オスのサルがセックスする相手はメスよりもオスの方が多いという研究結果、同性愛的行動に進化上の利点がある可能性も
by Chloe Coxshall
近年は同性愛に対する社会的な理解が形成されつつありますが、依然として同性愛に偏見を持っている人も多く、一部の国では同性愛者を罰する法律も存在します。同性愛への批判には「同性愛は生物学的に考えておかしい」というものもありますが、プエルトリコのサンティアゴ島に生息する野生のアカゲザルを観察した新たな研究では、オスのサルはメスよりも同性とより多く性的行動に従事しており、同性愛的行動には進化上の利点がある可能性も示唆されました。
Same-sex sociosexual behaviour is widespread and heritable in male rhesus macaques | Nature Ecology & Evolution
https://doi.org/10.1038/s41559-023-02111-y
Study shows same-sex behaviour is widespread and heritable in macaque monkeys | Imperial News | Imperial College London
https://www.imperial.ac.uk/news/245895/study-shows-samesex-behaviour-widespread-heritable/
Sex between two males is extremely common in wild macaque monkeys | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2381784-sex-between-two-males-is-extremely-common-in-wild-macaque-monkeys/
Male monkeys on tiny island have way more sex with each other than females, scientists discover | Live Science
https://www.livescience.com/animals/monkeys/male-monkeys-on-tiny-island-have-way-more-sex-with-each-other-than-females-scientists-discover
同性愛的行動は昆虫からペンギンに至るまでさまざまな動物で観察されており、決して人間に特有の行動というわけではありません。自然界の広い範囲で同性愛的行動が観察されていることから、同性愛には何らかの進化的な利点がある可能性も指摘されています。
そこで、インペリアル・カレッジ・ロンドンの進化生物学教授であるヴィンセント・サヴォライネン氏らの研究チームは、サンティアゴ島に生息する1700頭のアカゲザルからなるコロニーを観察し、そのうち236頭のオスのサルが従事した性的行動や血統について分析を行いました。サンティアゴ島のアカゲザルは研究対象として長年にわたり追跡されており、1992年以降の個体についてはDNA分析の記録があるとのこと。
2017年・2019年・2020年のうち合計72日間、1日7時間にわたってアカゲザルの行動を追跡したところ、236頭のうち72%は他のオスに対してマウンティングしていたのに対し、メスにマウンティングしたのは46%にとどまりました。研究チームは遠くから個体を観察していたため、実際にオスのペニスが相手の肛門に入ったかどうかを確認できなかったものの、マウンティングされたオスの一部では肛門に精子が詰まっていることが確認できたそうです。
マウンディングは相手への優位性を誇示するためにも行われるとされていますが、今回観察されたマウンティングの約半数がコロニー内の序列が上位のオスに対して行われており、社会的な地位とマウンティングの相関関係はみられませんでした。サヴォライネン氏は、「サルは時々勃起することがあり、挿入したり射精したりすることもありました。そのため、マウンティングは優位性の誇示ではなくセックスであると言うには十分だと思います」と述べました。
同性愛的行動に従事したオスのサルについて分析した結果、定期的に同性愛的行動に従事しているオスのペアは、コロニー内での対立時にお互いが協力する可能性が高いことが判明。また、同性愛的行動をしているオスはより多くの子孫を残すこともわかり、同性愛的行動は繁殖に利点をもたらす可能性も示されました。
サヴォライネン氏は、「私たちはかつて人々が言っていた『動物が同性とセックスをすればするほど、生まれる赤ちゃんは少なくなる』という意見と、正反対のことを発見しました」「セックスによって絆が深まると、セックスをしていない他のオスに対して共に戦うのです。その結果、オスは集団の中で優位に立ち、より多くのメスとセックスし、より多くの子どもを産むことになるのでしょう」と述べています。
さらに、血統データの分析からはオスにおける同性愛的行動の6.4%が遺伝性であり、残りは年齢分布などの環境要因によるものであることもわかりました。動物の同性愛的行動が遺伝子に基づくことが示されたのはこれが初であり、同性愛を引き起こす遺伝子が自然淘汰(とうた)のプロセスを通じて選択されてきた可能性が示唆されたとのこと。今後、研究チームはどの遺伝子が同性愛的行動につながるのかを知るため、より詳細な遺伝子分析を行う予定です。
サヴォライネン氏は、「私たちはアカゲザルと祖先を共有しています。本研究は、同性愛的行動はヒトにおいて進化的に発生した可能性があり、サルに見られるように有益なものかもしれないと論じています。もちろんヒトとこれらのサルには違いがありますが、共通点もあるかもしれません」「残念ながら、一部の人々の間では同性愛的行動が『不自然』だという考えがいまだに残っており、悲しいことに同性愛に対して死刑を執行する国もあります。私たちの研究によれば、同性愛的行動はヒト以外の動物でも広まっています」と述べました。
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