著作権違反によるGoogleへのDMCA削除リクエストは日々過去最高を更新する勢いで増加中、その原因と実態とは?
Googleは著作権侵害への取り組みとして、著作権侵害の疑いがあるコンテンツをGoogle検索の検索結果で上位に表示されなくしたり、削除したりする措置を講じています。このほとんどは、アメリカのインターネット上に存在する著作物に対する法律であるデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づく削除リクエストに従っていますが、このDMCA削除リクエストが年々増加し、過去最高を更新し続ける状態にあることが報じられています。
Google Sees DMCA Takedown Requests Surge to New Highs * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/google-sees-dmca-takedown-requests-surge-to-new-highs-240110/
Googleはプライバシー、セキュリティ、情報へのアクセスデータを公開する透明性レポートに、「著作権問題によるコンテンツの除外」セクションを2012年に追加しました。このページには、これまでDMCAリクエストされたURLの総数、著作権侵害だと指定されたドメイン、リクエストをした著作権者数、団体数が記録されています。これによると、記事作成時点までのリクエスト総数は77億4931万件。
かつてGoogleの上級著作権顧問を務めていたフレッド・フォン・ローマン氏によると、2012年時点のDMCAリクエスト処理数は多い時で1週間に25万件以上あり、これは従来1年間に受け取るリクエストの数を超えるものだったそうです。
DMCAリクエストの数は年々増加しており、Googleが最初にリクエスト数を公表した時には1年間に数百万件だったものの、2016年には年間リクエストが10億件を超えました。2022年にはブロックの対応をしたURLだけで6億8000万件にのぼり、そのうち40%は検索結果に一度も表示されることなくURLが削除される「プリエンプティブ(先手必勝)削除」だったことをGoogleは報告しています。
Googleが2022年に著作権侵害でブロックしたURLは6億8000万件以上、半数近くが一度も表示されることなくブロックされている - GIGAZINE
以下のグラフは、著作権関連のニュースを発信するメディアのTorrentFreakが示した、Googleが公開しているDMCAリクエスト数の推移を示したグラフ。縦軸がリクエストの総数で、横軸が2年ごとの時間経過です。グラフでは、2012年の公開当初から時間経過に比例して増加していましたが、2017年頃から増加傾向は少しだけ落ち着いていることがわかります。これは、著作権侵害を行うサイトへの対策がDMCAリクエストを受けての削除対応だけではなく、さまざまな著作権侵害対策アルゴリズムにより、海賊版サイトのランクを下げて「海賊版コンテンツが検索結果に表示されにくくなる」といった措置が講じられたため。その結果、Googleが処理する削除通知の数は一時的に減少したそうです。
しかし、海賊版サイトのランクを下げる取り組みは継続しているものの、DMCAリクエスト数が減少傾向にあった時期は短く、2022年頃には記録的な数のリクエスト数になりました。2024年1月時点では、Googleは1週間あたり3000万件以上の削除リクエストを処理しており、これは毎秒約50件、年間16億件以上のペースとなっています。
このような状況になっている原因としては、著作権を行使して「海賊版コンテンツのアップローダーを個別に追跡して和解に持ち込むことで金銭的利益を得る」という訴えを大量に行う「著作権トロール」が増加していることが一因として考えられます。著作権を行使した訴訟は、2022年に「記録的な数の海賊版訴訟を起こした」と言われた上で、2023年にはさらに2022年を57%上回るペースで訴訟が発生しました。中には数カ月で数億のリクエストを送る企業もあるため、増加傾向に影響を与えていることが推測できます。
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また、TorrentFreakによると、以前はDMCAリクエストの大半を権利者もしくは権利団体が実施していましたが、現在はDMCAリクエストを専門に行う代理業者が担当するケースもあるとのこと。そのため、Googleの削除件数が今後どのように推移するかは、主にこういった代理業者の動きに依存するとTorrentFreakは予測した上で、「しかし、まったく新しい対海賊組織が浮上し、乗っ取る可能性もあります。この業界には退屈な瞬間はありません」と語っています。
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