月の核はどんな物質で構成されているのか?
月は非常に身近な天体ですが、その組成や環境などは不明な点が多く残っています。フランス国立科学研究センター(CNRS)を中心とする研究チームが2023年5月に発表した研究論文では、月に「金属で構成された固体の核」が存在することが明らかとなっています。
The lunar solid inner core and the mantle overturn | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-023-05935-7
The Moon's heart revealed for the first time | CNRS
https://www.cnrs.fr/en/press/moons-heart-revealed-first-time
月の内部構造を探る研究は古くから行われており、2011年に発表された研究論文ではアポロ計画での地震計データをもとに「固体の内核を流体の外核が覆っている」という分析結果が導き出されていました。しかし、2011年の研究では地震計の精度の問題などが原因で内部コアがどんな物質で構成されているのかは明らかになっていませんでした。
フランスの研究チームは、レーザー測距データなどの月の詳細な観測データを収集。さらに、多様なコアの材料物質を想定したシミュレーションを実施し、「観測データに合致するコアの材料物質」を探しました。
分析の結果、月に「鉄に近い密度の金属で構成された内核」が存在することが示されました。また、内核の大きさは直径500kmで、月全体の体積の約15%に相当することも明らかになりました。
さらに、研究チームの分析では、月が形成される過程で核とマントルの構成物質が入れ替わる「マントルオーバーターン」が発生していたことも明らかになっています。マントルオーバーターンの発生は、月の表層付近に鉄が大量に存在することの説明に役立つとのことです。
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