数学者の考案した「一見シンプルだが直感に反する確率パズル」がインターネット上で議論に
2024年1月30日にトロント大学数学部助教授のダニエル・リット氏がある確率パズルをX(旧Twitter)上に投稿しました。この確率パズルがインターネット上で議論となっています。
Perplexing the Web, One Probability Puzzle at a Time | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/perplexing-the-web-one-probability-puzzle-at-a-time-20240829/
リット氏が投稿した問題は「100個のボールが入ったつぼがあります。そのうちn個が赤で、100-n個が緑です。ただし、nは0~100の間で一様分布しています。つぼからボールをランダムに1つ取り出したところ、赤でした。それを捨ててから、残り99個からボールを選ぶとき次に引くボールの色はどれ?」というもの。
You are given an urn containing 100 balls; n of them are red, and 100-n are green, where n is chosen uniformly at random in [0, 100]. You take a random ball out of the urn—it’s red—and discard it. The next ball you pick (out of the 99 remaining) is:
— Daniel Litt (@littmath) January 28, 2024
リット氏によるアンケートでは「『緑色のボールを引く』が正解」と答えたユーザーの割合が37.1%に上りました。一方で「赤の可能性が高い」と答えたユーザーは22.6%にとどまっているほか、「どちらも同じ」が20.9%、「わからない」が19.5%でした。
確かに赤を続けて引くよりも次に緑を引く確率の方が高そうに思えます。しかし、1つ目のボールが赤色だったことから、残りの赤いボールの数はn-1、緑のボールの数は100-nです。最初に赤のボールを引いたことで、nの平均値が増加しており、残りの99個のボールの中には赤いボールが比較的多く残っている可能性があります。ベイズの定理などを用いて実際に計算すると、2個目のボールが赤色である確率は約67.57%になります。そのため、次に引くボールは「赤を引く可能性が高い」というのが正解です
リット氏によると、数学者のジョージ・ローザー氏の解答例が最も気に入ったとのこと。具体的には「つぼに入ったボールを計101個の番号付きボールと見なし、1個を取り除きます。その左側のボールを緑色に、右側のボールを赤色に着色。続いて、2つ目のボールをランダムに選択します。今回の問題では赤いボールを引いたため、最初のボールの右側に置かれます。次に選ばれる3番目のボールは『最初のボールの左側』『最初のボールと2番目のボールの間』「2つ目のボールの右側』のうちの1つになるため、ボールが赤色である確率は2/3です」」と説明しました。
100 bosons in an urn, uniformly distributed over all red-green colourings. As permutations are identified as same state, number of red is uniform on 0-100
— Almost Sure (@Almost_Sure) January 30, 2024
Remove 1, P(red)=1/2
Remove 2, P(both red)=1/3, as uniform over the 3 possible colourings.
P(second red|first red)=2/3 https://t.co/ee2clNjdt2
リット氏の投稿はインターネット上で話題を生み、「自身の研究をおろそかにしてパズルのことを考えてしまう」といったリプライも。
https://t.co/s7wBgfd7VW pic.twitter.com/c9zfJgexAy
— Parker Seegmiller (@pkseeg) January 31, 2024
リット氏は誤った回答をしたユーザーが非常に多かった要因について「人々は様々な方法でリスクを回避し、今回のような現実的にありそうもない出来事の可能性を体系的に過大評価または過小評価しています。そのため、本能的に誤った回答を選んでしまったのではないかと思います」と語りました。また、今回のような確率パズルを投稿するに至ったきっかけについて「専門分野は確率論ではありませんが、確率の問題は非常になじみ深く、時にその答えがクールだったり、直観に反していたり、驚かされるものであったりします。そのため例題をXに投稿しているというわけです」と述べています。
リット氏は「多くのユーザーがランダムな偶然よりも大幅に悪い回答を示す多肢選択問題を出題することほど爽快なことはありません」と投稿しています。
nothing more exhilarating than posing a multiple-choice problem on which 50,000 people do substantially worse than random chance
— Daniel Litt (@littmath) March 17, 2024
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