サイエンス

量子コンピューターの内部では一体何が起こっているのか?


量子コンピューターは、量子力学を計算に用いることで、従来のコンピューター(古典コンピューター)では実現不可能な大規模な計算を行うことが期待されているコンピューターです。量子コンピューターの機能の一部を、科学系メディアのPhysics Todayが解説しています。

What’s under the hood of a quantum computer?
https://physicstoday.scitation.org/do/10.1063/PT.6.1.20210305a/full/

Welcome to Quantum Native Dojo! — Quantum Native Dojo ドキュメント
https://dojo.qulacs.org/ja/latest/index.html

量子コンピューターは、「0」もしくは「1」の状態しか取れないビットを使った古典コンピューターと違い、「0」と「1」両方の状態をとることができる量子情報の最小単位「量子ビット」を用いて計算を行うコンピューターです。古典物理学では「0」と「1」のどちらかが確実に定まっていたのに対し、量子状態は観測して初めて「0」か「1」かが確率的に定まるものであり、量子コンピューターではこのあやふやな重ね合わせ状態を使って複雑な情報を表現しています。

量子ビットを実現するコンピューターの一例として、「イオントラップ型量子コンピュータ」が挙げられます。イオントラップ型量子コンピュータは電磁場を用いてイオンを空間内に閉じ込め、量子ビットを粒子の安定した電子的状態として格納するものです。イオントラップ型量子コンピュータは、現在知られているものの中では最も高い精度で演算を行うことができる量子コンピューターです。

by IBM Research

しかし、量子コンピューターは「エラーが発生しやすい」という問題を抱えています。熱ゆらぎや電磁放射、磁場などのあらゆる種類の環境要因により量子ビットが意図した状態から外れてしまう可能性があります。この情報劣化は「デコヒーレンス」と呼ばれ、熱ゆらぎを減らすためにコンピューターを低温下に置いている状態でも一瞬のうちに発生することがあり得ます。

デコヒーレンスなどから発生したエラーを修正する方法が「量子誤り訂正」です。古典コンピューターにも使われるエラー訂正を量子コンピューターで行うもので、多ビットの複雑な計算を行う時は量子誤り訂正が必須となります。

また、古典的コンピューターでは実行するタスクの上位命令を受け取ったコンパイラが、命令を基礎となるハードウェアで行う演算に変換していますが、量子コンピューターでも同様のことが行われます。それが「トランスパイラー」と呼ばれる仕組みで、量子ビット同士の接続を考慮しつつ、一連の論理演算をどう実行するか決定しています。量子ビットを物理的に再配置することは難しいですが、2つの量子ビットの状態を入れ替えることで、効率的な再配置を行っています。


量子コンピューターについてはさまざまな研究が進んでいますが、まだまだ複雑で構築も容易ではありません。しかし、AmazonMicrosoftなどが量子コンピューターへのアクセスを提供しており、量子コンピューターの活躍の幅がますます広がっていくことが期待されています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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