中国が半導体製造に必要なガリウムやゲルマニウムの輸出を制限、アメリカなど西側諸国へのけん制か
中国の経済と貿易を管轄する商務部が、半導体に必要なガリウムやゲルマニウムの輸出に規制をかけることを2023年7月3日付けで発表しました。この動きは中国への半導体チップや半導体製造装置の輸出規制を行う西側諸国へのけん制とみられています。
商务部 海关总署公告2023年第23号 关于对镓、锗相关物项实施出口管制的公告
http://www.mofcom.gov.cn/article/zwgk/gkzcfb/202307/20230703419666.shtml
China to Restrict Exports of Metals Critical to Chip Production - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-07-03/china-to-restrict-exports-of-metals-critical-to-chip-production
ゲルマニウムは光ファイバーや赤外線センサー、太陽電池、発光ダイオードに使われており、ガリウムはマイクロ波や高速スイッチング回路に使われています。ガリウムとゲルマニウムは中国が世界最大の供給国となっており、ゲルマニウムはその約60%が、ガリウムは約94%が中国によって生産されているとのこと。また、半導体素子の材料となるヒ化ガリウムを十分な品質で製造しているのは世界で数社のみで、そのほとんどが中国で生産されているそうです。
中国商務部は、ガリウムとゲルマニウム、これらの元素を含む一部の化合物を中国から輸出する場合、まず商務部に申請書を提出し、許可を得る必要があると定めました。中国商務部は国家の安全と利益を守るために必要だとしており、2023年8月1日から規制措置を実施すると述べています。
通信関連の調査企業・Recon Analyticsのアナリストであるロジャー・エントナー氏は「中国のガリウムやゲルマニウムの輸出規制の影響は、手持ちの機器や部品の在庫によります。今後1年ほどは耐えても、長引くと価格が高騰するでしょう」と述べています。
アメリカ経済紙のBloombergは、バイデン大統領が中国をはじめとする競合国に対してAIに使用されるチップの輸出規制を検討したり、日本とオランダが半導体製造装置の輸出規制を強化したりなど、西側諸国の中国に対する規制措置へのけん制だろうとみています。
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