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イスラエル支持者は「親パレスチナ的なSNS投稿を検出して違反報告するためのアプリ」を使った市民主導のプロパガンダで世論を誘導している


2023年10月に勃発したイスラエルとハマスの軍事衝突に関連し、世界はイスラエルとパレスチナのどちらを擁護するのかで対立が深まっています。イスラエルの支持者らは、「親パレスチナ的なSNS投稿を検出し、プラットフォームに違反報告するためのアプリ」を使用して、インターネットの世論を動かしていると大手日刊紙のワシントン・ポストが報じました。

Pro-Israel apps make online activism easier - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2024/01/24/gaza-israel-activism-online/


パレスチナのガザ地区における戦闘が激化する中で、イスラエル陣営とハマス陣営はそれぞれが自らの正当性を主張し、世論を味方に付けようと争っています。ワシントン・ポストは、イスラエルの支持者らは「パレスチナ寄りのコンテンツを『プラットフォームのルールに違反している』として大量報告できるツール」を利用しており、時には親パレスチナ投稿に対してAIで生成したメッセージを送りつけることで、リプライを親イスラエルのメッセージで埋め尽くしていると報じました。

@palestinianpr1ncessというアカウント名で活動するTikTokクリエイターのNys氏は、すでに15~20件の親パレスチナ的な投稿が削除されていると証言しています。Nys氏の投稿にはAI生成と思われる親イスラエル的なコメントが殺到しているほか、投稿が「いじめ」や「ヘイトスピーチ」として違反報告されているとのこと。Nys氏はワシントン・ポストに対し、「私はヘイトスピーチをしていません。私はパレスチナで起きているすべてのことについて、解説しているだけです」と述べています。

また、コンテンツクリエイターでありポッドキャスターのLaura Chung氏は、12月に自身のTikTokアカウントが削除されたのはイスラエル支持者による大量通報キャンペーンが原因だと考えています。「私は教育目的で親パレスチナのコンテンツを作成し、大きな流行になっていました。TikTokアカウントが削除されたのは、これらのアプリが原因だと思います」とコメントしています。


イスラエル支持者らが使っているアプリのひとつであるMooversは、ユーザーに対して「ワンクリックでイスラエルを擁護する」ことを奨励しています。MooversはInstagramやTikTok、Facebook、X(旧Twitter)から親パレスチナ的な投稿を読み込み、ユーザーが簡単にこれらのコンテンツを違反報告したり批判コメントを送ったりできるようにしているとのこと。批判コメント用を自分でいちいち考えなくても済むように、事前に作成された親イスラエル的なスクリプトも提供されているそうです。

また、別のWords of Ironというアプリもほぼ同様に機能しており、「ソーシャルメディアの専門家が集めた反イスラエル的な投稿を表面化させ、ワンクリックでイスラエルの声を高める」と主張しています。さらにWords of Ironではどれだけ投稿へのアクションを行ったのかをバーで示し、ユーザーのアクションをゲーム化することでエンゲージメントを高めています。


これらのツールが「反イスラエル的・親パレスチナ的」と分類するものは幅広く、「イスラエルによる拘留中に性的暴行を受けたと主張する10代のパレスチナ人」に関して議論する投稿や、「イエス・キリストはパレスチナ人である」という投稿がWords of Ironでキュレーションされていたとのこと。また、特に反イスラエル的ではないものの、反ユダヤ主義的な投稿もこれらのツールの標的になっています。

インフルエンサーで弁護士のロージー・ピラニ氏は、自身の投稿にフラグが立てられたことで、自身の投稿がフォロワー以外の人に推奨されなくなり、発見タブやリールタブに表示されなくなったそうです。「Words of Ironのようなウェブサイトは、他のコンテンツクリエイターがパレスチナについて投稿するのを怖がらせており、言論の自由を萎縮させることを目的としています」と述べました。

イスラム教徒のジャーナリストであるアミール・アル・カタトバ氏によると、自身のイスラム教徒向けメディアが運営するInstagramアカウントには、投稿から10分以内にボットのようなメッセージが殺到するとのこと。「私たちは日常的にアカウント削除の警告に対処しています」とアル・カタトバ氏は述べ、コミュニティガイドラインに違反しないように細心の注意を払っていると証言しています。


表現の自由と市民権の保護を目標に掲げる超党派組織・Free Pressの上級顧問であるノラ・ベナビデス氏は、これらのアプリがオンラインにおける戦争の認識に影響を与えた可能性があると指摘。「これらのツールは信頼性を根底から覆し、人々がフィード上で何が起きているのかを理解し、コンテンツが本物なのかどうかを認識し、フィードに誠実さを感じることを難しくしています。フィードで親イスラエル的なコンテンツを目にした人は、それが自動化されたツールから発信されたものだとは理解しないかもしれません」と、問題点を指摘しています。

国際安全保障のシンクタンクであるアトランティック・カウンシルで上級研究員を務めるエマーソン・ブルッキング氏は、インターネット上の世論を誘導しようとするツールや戦術自体は以前からあるものの、一般市民を巻き込んでキャンペーンを展開するイスラエルのやり方は従来のものと異なると指摘。「これらのアプリはアメリカの言論を標的にしており、アメリカのユーザーを取り込もうとしています。このレベルの組織性と、それがオープンで行われているという事実は斬新です」と述べました。

イスラエル支持者らが使うツールは、実際には組織的な取り組みの結果であるとしても、それぞれの報告や投稿自体は無関係の個人から行われているため、プラットフォームが定める「組織的な不正行為」には該当しない可能性が高いとのこと。また、複数のアプリにまたがってユーザーのプライベートなアクティビティを追跡する方法がないため、どのコメントがツールによって生成されたものかを判断するのも困難です。

ボストン大学でジャーナリズムの助教を務めるジョーン・ドナヴァン氏は、「『市民主導のプロパガンダキャンペーン』は今後も続くでしょう。だからこそテクノロジー企業は、情報に通じた大衆を育成するために、評判のいいニュースソースを普遍的にプッシュする計画を進めなくてはならないのです。そうしなければ、プロパガンダキャンペーンの共謀者になります」と述べ、テクノロジー企業はこれらのツールから人々を守る方法を策定するべきだと主張しました。

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in モバイル,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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