睡眠時無呼吸症候群の患者の神経を刺激して症状を改善するインプラントのテストが実施中
睡眠時無呼吸症候群の治療法としては、マスク状の機器を装着して気道に空気を送り続ける「CPAP」が広く用いられていますが、CPAPを装着したまま眠るのには人によって慣れを要します。この問題をクリアする、舌の神経を用いたインプラントのテストが進められています。
UCLH offering patients with sleep apnœa a choice of nerve stimulators : University College London Hospitals NHS Foundation Trust
https://www.uclh.nhs.uk/news/uclh-offering-patients-sleep-apnoea-choice-nerve-stimulators
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン病院国民保険サービスファンデーショントラスト(UCLH)は2024年6月に「Inspire」というインプラントを女性患者に、12月初めに「Genio Nyxoah」というインプラントを2名の患者に、それぞれ埋め込みました。
手術にかかる時間はおよそ2時間で、全身麻酔をかけた上で、あごの下にインプラントが行われました。患者は術後観察ののち、2日後に退院したとのこと。
睡眠時無呼吸症候群の治療法としてはCPAPが知られていますが、必ずしも快適に着用できる患者ばかりではなく、調べによるとCPAPを着用しない人が34.1%いることがわかっています。
今回のインプラントは中程度から重度の睡眠時無呼吸症候群の患者向けのもので、インプラントが舌下神経を刺激して舌を前方に移動させることで、一晩中、上気道を開放した状態で維持し続け、呼吸と睡眠の質を改善します。
Inspireのインプラント手術を受けたのはイングランド中部・ノーサンプトンシャー在住のオリビア・ラシュトンさん(48)。20代後半のころからいびきをかくようになり、当初は笑っていたものの、やがてパートナーが耳栓をするようになったのでノーズクリップなどいろいろなグッズを試したものの効果がなかったとのこと。
40代になると、ラシュトンさんは寝ている途中に突然呼吸が止まっていることがあるとパートナーから指摘されるようになり、かかりつけ医による睡眠時無呼吸症候群のテストを受けて、中程度の症状が出ていることがわかりました。しかし、かかりつけ医は「体重を減らすこと、アルコールやカフェインの摂取量を減らすこと」とアドバイスするだけで治療法の提供はなかったため、かかりつけ医を変えたところ、重度の睡眠時無呼吸症候群であると診断されて、CPAPを使うことになったそうです。
しかし、CPAPのマスクを着け続けることで肌荒れや脱毛、歯痛、歯茎の後退といった症状が出たため、ラシュトンさんは他の治療法を探すことにして、ついにUCLHにたどり着いたとのこと。
一方、「Genio Nyxoah」の手術を受けた1人はイーストサセックス在住のナタリー・ボラーさん(63)。アメリカに住んでいた10年前、夫から「寝ているときに窒息しているようだ」と言われ医者に行ったものの、着用時に不快感のある口腔機器の着用を勧められて断り、イギリスに引っ越してCPAPを使うようになりました。
ところが、CPAPのマスクが外れてしまうことが続き、別の機器を使うようになったもののそれもやはりダメで、最終的にUCLHでインプラント手術を受けることになったそうです。
インプラントはスマートフォンアプリまたは携帯型端末を用いて操作が可能。ただし、手術を担当した外科医は「女性には特有の解剖学的・生理学的考慮事項があるため、睡眠時無呼吸症候群の十分な診断ができていないことがあります。インプラントが適しているのは、厳格な選択基準を満たし、二次医療の睡眠クリニックでCPAP療法の失敗が明らかだった、少数の適正な患者だけです」と断っており、睡眠時無呼吸症候群に対する万能な治療法というわけにはいかないようです。
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