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偽造チップをつかまされたエンジニアが偽物を見破った方法


SSDが偽物だったり、AirPods Proが偽造品だったりと、インターネットで購入した商品が偽造品だったというケースは多数報告されています。インターネット上で購入したレトロデバイス用のチップが偽造品だったというエンジニアのアンドリュー・ハッチングさんが、どのようにして偽造品であるかを見破ったかをブログ上で明かしています。

Fake chips, I got stung – LinuxJedi's /dev/null
https://linuxjedi.co.uk/2023/12/01/fake-chips-i-got-stung/

1979年に発売されたAcorn Atomを修理するという独自のプロジェクトを進めていたハッチングさんは、Acorn Atomに搭載されているオリジナルのCPUをより消費電力が少ないものに置き換えようとしました。

Acorn Atomに搭載されているオリジナルのCPUである6502は、NMOSプロセスで製造されており消費電力が多くなっているのに対して、後に登場したRockwell製の「R65C02」はより消費電力が少なくて済むのが特徴です。R65C02はオリジナルの6502よりも新しいプロセスノードで製造されているため、理論上は6502よりも消費電力が1桁少なくなるはずだそうですが、ハッチングさんが購入したR65C02は6502と消費電力が変わりませんでした。

ハッチングさんは「最初に気づいたのは、これまで使ってきたほとんどのチップと比べて印刷が明るすぎることでした。印刷が何もかもずれているようにも思えました」と述べています。そのため、ハッチングさんは購入したR65C02が偽造品なのではと疑うようになったそうです。


ハッチングさんはまずアセトンを使ってチップ表面の印刷が消えないかテストしました。通常、集積回路(IC)の印刷は製造時に使用される強力な洗浄剤にも耐えられるようになっています。一方で、チップの印刷を偽造したものの場合、アセトンで印刷を除去できるケースがあるそうです。

アセトンに浸した綿棒で購入したR65C02の表面をこすったところ、簡単に印刷の一部が消えてしまったため、ハッチングさんは偽造品の疑いを深めました。


続いて、ハッチングさんは論理テストを実施しました。論理テストにはビンテージコンピューターの診断や修理を行うツールであるChip Tester Pro V2を使用。Chip Tester Pro V2にはCPUがどのバリアントかを診断する機能があるためこれを利用したところ、ハッチングさんが購入したR65C02は「6502」であると診断されました。

Chip Tester Pro V2の画面上には「診断結果、6502」と表示されています。


この他、ハッチングさんが購入したR65C02の表面には「0032」という数字が印刷されています。これは2000年の第32週を意味しているとハッチングさん。しかし、1999年にRockwellの半導体部門はConexantという企業に分割されているため、1999年以降に製造されたチップにはConexantのロゴが印刷されているはずだそうです。つまり、Rockwellのロゴが印刷されているチップに「0032」という数字が印刷されることはあり得ないというわけ。


さらに、インターネット上で検索するとR65C02の正しいウェハーIDは「11450」だそうです。しかし、ハッチングさんが購入したR65C02には「11473」と印刷されています。


ハッチングさんは購入したR65C02が偽物であることが判明してから、別のR65C02を購入。以下はその写真で、ウェハーIDは正しい「11450」となっています。ただ日付コードはRockwellロゴが使われていないはずの「2015年の第30週製造」を示す「1530」です。


そこで新しく購入したR65C02をChip Tester Pro V2で診断した結果が以下。「診断結果、65C02」と表示されており、Rockwellロゴはあるものの、R65C02であることが証明されました。なお、表面に印刷されている「R65C02P3」の末尾にある「3」は、R65C02の定格周波数が「3MHz」であることを意味しているとハッチングさんは推測しています。


オリジナルの6502(上)と偽のR65C02(真ん中)、本物と思われるR65C02(下)を並べて撮影したのが以下の画像。


裏面はこんな感じ。オリジナルのCPUは表だけでなく裏面にも印刷があります。


ハッチングさんによると、印刷が異なる偽造チップを販売しているイギリスの販売業者は多数存在しており、古いチップが偽造品か否かを購入段階で見分けるのは「非常に困難」とのこと。チップが偽造品である場合、使用するマシンが物理的な損傷を受ける可能性があるとハッチングさんは警告しています。

なお、偽物のR65C02の裏面には中国語で「贤」と書かれており、これは「高潔な、価値のある、善良な」といった意味だそうです。

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in ハードウェア, Posted by logu_ii

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