サイエンス

既存の電波望遠鏡群に便乗して地球外生命体を探査するプロジェクト「COSMIC」とは何なのか?


宇宙の広大さを考えれば地球以外の惑星にも生命体が存在する可能性は高く、古くから多くの科学者らが地球外生命体の探査を行ってきました。2024年1月8日、地球外生命体の探査を行っているアメリカ・カリフォルニア州のSETI研究所が、地球外生命体が発するテクノシグネチャーを検出するプロジェクト「Commensal Open-Source Multimode Interferometer Cluster(COSMIC)」の現状や将来の計画について報告しました。

COSMIC: An Ethernet-based Commensal, Multimode Digital Backend on the Karl G. Jansky Very Large Array for the Search for Extraterrestrial Intelligence - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/ad0fe0

COSMIC: The SETI Institute is Unlocking the Mysteries of the Universe with Breakthrough Technology at the Karl G. Jansky Very Large Array
https://www.seti.org/press-release/cosmic-seti-institute-unlocking-mysteries-universe-breakthrough-technology-karl-g-jansky-very-large

SETI scientists begin huge new hunt for intelligent aliens | Space
https://www.space.com/cosmic-seti-alien-life-search-underway

COSMICは、アメリカのニューメキシコ州にあるカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)の観測データを利用し、地球外生命体の探査を行うというプロジェクトです。

VLAは直径25mのパラボラアンテナ27基を、一辺21kmの「Y」の字状に敷設された線路の上を移動させ、宇宙から飛来する微弱電波を検出して天体観測を行います。COSMICはVLAの運用施設内にシステムを構築し、各パラボラアンテナからのデジタル信号を増幅・分割してコンピューターサーバーに送信しているとのこと。このデータを用いて、SETI研究所などのチームは地球外生命体の痕跡を探しています。

by cmh2315fl

すでに広大な探索能力を持っているVLAに便乗することで、COSMICは地球外生命体の探索範囲を大幅に広げています。これまでの地球外生命体探査では数千個の恒星しかカバーできていなかったものが、COSMICでは0.75GHz~50GHzの周波数で数十万、あるいは数百万もの恒星系を探索できるようになり、探索範囲は全天の80%に及ぶとされています。

COSMICは2023年1月に3回目の観測が始まったVLA Sky Survey(VLASS)に便乗し、VLAが観測したデータのコピーをリアルタイムで分析しています。微弱電波を迅速に分析することで、地球外生命体のテクノシグネチャーの可能性がある信号が本当に地球外生命体によるものなのか、他の発信源によるものなのかのフォローアップ調査がスムーズになるとのこと。


SETI研究所の天文学者であるチェノア・トランブレー氏は、「現在の焦点は、最初の6カ月間で50万以上のソースが観測された、テクノシグネチャーに関する最大級の調査のひとつを作成することです」とコメント。COSMICは記事作成時点で、毎時約2000件もの宇宙電波ソースをスキャンしているそうです。

以下は、COSMICが観測対象としている恒星系の位置を点で、微弱電波をマッピングした領域を塗りつぶしで表現した図です。


COSMICはあくまでVLAの観測データをコピーして分析しているため、VLAが行うその他の分析を邪魔することはありません。また、COSMICのシステムは将来的な拡張を念頭に置いて設計されているため、アップデートにより同時に観測できる対象物の数を増やしたり、機械学習アルゴリズムを導入してデータ分析を効率化したりできる可能性があるとのこと。

また、システムは適応性があるため、地球外生命体の探査以外の天文学プロジェクトにも使用可能です。トランブレー氏は、「設計の柔軟性により、高速電波バーストのパルス構造の研究や、ダークマターの候補であるアクシオンの探索など、他の幅広い科学的機会がもたらされます」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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