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中国が半導体などの重要産業に必要なレアメタルの支配力を強化しており外国企業にとって脅威となっている


中国はアメリカやその同盟国との政治的・経済的対立を深める中で、さまざまな産業にとって重要なレアメタル(希少金属)の支配力を強化しています。日刊紙のニューヨーク・タイムズが、中国によるレアメタルの支配力強化について報じました。

China Tightens Its Hold on Minerals Needed to Make Computer Chips - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/10/26/business/china-critical-minerals-semiconductors.html


さまざまなレアメタルの主要産出国である中国は、2024年10月1日から「レアアース管理条例」という条例を施行しました。これはレアメタルのうちネオジムジスプロシウムなど合計17元素を指すレアアースについて、中国の輸出業者に対して「欧米のサプライチェーンでどのように流通するのかを追跡し、当局に報告する義務を負わせる」というものです。これにより、中国政府はどの海外企業が中国産のレアアースを入手するのかを把握することが可能です。

また、9月15日からは中国商務部が合金や半導体、太陽電池、軍用爆発物などで用いられるアンチモン輸出制限を始めました。2023年には半導体に必要なガリウムゲルマニウムの輸出にも規制が課されており、アメリカが主導する半導体の輸出規制に対し、中国はレアメタルの輸出規制で対抗しています。

中国の国家安全保障当局はレアアースの採掘と精製を国家機密と位置づけており、9月には国家安全部がレアアース業界の2人のマネージャーに対し「外国人に機密情報を漏らした」として懲役11年の判決を受けたと発表しました。


これらの規制に対してアメリカ政府は、「中国は主要な重要鉱物の加工と精製の市場を独占し、アメリカと同盟国、そしてパートナーをサプライチェーンのショックに対して脆弱(ぜいじゃく)にし、経済と国家の安全保障を損なっています」と9月の声明で述べました。

また、ロンドンのコンサルティング会社であるBenchmark Mineral Intelligenceで重要鉱物のプロダクトディレクターを務めるダーン・ディ・ド・ジョンジュ氏は、レアメタルの供給が途絶するリスクを「市場にぶら下がっているダモクレスの剣」と呼び、中国はいつでもサプライチェーンを攻撃できる状態だと主張しました。

ニューヨーク・タイムズは、「これらの材料は人工知能に使用される半導体を含む先端技術を巡る、中国とアメリカの広大な戦いの場です。双方とも自国が生産する部品に輸出規制を課す一方で、信頼できる同盟国と共に国内外でサプライチェーンを発展させようとしています」と指摘しています。


中国産のレアアースはF-35ステルス戦闘機や風力タービン、電気自動車のモーター、カメラレンズ、ガソリン車の触媒コンバーターなど多岐にわたる製品で使用されており、今後もクリーンエネルギーの拡大に伴って需要の増大が見込まれています。中国が掌握している特に重要なレアアースのひとつが、1ポンド(約450g)あたり100ドル(約150円)以上で取引されているジスプロシウムです。ジスプロシウムは主に電気自動車に搭載される強力磁石の添加剤として使われてきましたが、近年は先端半導体のコンデンサに超高純度のジスプロシウムが使われるようになったため、その重要性が増しているとのこと。

中国の精製所は世界のジスプロシウムの99.9%を生産しており、そのほとんどが上海近郊の無錫市にある単一の精製所で作られています。この精製所はカナダのNeo Performance Materialsが長年所有してきましたが、2024年末までに精製所の株式の86%を中国企業であるShenghe Resourcesに売却すると発表しています。Shenghe Resourcesの筆頭株主は中国の自然資源部であるため、中国政府による事実上の国有化といえます。


なお、Neo Performance Materialsは今後5年間にわたり海外の顧客にレアアースを販売する権利を有しているほか、エストニアに別の精製所も所有していますが、エストニアの精製所ではジスプロシウムの生産を行っていません。他にもベルギーやオーストラリア、アメリカなどの企業がジスプロシウムの精製に乗り出していますが、商業的に採算が取れる純度のジスプロシウム鉱山は中国とミャンマー以外にほとんどないとのこと。さらに、レアアースの精製所は稼働するまでに何年もかかるほか、人工知能を実行するコンピューターチップに必要な超高純度のジスプロシウムを製造するのはかなり困難です。

中国がレアアース生産で優位に立っている背景には、生産コストが低く赤字をいとわない中国企業と競争するのは難しく、企業が中国以外の企業に投資しにくいという事情があります。また、中国ではレアアース産業のエンジニアと研究者を育成するプログラムを持つ大学が39校もあり、精製業者はより低コストで多くのレアアースを抽出する技術を持っています。ロサンゼルスに拠点を置く化学品製造・販売会社のAmerican ElementsでCEOを務めるマイケル・シルバー氏は、「中国の精製所は文字通り、外国企業の一世代先を行く溶媒抽出システムがあります」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article China is strengthening its control over ….