古代ローマ時代の火山の噴火で消えた町・ポンペイにおける売春婦の実態とは?
西暦79年のヴェスヴィオ火山噴火に伴う火砕流によって地中に埋もれたイタリア・ポンペイでは、その後の発掘調査によって古代ローマ時代の遺品が多数発見されています。そんなポンペイでの発掘調査では、古代ローマ時代における売春婦の実態が明らかになっています。
What Pompeii’s ruins say about its enslaved, prostituted women | Aeon Essays
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古代ローマの遺跡であるポンペイには、売春宿「ルパナール」が存在しており、そこには当時の古代ローマ人が残した「Eutychis, a Greek lass with sweet ways, 2 asses」という落書きが刻まれています。海外メディアのAeonによると、この落書きは当時のエリートによる文学でも権力者による碑文でもなく、そこを訪れた一般人が残した貴重なものとのこと。
ルパナールには石製の8つのベッドが置かれており、この上で性的サービスが行われたそうです。
各ベッドの周囲には性的行為や生殖と豊作をつかさどるプリアーポス神など、性的なイメージの絵画が描かれていました。
また、ルパナールに残された落書きから、「アネディア」「プロニア」「アティス」「ベロニス」「カディア」「クレッサ」「ドラウカ」など、そこで働いていた売春婦の名前も判明しています。
古代ローマの文筆家・ペトロニウスはローマにおける売春宿の実態を「サテュリコン」と呼ばれる小説で示しており、当時の売春宿は基本的に町の人けが少ない場所にあり、一見して売春宿だとわからないような施設になっている場合もあったとのこと。売春婦は裸の状態でサービスにかかる料金を示したプラカードを持ち、その女性や価格を気に入った男性が料金を支払うことで性的サービスを受けることが可能でした。
当時の売春婦の多くは奴隷階級の女性で、売春宿のオーナーやそこを訪れた客のなすがままに行為に及んでいました。また、奴隷階級ではない女性も売春婦として活動していたことから、Aeonは「何らかの理由があり、必要に迫られて売春を行っていたのでしょう」と述べています。
古代ローマにおける奴隷は、恵まれた生活やある程度の自由を持っていた場合もあったものの、一部の奴隷は強制的な監視や身体の拘束、所有者による性的虐待などの厳しい環境に置かれていました。「この首輪を着用した者が逃げ出した場合、その主人に返してください」との首輪を取り付けられた奴隷の売春婦が逃げ出した事例も発見されています。
しかし、ルパナールではそうした虐待的行為の痕跡は確認されませんでした。Aeonは「おそらくルパナールには独自の『用心棒』がいて、客からのトラブルに対応していたのでしょう」と推測しています。
Aeonは終わりに「当時の売春婦の生活が、その女性にとって実際はどのようなものであったかを現代に住む我々が知ることはできません。しかし、ポンペイに住んでいた恵まれない人々の生活に光を当てるために、ポンペイから発掘された証拠を読み解くことは可能です」と述べました。
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