何を食べれば健康的かを私たちは知っているのになぜ不健康な食事を選んでしまうのかという理由と解消方法とは?
健康を維持して病気のリスクを減らすためにどのような食生活を送るべきかについて、私たちは多くの情報を受け取っており、さまざまな理解を持っています。にもかかわらず、知識が必ずしも健康的な食生活につながっていないという現状と、その問題をどのように解決するかというアイデアについて、オーストラリアのビクトリア大学で教育と公衆衛生の分野を研究するニーナ・ヴァン・ダイク氏が調査結果をふまえて解説しています。
“We know what we should be eating, but we don’t always do that.” How and why people eat the way they do: a qualitative study with rural australians
(PDFファイル)https://link.springer.com/content/pdf/10.1186/s12889-024-18432-x.pdf
We know what to eat to stay healthy. So why is it so hard to make the right choices?
https://theconversation.com/we-know-what-to-eat-to-stay-healthy-so-why-is-it-so-hard-to-make-the-right-choices-231489
ダイク氏が所属するビクトリア大学のミッチェル研究所は、統計局や縦断調査などから提供されるデータを分析して、証拠に基づく政策を開発し推進することを目的としています。ダイク氏らは人々がどのようにして食事の選択をし、なぜそのようにしているのかを探るため、2010年に実施された食行動の調査を定性的研究しました。
加えて、オーストラリア・ビクトリア州の地方都市に住む18~24歳の若い女性、子どもをもつ35~45歳の女性、パートナーと同居してある程度成長した子どもがいる35~50歳の男性の合計17人とグループセッションを実施しています。参加者の年齢や子どもの有無については、「若い女性は健康的な食事よりも外見を気にする傾向がある」「子どもを持つ女性は家族を養うことに重点を移すことが多い」「男性は、自分が食べるものにあまり興味がない傾向がある」という過去の調査結果から、食習慣の変化が起こりうる年齢やライフステージをターゲットとして選択しているとのこと。
結果として、何を食べるかという決定は、味の好みや健康上の配慮によって部分的に決定されるものの、本人が制御できない多くの他の要因によって大きく左右されることが分かりました。これには、他の家族構成員の食品の好み、家族の活動、職場や時間の制約、利便性、価格などが含まれます。
健康的な食事を理解しつつも選択しづらい理由として、「健康を気にした食事は気にしない食事よりも高くつきそう」という一般的な認識があります。しかし、オーストラリアの食事ガイドラインで推奨されている食事の調査(PDFファイル)では、「大人2人と子ども2人の家族の場合、健康的な食事は不健康な食事よりも12~15%安い」と示されました。
A healthy diet in line with the Australian Dietary Guidelines is cheaper than an unhealthy diet.
— The Conversation - Australia + New Zealand (@ConversationEDU) December 9, 2023
🍎 As @DrEmilyBurch (@SCUonline) + @ProfLaurenBall (@UQ_News) write, switching diets could save $160 off a family of four’s fortnightly shopping bill. https://t.co/TcgQUZeUSB
ダイク氏によると、グループセッションで特に目立ったのは「時間の制約」という点だったとのこと。ミシガン大学公衆衛生学の研究者らが2020年に発表した「食の主体性」に関する論文では、食事の調理頻度が高く健康も意識するためには、食品への理解や調理への自信、および時間に余裕があることなどを要求すると示されています。実際に、ダイク氏らが実施したグループセッションでも、「実際にレシピを入手して材料を全部揃えてきちんと作れる機会は大好きですが、そういう機会は滅多にありません。たいていは、手元にあるものですぐに作れるもの、そしてみんなが食べそうなものを作ることになります」など、時間の制約と家族の好みにより理想とする健康的な食事の準備が難しいという意見が出ました。
調査と分析の結果を受けて、ダイク氏は家庭内で健康的な料理を積極的に選択しやすくするための「5つのヒント」を提案しています。
・1:特に忙しく準備が難しい曜日がある場合は、時間に余裕のある日にまとめて調理し、すぐに調理して食べられるように保存しておく。
・2:どうしても時間に追われる日中などは、健康的なスナックを手が届く位置に置いておく。
・3:家族で食べ物の好みについて話し合い、みんなが好む健康的な食事を考える時間を作る。年少の子どもには、すでに好んでいる慣れ親しんだ食べ物と一緒に、新しい食べ物を少量だけ与える。
・4:テイクアウトの食事や配達サービスに頼ることが多い場合は、健康に良いレストランやメニューのリストを事前に作成しておく。
・5:果物や野菜は旬の方が味が良く安いことが多いので、旬のものを理解する。また、冷凍野菜や缶詰野菜は健康的で手軽な代替品のため、積極的に活用する。
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