ネットサービス

Wi-Fiより高速通信できる次世代規格の「Li-Fi」とは?


インターネット通信を利用する上で欠かせない技術となっている「Wi-Fi」とは別の、次世代の無線通信技術が「Li-Fi」です。Wi-Fiの標準規格を策定するIEEEが発行する雑誌・IEEE Spectrumが、Li-Fiとは一体どんな無線通信技術なのかをまとめています。

Why Li-Fi Might be Better than Wi-Fi - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/li-fi-better-than-wi-fi


Wi-Fiは電波を用いてデータ通信を実現する規格ですが、スコットランドのpureLiFiが開発する次世代無線通信技術の「Li-Fi」は、電波の代わりに光波を用いてデータの送受信を行います。2023年7月、IEEEはLi-Fiの標準規格として「IEEE802.11bb」を承認しました。

IEEE802.11bbはLi-Fi対応デバイスが相互に通信する方法や、データ転送速度に関するルールを定義するものです。IEEEによると、IEEE802.11bbでは10Mbps~9.6Gbpsの速度でデータの送受信が可能になるとのこと。IEEE802.11bbは高速で信頼性の高いワイヤレス通信を実現し、「インターネット通信に革命をもたらすことになるだろう」とIEEE Spectrumは記しています。

Li-Fiは光を用いた無線通信技術です。光は壁を透過しないため、Li-Fiは空間内に閉じ込めることが可能です。そのため、部屋の外から中間者攻撃を仕掛けられるといった危険もありません。また、Li-Fiはデフォルトで軍用レベルのセキュリティを提供することが計画されているため、Li-FiはWi-Fiよりも極めて安全な無線通信技術であるとpureLiFiは説明しています。


また、無線周波数を用いた既存の無線通信技術では、電波の干渉や輻輳(ふくそう)、複数人での利用時に劣化が起きるなど、いくつかの落とし穴があります。これが無線通信利用時に公称通りのパフォーマンス(パッケージに書かれているような通信速度)を体験できない理由です。一方で、Li-Fiは完全に一貫して信頼性の高い接続を提供でき、干渉・輻輳・複数人利用時の劣化に悩まされることのない高帯域幅の無線通信を実現できる模様。


Li-Fiは小型の制御ユニット、ソリッドステートの発光体と感光性の受光器を備えた特別な照明器具を利用します。器具は光波を利用してデータを送受信し、Li-Fiに接続するにはスマートフォン・タブレット・その他デバイスに光信号を送信するためのエミッターとセンサーが必要になる模様。なお、ハイエンドのスマートフォンでは顔認証機能やレーザー測距システムのLiDARなどで、すでにエミッターやセンサーが利用されています。

Li-Fiの一般的なセットアップの場合、ローカルエリアネットワーク(LAN)経由でインターネットに接続します。LANは天井や電気スタンド内などに設置され、Power over Ethernet(PoE)または電力線通信を介して接続されたLi-Fi対応アクセスポイントを介し、新しいワイヤレスアクセスの機会を提供するそうです。Li-Fiのアクセスポイントはバッテリー駆動のデバイスと双方向通信を可能とし、シームレスで堅牢なワイヤレスエクスペリエンスを提供します。

無線通信規格にはWi-Fi、Bluetooth、ZigBeeなどさまざまなものがありますが、どれも電波を利用するため、干渉という問題が発生します。これに対してLi-Fiは光を用いるため、競合も少なくて済みます。

Li-Fiの採用を推進する重要な要素のひとつは、Wi-Fiと同じ高度な変調技術を使ってデータを光波にエンコードすることで、ピークレートを実現できることです。Li-Fiでは直交周波数分割多重方式(OFDM)と呼ばれるマルチキャリア変調技術を用いる模様。


IEEE 802.11の標準策定を行うワーキンググループに所属しており、IEEE802.11bbの推進において重要な役割を担ったというフラウンホーファーHHI研究所所属の研究者であるVolker Jungnickel氏は、Li-Fiの利点と欠点について説明しています。

Jungnickel氏によると、「Li-Fiは1平方メートルあたり最大100Mbpsのデータ転送速度でのワイヤレス通信を可能にし、人口密集地、つまりは会議室や教室での利用に最適です。電波ベースの無線通信技術と干渉しないのも特徴です。また、Li-Fiは物理的境界で途切れるという特徴を持っているため、通信の傍受が困難になるため、セキュリティ面でも優れています」と説明しています。


一方で、Li-Fiの欠点については「通信範囲が比較的狭く、通常はひとつの部屋の中(数メートル以内)程度に制限される点です。つまり、広範囲をカバーするには複数のアクセスポイントによるネットワークを構築する必要があります。加えて、利用可能な帯域幅は光源と検出器の機能によって制限される可能性があります。また、Li-Fiインフラストラクチャーの導入は、Wi-Fiと比べてべ高コストになると考えられるでしょう」と語りました。

Jungnickel氏はIEEEがLi-Fiの標準規格を策定したことで、Li-Fiの世界的な導入が促進される可能性を指摘しています。新しいテクノロジーが普及するには、政府や主要な市場関係者、研究機関などの協力が不可欠です。研究プロジェクトや試験的取り組みに対する政府の資金提供は、競争前の段階の技術開発や市場確立を刺激することができます。一方で、小規模な企業にとっては企業間の競争がハードルとなるケースがありますが、競争前の段階で協力して収益性の高い市場を形成することで課題を克服することも可能です。特に、標準化は独自のテクノロジーを克服し、相互運用性を可能にするのに役立ちます。これによりユーザーは同じネットワークに統合されているさまざまなベンダーの製品を購入できるようになり、顧客とベンダーの両方が新しいテクノロジーに投資するリスクが軽減されることにつながるわけです。

なお、IEEE Spectrumは将来的にLi-Fiがテレビやスマートフォンなどの日常的なデバイスに統合されることを期待しています。

◆フォーラム開設中
本記事に関連するフォーラムをGIGAZINE公式Discordサーバーに設置しました。誰でも自由に書き込めるので、どしどしコメントしてください!Discordアカウントを持っていない場合は、アカウント作成手順解説記事を参考にアカウントを作成してみてください!

• Discord | "光波で通信する「Li-Fi」、いつ頃普及すると思う?" | GIGAZINE(ギガジン)
https://discord.com/channels/1037961069903216680/1185148714910756874

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
インターネットを劇的に高速化できる新技術「L4S」をApple・Google・NVIDIA・Valveなどが推進中、一体どういう技術なのか? - GIGAZINE

Wi-Fi 6より最大4.8倍高速なWi-Fi 7は2024年3月末までに利用可能に - GIGAZINE

次世代Wi-Fi規格「Wi-Fi 7」の詳細まとめ、Wi-Fi 6よりも具体的にどの程度高速化できるのか? - GIGAZINE

次世代通信規格「Wi-Fi 7」の世界初のデモで現行規格の2.4倍の通信速度を達成 - GIGAZINE

in ネットサービス, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article What is 'Li-Fi', the next generation sta….