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Ciscoがウクライナに無償提供した対ロシア改造イーサネットスイッチはどんな仕組みなのか?

by Brandon Leon

2022年2月下旬にロシアがウクライナへの侵攻を開始して以来、ウクライナのエネルギーインフラストラクチャはロシアからのサイバー攻撃の被害をたびたび受けています。大手コンピューターネットワーク機器開発会社のCiscoはウクライナの国営電力会社「Ukrenergo」に対し、ロシアのサイバー攻撃に耐えられるような改造イーサネットスイッチを出荷しています。

Modded Cisco switch stymies Russian electricity grid attacks • The Register
https://www.theregister.com/2023/11/22/cisco_modded_switch_ukraine/


Cisco aids Ukraine in cyber defense with modified switches to counter Russian attacks - IT World Canada
https://www.itworldcanada.com/post/cisco-aids-ukraine-in-cyber-defense-with-modified-switches-to-counter-russian-attacks

2022年2月下旬からウクライナと戦争状態にあるロシアは、ウクライナ軍によるドローンやミサイル攻撃を防ぐためにGPS信号を妨害しています。このGPS信号妨害によって、産業用制御システムにGPSを用いるウクライナの変電所などが被害を受けています。


GPS信号が妨害されると、変電所内のシステムにおいて時刻の同期が不可能になり、電力グリッドの状態を配電担当者に対して正確に報告することができなくなります。その結果、変電所が物理的な攻撃を受けた場合、修理作業が遅延したり、断線などによるグリッド全体の電力供給のバランス調整に問題が生じた際の原因究明に支障が発生したりする場合があるとのこと。

そこでCiscoはUkrenergoに対し、産業用イーサネットスイッチ「Industrial Ethernet 5000 シリーズ」に改造を加えたスイッチを提供しました。改造されたスイッチは、水晶発振器を搭載することで、GPSが利用できない電波妨害下においても正確な時刻を維持することが可能です。さらにCiscoは時にマイナス20℃を下回ることもあるウクライナの冬において、改造スイッチが正常に動作することを確認しています。


改造スイッチの開発や製造には約100万ドル(約1億5000万円)もの費用がかかりましたが、ウクライナ支援を表明しているCiscoは、アメリカ国防総省やアメリカエネルギー省、商務省との調整を行った上で、Ukrenergoに対して機器の無償提供を行いました。Ciscoのシニアセキュリティストラテジストで、改造スイッチの開発を主導したジョー・マーシャル氏は今回の開発について「8カ月にわたるエモーショナルな旅でした」と語っています。


ウクライナの治安維持機関SBUのサイバーセキュリティ責任者であるイリア・ヴィティウク氏は「2023年から2024年の冬の間もロシアからのサイバー攻撃は続くでしょう。そのため、ウクライナではこれらの対策は非常に重要です」と述べています。

Ciscoは改造スイッチの提供にとどまらず、今後もUkrenergoに対して、ヨーロッパの電力網との同期に関する制御・保護システムの改善を行うための送電網インフラの近代化などでサポートを行うことを明らかにしており、CiscoとUkrenergoが緊密に連携していることを強調しています。

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in ハードウェア, Posted by log1r_ut

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