卓上サイズの量子コンピューターを台湾の研究チームが開発
清華大学の研究チームが、光子1個のみを使用する世界最小の量子コンピュータの開発に成功したと発表しました。デスクトップPCサイズで室温で動作し、素因数分解などの複雑な数学演算を実行できることが実証されています。
Phys. Rev. Applied 22, 034003 (2024) - Implementation of Shor's algorithm with a single photon in 32 dimensions
https://journals.aps.org/prapplied/abstract/10.1103/PhysRevApplied.22.034003
清華大學用一顆光子造出全世界最小量子電腦【2024.10.16秘書處】-首頁故事:國立清華大學
https://www.nthu.edu.tw/hotNews/content/1194
Scientists build the smallest quantum computer in the world — it works at room temperature and you can fit it on your desk | Live Science
https://www.livescience.com/technology/computing/scientists-build-the-smallest-quantum-computer-in-the-world-it-works-at-room-temperature-and-you-can-fit-it-on-your-desk
最先端の量子コンピューターは一般的に極低温環境で動作しますが、清華大学のチーソン・チュー氏らが開発した量子コンピューターは室温で動作するのが特長です。設備は1人の人間が抱えられる箱の中に収まるほど小さく、研究者らは「将来、私たちの机の上に光量子コンピュータが1台ずつ置かれるようになることを心から願っています!」と述べました。
今回開発された量子コンピューターは光子1個のみを使用する「単一光子量子コンピューター」で、チュー氏いわく「光子1個に32次元の情報空間がある」とのこと。量子コンピューターの中には数百の光子を扱うものもありますが、制御が難しいという課題があります。チュー氏は逆転の発想で「1つの光子にすべての情報を圧縮する」という観点から研究を続け、特殊な量子コンピューターの開発に成功したといいます。32次元という多次元の光子を量子コンピューターに実装したのは、世界で初めてのことだそうです。
一般的に電子とイオンを使う量子コンピューターはエネルギーと開発コストがかかりますが、光子を使う光量子コンピューターはこの2つのジレンマを克服するといいます。さらに、光子は長距離伝送が容易で、干渉を受けにくいという特徴もあります。
すべての情報を1つの安定した光子に圧縮するという処理について、チュー氏は「1人しか乗車できない自転車を、膨大な数の乗客を乗せられる32両編成の電車に変えるようなもの」とたとえました。単一量子コンピューターは15=5x3といった素因数分解などの演算を行うことが可能で、次のステップは「さらに複雑な計算を処理できるように単一光子の記憶容量の向上を継続すること」とチュー氏は説明しました。
清華大学理学部のモウ・チョンユー学部長は、「この光量子コンピューターは同大学の量子技術研究センターによる独自の研究開発の成果であり、量子技術における同大学の革新的能力と技術力を示すものである」と強調。光量子コンピューター技術が、将来的に新薬の研究開発の加速や物流の最適化、量子通信との組み合わせによる情報セキュリティの向上など多岐にわたって応用できることをアピールしました。
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