サイエンス

「バイセクシャルの遺伝子」を持つ異性愛者の男性はより多くの子どもを持つという研究結果


メスとオスの性行為によって子孫を作る動物において、同性間での性行為は直接的な生殖上の意味を持ちません。しかし、進化の過程で同性愛や両性愛(バイセクシャル)に関する遺伝子が排除されなかったことから、一部の研究者は同性愛的行動にも何らかの進化上の利点があるのではないかと考えています。2024年1月に学術誌のScience Advancesに掲載されたミシガン大学の研究では、「バイセクシャルに関連する遺伝子を持つ異性愛者の男性は、より多くの子どもを持つ」という結果が示されました。

Genetic variants underlying human bisexual behavior are reproductively advantageous | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adj6958


Genetic variants underlying male bisexual behavior, risk-taking linked to more children, study shows | University of Michigan News
https://news.umich.edu/genetic-variants-underlying-male-bisexual-behavior-risk-taking-linked-to-more-children-study-shows/

Straight Men With 'Bisexual Genes' Have More Kids, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/straight-men-with-bisexual-genes-have-more-kids-study-finds

研究チームは人間のバイセクシャルな行動に関連する遺伝子と生殖活動について調べるため、イギリスの長期的調査であるUKバイオバンクに含まれる45万人以上のヨーロッパ人のデータを分析しました。データには被験者のDNA配列や子どもの人数などの情報があったほか、「自分はリスクを取る方だと思いますか?」といった質問への回答も含まれていたとのこと。

分析の結果、バイセクシャル行動(BSB)関連対立遺伝子と呼ばれる遺伝的変異を持つ異性愛者の男性は、平均よりも多くの子どもを持つことが明らかになりました。また、自らを「リスクを取る方だ」と自称する男性はより多くの子どもを持つ傾向があると同時に、BSB関連対立遺伝子を持つ可能性が高いことも判明しました。


つまり、BSB関連対立遺伝子は男性の「バイセクシャル的な行動」と「リスクを取る行動」の両方に関連しており、それが生殖上の利益をもたらしている可能性があると示唆されたわけです。

論文の共著者でミシガン大学の進化生物学者であるジェンジー・チャン教授は、「今回の結果は、男性のBSB関連対立遺伝子が繁殖上有利である可能性が高いことを示唆しています。このことから、両性愛的な行動に関わる遺伝子がこれまで維持され続けた理由と、これからも維持されていくという予測を説明できるかもしれません」と述べています。


一般にリスクを取る傾向は、それが成功するかどうかにかかわらず報酬を求める行動に従事する傾向を表します。UKバイオバンクの調査ではリスクを取る行動の中身までは調べなかったものの、「自分はリスクを取る方だ」と回答した人は、「無防備な性行為」というリスクのある行動をする可能性が高く、結果的により多くの子どもを持つ可能性があるとのこと。

一方で、排他的な同性愛的行動(eSSB)関連対立遺伝子を持っている異性愛者の男性は、子どもの数が少ない傾向がみられました。この結果から、時間的経過に伴ってeSSB関連対立遺伝子を持つ人は減ると予測されています。しかし、今回の研究はあくまで両性愛・同性愛的行動の遺伝的基盤にのみ着目したものであり、環境的な要因がこれらの性的行動に及ぼす影響については調査していません。

チャン氏は、「ここでは子どもの数・リスクを取る行動・バイセクシャル的な行動という3つの特徴について話しています。これらはすべて、いくつかの遺伝的基盤を共有しています」「今回の結果は、BSB関連対立遺伝子が異性愛者において生殖を促進する根本的な原因は、リスクを取る行動であることを示唆しています。すなわち、BSB関連対立遺伝子の生殖的な優位性は、リスクを取る行動の生殖的優位性の副産物です」とコメントしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
同性愛は人類にとって社会的な「競争優位性」があったから進化してきた - GIGAZINE

なぜ同性愛は進化の過程で維持され続けたのか? - GIGAZINE

オスのサルがセックスする相手はメスよりもオスの方が多いという研究結果、同性愛的行動に進化上の利点がある可能性も - GIGAZINE

「ゲイではないのに男性とセックスをする男性」は少なくないことが調査で判明、一体なぜストレートの男性が男性と寝るのか? - GIGAZINE

兄のいる男性は同性愛者である確率が38%も高いという研究結果 - GIGAZINE

年齢によって同性愛者になったり異性愛者になったりすることがある - GIGAZINE

「ゲイやバイセクシャルの男性からの献血」を禁止する規制をアメリカ食品医薬品局が正式に撤廃 - GIGAZINE

「同性と裸でベッドに入る」行為が性的関係以外を意味した中世ヨーロッパの価値観とは? - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.