イスラエルで子どもたちが虐殺されたことを訴える刺激の強い広告が子ども向けゲームアプリに表示されてしまう

イスラエルはパレスチナを実効支配する過激派組織・ハマスとの武力衝突に関連し、イスラエルへの支持を集めるための広告キャンペーンをオンラインで展開しています。そんなイスラエル寄りの刺激が強い広告が、小さな子ども向けゲームアプリに表示されてしまう事例が多数報告されているとロイターが報じました。

Graphic pro-Israel ads make their way into children’s video games | Reuters
https://www.reuters.com/world/graphic-pro-israel-ads-make-their-way-into-childrens-video-games-2023-10-30/

How graphic pro-Israel ads appeared in kids’ video games - YouTube

ある日、イギリスのロンドン北部に住むマリア・ジュリア・アシスさんの6歳の息子は、Androidスマートフォンでパズルゲームを遊んでいました。するとゲーム内の広告で、ハマスの過激派や襲撃におびえるイスラエルの人々、ぼやけているものの刺激が強い映像などを含む広告が表示されたとのこと。

広告には大量の血がついた子どものリュックサックなどが写っており、息子は取り乱した様子で「ママ、これは何なの？」と言い、何もタップしてないのに血みどろの広告が表示されたことにショックを受けていたそうです。アシスさんは、広告は「ハマスはISIS(イスラム国)だ」と訴えていたほか、イスラエルでは子どもたちがハマスに誘拐されており、次の被害者はあなたの子どもかもしれないと主張するなど、とても不安をかき立てるようなものだったと述べています。

息子は刺激が強い広告が表示されたことにショックを受け、アシスさんはすぐにゲームアプリを削除しました。

ロイターの調査では、同様の刺激が強い広告が子ども向けゲームアプリ内で表示されるケースが、イギリス・フランス・オーストリア・ドイツ・オランダで少なくとも6件報告されているとのこと。これらの広告はハマスによるロケット弾攻撃や爆発、覆面姿の武装集団といった刺激的な映像を含んでおり、ゲームアプリのうち1つはセガ傘下のロビオ・エンターテインメントが開発した人気ゲーム「アングリーバード」だったと報じられています。

ロビオ・エンターテインメントはロイターの取材に対し、これらの刺激が強い親イスラエルの広告が誤って表示されたことを認め、すでに手動で広告をブロックしたと回答しました。

イスラエル外務省でデジタル外交部長を務めるデビッド・サランガ氏は、問題の動画が政府の宣伝のために作成された広告であることを認めましたが、さまざまなゲームアプリ内に表示された理由についてはわからないと答えました。

イスラエルはハマスとの武力衝突が発生して以降、イスラエルへの支持を高めるインターネット広告キャンペーンに対し、150万ドル(約2億2400万円)以上を費やしてきたとのこと。イスラエル外務省は広告主に対し、18歳未満のユーザーには広告をブロックするよう指示したそうです。一方でサランガ氏は、「私たちは、ここイスラエルで起きたことを世界中に理解してほしいのです。これは大虐殺です」と述べ、広告キャンペーン自体の正当性を擁護しました。

カリフォルニア州立大学のコミュニケーション学教授であるナンシー・スノー氏は、「これらの広告がイスラエル外務省からのものである点は、驚きではありません」と述べ、イスラエルは以前から外交においてデジタル空間を積極的に利用してきたと指摘しています。

ロイターはどの広告企業が子ども向けゲームアプリに刺激が強い広告を表示したのかを調べるため、ロビオ・エンターテインメントがサードパーティーのデータパートナーとして記載している広告企業43社に問い合わせました。このうちAmazonを含む12社からは回答がありましたが、いずれもアングリーバードに掲載された広告に責任はないと主張したそうです。

アシスさんが住むイギリスで広告キャンペーンを監視する広告基準局は、記事作成時点ではイスラエル政府による刺激が強い広告を調査していません。その上で、一般的にいかなる宣伝も「生々しい画像」を避けるべきであり、18歳未満をターゲットにするには慎重になるべきだとの見解を示しました。

アシスさんは、まだ6歳の息子に対して子どもたちの虐殺といった恐ろしいコンテンツを見せたくはなく、イスラエルとハマスの武力衝突という非常に複雑なテーマについて、幼い子どもに話す準備はできていないとコメント。たとえそれが大人向けのゲームであったとしても、ゲーム内広告にプロパガンダを表示するのは適切ではないのではないかと述べました。