サイエンス

「エイリアンがすでに地球を訪れている」と信じる人が増えると何が問題なのか?


「すでにエイリアンは地球を訪れている」という主張は近年ますます人気を集めており、イギリス国民の約5分の1が「地球外生命体が地球を訪れた」と信じているほか、「UFOは宇宙人の乗り物だ」と信じているアメリカ人は34%に達しています。これについてキングス・カレッジ・ロンドンの哲学者であるトニー・ミリガン氏は、「エイリアンの来訪に対する信念は広範な社会的問題だ」と主張しました。

Belief in alien visits to Earth is spiralling out of control – here’s why that’s so dangerous
https://theconversation.com/belief-in-alien-visits-to-earth-is-spiralling-out-of-control-heres-why-thats-so-dangerous-237789


記事作成時点では「エイリアンが存在する」という科学的証拠がないにもかかわらず、実はエイリアンが地球を訪れていると信じる人は増えています。一見すると、宇宙人の存在を信じている人が増えようと大した問題ではないように思えますが、ミリガン氏はこれが有害な結果をもたらす可能性があると主張しています。

アメリカでは国民からUFOに関する情報開示の要求が高まったことを受けて、国防総省がUFOや異常現象に関するホームページを開設するなどの対応に追われています。国防総省からの情報開示は超党派的な注目を集めていますが、その背後には「軍や民間を含むグループが商業的利益のため、エイリアンや彼らが持つ最先端技術に関する真実を隠ぺいしているのではないか」という疑念があるとのこと。

政府が何らかの隠ぺい工作を行っているのではないかという考えは、エイリアンが地球を訪問しているという信念以上に広まっています。調査会社のギャロップが2019年に行った世論調査では、「アメリカ政府はUFOについて、公に語っている以上のことを知っている」と考えているアメリカ人が68%に達しました。

このような政治的傾向は数十年前から存在しており、民主党のジミー・カーター第39代大統領は1969年にUFOを目撃したと明かし、大統領選挙の期間中にUFOに関する機密文書の開示を約束しました。また、ヒラリー・クリントン氏も2016年大統領選挙の期間中に、より多くの国防総省の文書を開示したいという姿勢を示しました

同選挙で当選したドナルド・トランプ元大統領も、UFO墜落事件といわれるロズウェル事件について、「興味深い情報」を知っていると語っています。

Trump Discusses Declassifying Roswell, Says He knows 'Very Interesting' Information | NBC News NOW - YouTube


そしてジョー・バイデン大統領の就任以降、ようやく国防総省の情報開示が始まりましたが、記事作成時点で宇宙から飛来したUFOやエイリアンの存在を裏付けるような証拠は出てきていません。しかし、依然としてエイリアンが地球を訪れているという考えは広まり続けています。


ミリガン氏は、「これらすべてが最終的に陰謀論を助長し、民主的な制度への信頼を損なう可能性があります。かつて『エリア51(ロズウェル事件やUFOとの関連がうわさされる空軍施設)を襲撃する』というユーモラスな呼びかけがありましたが、2021年に連邦議会議事堂襲撃事件が起きた後の今では、この危険性が高まっているようです」と述べ、エイリアンへの信念が社会制度を揺るがすことにつながりかねないと主張しました。

また、UFOや異常現象に関するバックグラウンドノイズが多すぎると、地球外生命体を見つける可能性についての正当な科学的コミュニケーションに悪影響が及ぶ可能性もあります。実際、ディズニーが所有する「HISTORY」というYouTubeチャンネルは、定期的に「古代地球を訪れたエイリアン」に関する番組を配信しており、チャンネル登録者数は約1400万人です。一方、NASAが運営する宇宙生物学チャンネル「NASA Astrobiology」には、2.1万人しか登録者がいません。


他にも、「エイリアンの来訪を信じる人々が、先住民族の伝承や神話を上書きしてしまう」という問題もあります。NASAはアメリカの先住民族であるオジブワ族ラコタ族が伝えてきた星についての伝承を保存するため、「Native Skywatchers initiative」などの取り組みを支援しています。先住民族に伝わる空に関する伝承は、天文学者が過去の天体現象を理解する重要な助けとなります。

しかし、一部のUFO研究家は先住民族の伝承をUFOに関する架空の物語と合体させ、「隠ぺいされた歴史」として再パッケージ化しているとのこと。これは単なる娯楽小説の枠にとどまっていれば問題ありませんが、実際に先住民族の伝承を上書きしてしまうほどの影響力を持っているとのことで、ミリガン氏は危険な兆候だと指摘しています。

ミリガン氏は、「エイリアンの来訪を信じることはもはや単なる楽しい空想ではなく、現実的で有害な結果をもたらすものであることが、ますます明らかになっています」とコメントしました。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

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