップグレードなどの特典は、顧客により高価なサービスに慣れてもらう戦略でもありました。


マイルは一種の通貨となり、航空業界外、特に銀行からの注目を集めるようになりました。航空会社は銀行にマイルを販売し、銀行はカード会員への特典としてそれらを提供しました。


支出に応じてマイルを付与する仕組みにより、プログラムは頻繁な搭乗者だけでなく、支出額に基づくものとなりました。これにより、航空会社は銀行のような性質を持つようになったといわれています。


2023年には、アメリカン航空は提携カードなどから52億ドル(約8200億円)、デルタ航空は66億ドル(約1兆円)の収入を得ています。


2022年までに、座席のアップグレードや手荷物料金などの付随収入は、航空会社の総収益の約15%を占めるようになりました。航空会社は経済的優位性を維持するため、常にプログラムを調整しており、ステータス基準の変更やフライトに必要なマイル数の増加などの変更を行っています。


しかし、2024年に運輸省はアメリカン航空・デルタ航空・サウスウェスト航空・ユナイテッド航空の4大航空会社に対し、「ロイヤルティプログラムが不公平、欺瞞的、または反競争的である可能性がある」として調査を開始しました。


大手コンサルティング企業のマッキンゼーによる調査では、これらのプログラムが搭乗者の行動を変える影響力は2017年から2021年、さらに2021年から2023年にかけて低下していることが判明しました。これを受け、アメリカン航空などはマイルを使用できる範囲の拡大を検討しています。マイルはほぼどこでも獲得できるようになりましたが、そのマイルでどれだけのものが得られるかは依然として議論の対象となっています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
年間17兆円以上を稼ぐために航空会社はダークパターンを多用している - GIGAZINE

インドで爆発中の旅行ブームが世界に与える影響とは? - GIGAZINE

CrowdStrike問題で5000便以上が欠航になったデルタ航空が5億ドルの損害賠償請求へ - GIGAZINE

航空会社が101歳のおばあちゃんを赤ちゃんと間違えてしまう問題が発生 - GIGAZINE

航空会社が遅延・欠航便の払い戻しを義務づけられる - GIGAZINE

in メモ,   乗り物,   動画, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.