サイエンス

47年間で240億kmを航行したボイジャー2号に搭載されたプラズマ科学機器をNASAが停止

by Kevin Gill

NASAが1977年8月20日に打ち上げた無人宇宙探査機の「ボイジャー2号」には、10個の科学機器が搭載されています。しかし、47年もの運用を経ていくつかの科学機器はパフォーマンス低下や節電を理由に稼働を停止しており、2024年9月末には新たにプラズマ科学機器の稼働も停止したことをNASAが報告しました。

NASA Turns Off Science Instrument to Save Voyager 2 Power | NASA Jet Propulsion Laboratory (JPL)
https://www.jpl.nasa.gov/news/nasa-turns-off-science-instrument-to-save-voyager-2-power/


An interstellar instrument takes a final bow | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2024/interstellar-instrument-takes-final-bow-1002

1977年に打ち上げられたボイジャー2号は、47年間にもおよぶ宇宙の旅で、これまで240億kmを航行しており、記事作成時点で地球から128億マイル(約205億km)以上離れた太陽圏の外である星間空間を飛行しています。そんなボイジャー2号はプルトニウムを動力源としており、毎年約4W(ワット)の電力を消費しているそうです。


ボイジャー2号には宇宙船サブシステム、低エネルギー荷電粒子、磁力計、プラズマ波サブシステム、プラズマ科学機器、イメージングサイエンスサブシステム、赤外線干渉計分光計および放射計、光偏光計サブシステム、惑星電波天文学、紫外線分光計という10個の科学機器が搭載されていますが、長年の運用により電力供給は徐々に減少しています。

そこで、NASAのエンジニアはボイジャー2号に搭載されている科学機器をできるだけ長期間運用できるようにするべく対策を講じてきました。具体的には、1989年10月10日と12月5日に節電のためにイメージングサイエンスサブシステムの広角カメラと狭角カメラを停止、1991年4月3日にパフォーマンス低下のため光偏光計サブシステムを停止、1998年11月12日に節電のため紫外線分光計を停止、2007年2月1日に節電のため赤外線干渉計分光計および放射計を停止、2008年2月21日に節電のため惑星電波天文学を停止しています。そして、新たに2024年9月26日になって節電のためプラズマ科学機器も停止しました。これにより、記事作成時点で稼働しているボイジャー2号に搭載されている科学機器は4つとなっています。

プラズマ科学機器の運用停止により、ボイジャー2号は2030年台まで少なくともひとつの科学機器を運用可能な状態で残しておくだけの電力を確保することができるそうです。

以下は1977年3月に撮影された、打ち上げ前のボイジャー2号の写真。撮影場所はNASAの無人探査機などの研究開発に携わるジェット推進研究所です。


今回稼働を停止したボイジャー2号のプラズマ科学機器は、電荷を帯びた粒子で構成されるプラズマの量と流れを測定するためのものです。ボイジャー1号にもプラズマ科学機器が搭載されていましたが、これは1980年に動作を停止し、2007年には節電のために電源が切られました。ボイジャー2号に搭載されているプラズマ科学機器は正確には「プラズマ波サブシステム」と呼ばれる別の機器で、太陽からのプラズマ噴出減少が星間物質に衝撃を与え、プラズマ波を発生させる際のプラズマ密度を推定することができるというものです。

ボイジャー2号のプラズマ科学機器は2018年にボイジャー2号が太陽圏を離れたことを確認する上で決定的な役割を果たしています。なお、プラズマ科学機器は4つのカップで構成されており、3つのカップは太陽の方向を向いているため、太陽圏内で太陽風を観測するのに使われました。残りのカップは他の3つのカップに対して直角に配置されており、惑星の磁気圏、太陽圏、星間空間のプラズマを観測します。

しかし、ボイジャー2号は2018年に太陽圏を抜けたため、太陽の方向を向いて配置された3つのカップへのプラズマの流れは劇的に減少。4つ目のカップも、3カ月に1度しかデータが得られなくなってしまいました。これらの要因から、プラズマ科学機器の運用停止という決断につながったようです。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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