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イスラエルはX(旧Twitter)やYouTubeで「ハマスは残虐なテロ集団」と訴える過激なコンテンツを含む広告キャンペーンを展開している


2023年10月7日、ガザ地区を実効支配する過激派組織のハマスがイスラエルに侵攻し、これに応戦したイスラエルとの大規模な軍事衝突が起きています。記事作成時点で双方合わせて4000人超の死者を出したこの衝突において、イスラエルはSNS上でハマスを非難する広告キャンペーンを展開し、国際世論を味方につけようと試みていると政治系ニュースサイトのPOLITICOが報じています。

Israel floods social media to shape opinion around the war – POLITICO
https://www.politico.eu/article/israel-social-media-opinion-hamas-war/


イスラエルとハマスの軍事衝突が発生して以降、X(旧Twitter)などのSNS上で「ハマスの戦闘員がイスラエル人の村や住居を襲い、残虐な方法で赤ちゃんを含む大勢を虐殺した」という情報が出回っています。こうしたむごたらしい現場の状況を伝えるアカウントは、現地に住んでいる一般人やジャーナリストだけでなく、イスラエル外務省もハマスの行為を画像や動画付きで発信する投稿を行っています。

POLITICOは、イスラエル外務省は単にハマスを糾弾する投稿を行っているだけでなく、その投稿を「広告」として拡散する大々的なソーシャルメディアキャンペーンを行っていると報じました。イスラエルの主張をアピールする広告はXやYouTubeで配信されており、ヨーロッパやアメリカなどの主要な西側諸国をターゲットにしているとのこと。


イスラエル外務省の投稿には、残酷で感情をかき立てるような画像や動画を添付したものも多いですが、中には以下のようにファンシーな映像にメッセージを組み合わせたものもあります。概要欄には「乳幼児はこの動画のテキストを読めませんが、親は読むことができます。40人の乳児がハマスのテロリストによって殺害されました。私たちは、あなたが自分の子どもを守るためにできる限りのことをすると知っています。それは、私たちがやろうとしていることです」と記されています。動画内のテキストは「HAMAS TERRORIST(ISIS)」となっており、イスラエル外務省は欧米でも知名度が高いISIS(イスラム国)とハマスを重ね合わせてアピールしています。

Babies Can’t Read The Text In This Video But Their Parents Can - YouTube


戦争や紛争では古くから世論を味方に付けるための情報戦が展開されてきましたが、近年は情報戦の最前線がオンラインに移行しつつあり、それは2022年から続くウクライナとロシアの戦争でも顕著でした。今回のイスラエルの広告キャンペーンは、特定の国やユーザー層をターゲットにしたオンライン広告に資金を投じることが、政府がより多くの人にメッセージを伝える重要な手段のひとつになっていることを示しています。

Xの広告プラットフォームのデータによると、イスラエル外務省は1週間で30件もの広告を掲載しており、合計で400万回以上も閲覧されたとのこと。10月12日に表示され始めたある広告は、ブリュッセル(ベルギー)、パリ(フランス)、ミュンヘン(ドイツ)、ハーグ(オランダ)に住む25歳以上の成人をターゲットに配信されており、動画にはピックアップトラックに乗せられた生気のない女性の画像が含まれ、虐殺の規模と内容が示されていました。

また、YouTubeではイスラエル外務省によって75以上の異なる広告が配信されており、中には生々しい画像や動画を含むものもあるとのこと。Googleの透明性データベースによると、広告はやはりフランス・ドイツ・アメリカ・イギリスなどの西側諸国の視聴者をターゲットにしているそうです。

イスラエルのEUミッションの広報担当者は、「以前はこのように生々しいものを投稿することはありませんでした。これは私たちの文化にないものです。私たちは故人に敬意を払っています。戦争は地上だけで起きているのではないのです」とコメントし、つらいことだが広告キャンペーンは軍事作戦を有利に進める上で必要だとの見方を示しました。


イスラエルによる過激なコンテンツを含む広告キャンペーンは、配信できるコンテンツに基準を設けるプラットフォームに課題を与えました。たとえばGoogleはPOLITICOにコメントを求められた後、広告ライブラリから暴力的な画像を含む約30の広告を削除し、「暴力的な言葉、陰惨または嫌な画像、生々しい画像、身体的トラウマの説明を含む広告は許可されていません」とコメントしました。一方、InstagramやFacebook、LinkedIn、TikTokでは同様の広告が掲載されていなかったとのこと。

暴力や残虐行為に関連する広告は、配信ターゲットとなったユーザーからの反発を引き起こしています。国際安全保障のシンクタンクであるアトランティック・カウンシルで上級研究員を務めるエマーソン・ブルッキング氏は、「戦争への支持を高めるために道徳的怒りをかき立てるのは、戦争そのものと同じくらい古い戦術です。しかし、これほどまでにソーシャルメディアと衝突したことはなかったように思います」と述べました。

また、EUのデジタルサービス法を担当する欧州委員会のティエリー・ブルトン氏は、一部のプラットフォームに対し若いユーザーを有害コンテンツから保護する取り組みを強化するよう求めており、イスラエルの広告が規制対象になる可能性もあるとのこと。

イスラエルがオンライン広告キャンペーンを展開する一方で、ガザ地区は空爆などでインフラストラクチャーに甚大な被害が出ているため、ハマスや親パレスチナグループが同様の広告キャンペーンを展開することは難しいとPOLITICOは指摘。ブルッキング氏は、「同じ広告媒体を利用できる親パレスチナ派による、強力な対抗メッセージの取り組みを想像するのは困難です。これはソーシャルメディアという戦場において、イスラエルが本当に有利な部分のひとつです」と述べました。


とはいえ、ハマス側もSNSやオンライン上でのアピールに従事していることは明らかです。ハマスはXやFacebookなどの主要なSNSから締め出されていますが、メッセージングアプリのTelegram上で過激なメッセージを投稿しています。これらの投稿が別のユーザーによって主要なSNSに転載され、ハマスの主張がさまざまなSNS上で拡散されています。

Hamas uses Telegram to give its version of war with Israel - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2023/10/18/hamas-social-media-terror/

10月17日にガザ北部の病院で爆発が起きた際も、ハマスはただちにイスラエルを非難するメッセージを投稿し、これが近隣諸国の反イスラエル感情をかき立てました。ハマスの戦闘員はスマートフォンを持ち歩いて戦場でさまざまな動画を撮影しているほか、身につけたGoProが撮影した映像もすぐさまTelegramに投稿されており、明らかにソーシャルメディア戦略を重視していることが報じられています。

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