韓国の尹錫悦大統領が「非常戒厳」を宣布するも一晩で解除、一時兵士が議事堂に突入する事態も

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が2024年12月3日の夜に、「恥知らずな親北朝鮮の反国家勢力を撲滅する」として非常戒厳を宣告しました。その後、4日朝に開かれた国会で、出席した議員190人による全会一致で非常戒厳を解除するよう要求する決議案が可決されたことを受け、尹大統領は非常戒厳を解除しました。韓国で非常戒厳が宣布されたのは1980年以来で、1987年に同国が民主化してから初めてです。

尹, 6시간만에 계엄해제 선언...“국회 요구 수용”
https://www.chosun.com/politics/politics_general/2024/12/04/KWKYDZORQ5DVRJRW2VBSRH62BI/

韓国大統領 “非常戒厳を宣布”も その後 閣議で解除 混乱続く | NHK | ユン・ソンニョル（尹錫悦）大統領
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241204/k10014657921000.html

韓国大統領が戒厳令、国会は拒否　軍介入やデモなどで騒然 | ロイター
https://jp.reuters.com/world/north-korea/CFSEBIS53RPJDJZY3AMKATPU2M-2024-12-03/

尹大統領は3日の22時ごろに緊急会見を開き、非常戒厳を宣布しました。声明の中で尹大統領は、尹政権の発足以来、野党が官僚や検事などを相次いで弾劾していることや、2025年度の予算案に合意しないことなどを「内乱を企てる明白な反国家行為」と批判し、「国政がマヒ状態にあります」と述べました。

その上で大統領は、「親愛なる国民の皆さん、私は北朝鮮の共産勢力の脅威から自由大韓民国を守り、韓国国民の自由と幸福を略奪している破廉恥な従北反国家勢力を一挙に撲滅し、自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布します」と発表しました。

大統領の演説後には戒厳司令部が設置され、国会や政党の政治活動が禁じられることや、メディアや出版社が司令部の統制下に置かれることなどを定めた「布告令」が布告されました。

国会の生中継映像には、戒厳司令部の部隊が議事堂に突入する様子や、職員らが消火器を噴射して抵抗する様子が映っていたとのことです。

混乱の中、韓国の国会は4日の1時頃に会議を開き、定数300人のうち190人の議員が出席して、大統領の非常戒厳の解除を求める動議を可決しました。伝えられるところによると、政権与党「国民の力」も解除を求める動きに賛同したとのことです。

韓国の憲法では、「国会が在任中の議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求したときは、大統領はこれを解除しなければならない」と定められています。

国会の本会議で非常戒厳の解除要求決議案が通過したことを受けて、大統領は4日の4時半ごろに会見を開き、軍を撤収させたとした上で「国会の要求を受け入れて戒厳を解除します」と述べました。

非常戒厳が宣布されてから解除までの時間は約6時間でした。

韓国では過去にも複数回、非常戒厳が出された事例があります。直近の事例は1979年10月18日に出されて1981年1月24日に解除されたもので、今回の非常戒厳は33年ぶりの宣布でした。なお、前回の非常戒厳期間中には朴正熙大統領暗殺事件が発生しています。

韓国の最大野党である「共に民主党」は4日に決議文を発表し、大統領による非常戒厳宣言は明白な憲法違反であり、内乱行為だと非難した上で、辞任を要求しました。大統領が退陣の求めに応じない場合は、ただちに弾劾手続きに入るとのこと。

このような混乱が発生した理由について、共に民主党の金秉柱(キム・ビョンジュ)議員は、非常戒厳発令の判断に関わる高官の中に「ブレーキをかけてくれる人がいなかったのかもしれません」と分析しています。