体内のエネルギーを「バッテリー」に例えて理解し約15kgの減量に成功したコンピューター科学者のダイエット記録


生まれてこのかた健康や運動、食事や栄養に関心がなかったという元テスラ従業員のコンピューター科学者、アンドレイ・カルパシー氏が、何を食べ、どんな運動をし、どうやって90kgあった体重を75kgまで落としたのかをテクノロジー的視点を織り交ぜて解説しています。

Biohacking Lite
http://karpathy.github.io/2020/06/11/biohacking-lite/

カルパシー氏は生まれてこのかた健康や食生活に興味がなく、運動や野菜の摂取が良いことだというざっくりとした理解しかしていなかったそうです。2019年6月、自身の体重が200ポンド(約90kg)前後だったことが判明し、適正体重である175ポンド(約79kg)にまで減量することに決めたというカルパシー氏。ダイエットを始める前に、まず生化学とエネルギーについて調査を始めたそうです。


カルパシー氏は脂肪とエネルギーをバッテリーに例え、「体重が増えるというのはiPhoneのバッテリーが過充電されているようなもの」と解説。満充電を超えて電力を供給するように、人間は蓄えたエネルギーを上回るように食事を行うことがあります。これがまさに過充電で、エネルギーを蓄え続けると当然ながら体重の増加につながっていくのです。

生物のエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)に蓄積されています。エネルギーが消費される際はATPがADP(アデノシン二リン酸)とリン酸に加水分解され、エネルギーが蓄えられる際はリン酸がADPに結合して再びATPとなります。バッテリーの充放電に似ているとも言えるこの仕組みですが、カルパシー氏によると体内におけるバッテリーシステムは大きく4つに分けられるそうです。


◆1:超短期のバッテリー
ATPから得られるエネルギーはわずかしかなく、激しい運動では大量に結合・分解を繰り返さなければなりません。そのため、特に激しい運動では、エネルギー貯蔵物質「クレアチンリン酸」がすみやかに分解することでリン酸を生み出し、素早くADPをATPに再合成する手助けをしています。このクレアチンリン酸は急速な充電が可能なものの、短期間しか稼働しないため、カルパシー氏は超短期のバッテリーと表現しています。

◆2:短期のバッテリー
グリコーゲン、あるいはグルコースを分解する過程でATPを合成する経路、いわゆる解糖系が短期のバッテリーに当たります。グルコースなどの多糖類は肝臓に約120グラム、骨格筋には約400グラム貯蔵でき、合計約2000kcalが得られることが期待できますが、質量当たりのエネルギー密度はあまり高くありません。

◆3:長期のバッテリー
脂肪は高密度超大容量バッテリーパックともいえ、エネルギー密度、容量ともに体内で最高の存在です。例えばカルパシー氏の体重90kgのうち18kgは脂肪と推定されますが、ここには16万2000kcalが蓄えられている計算になるそうです。脂肪だけで換算すれば81日間連続で走り続けるくらいのことができる量で、ダイナマイトに換算すると678本分になります。

◆4:脂肪以外
絶食が続くと、体は主に筋肉を燃やしてエネルギーとすることがあります。飢餓状態で体が「最後の手段」として使うバッテリーです。


これら4つのバッテリーは常に異なる量で充放電されています。例えばクッキーを食べたばかりなら、クッキーは速やかにグルコースに分解されて血液中を循環して放電準備状態に入り、グルコースが多い場合は肝臓や骨格筋にグリコーゲンとして貯蔵されるか、あるいはもっと多い場合は脂肪に変換されます。

エネルギー消費の際、ジョギングで例えると最初の3秒間は主に「超短期のバッテリー」が使われ、次の8~10秒間は「短期のバッテリー」が無酸素的に使われ、その後心拍数や呼吸数が増えて酸素輸送量が増えれば、「短期のバッテリー」と「長期のバッテリー」が有酸素的に使われることになります。


カルパシー氏は「私はコンピューター科学者なので、どのバッテリーが使われるのかという仕組みをコンピューターシステムと比較してしまいます。例えば、エネルギーを移動させることは、チップの中でビットを移動させるのと同じようにコストがかかるものです。『超短期のバッテリー』はL1/L2キャッシュで、ローカルで即時性があるが小さいもの。嫌気呼吸の『短期のバッテリー』はRAMであり、好気呼吸の『長期のバッテリー』はディスクです。待ち時間は長いけどスループットは高く、記憶容量は大きいですよね」とコメント。次にエネルギーが消費される仕組みについて解説しました。

人間のエネルギー代謝は非常に単純で、食物を分解することでしかエネルギーを得られません。エネルギーを消費する行動は複雑で、運動はもちろん、生命活動に必要な心臓の拍動や呼吸、脳の活動などあらゆるもので消費されます。こうした生命維持に必要なエネルギー量を基礎代謝量と呼び、たとえ一日中寝ていたとしても「タダ」でこれを消費するのです。例えば、カルパシー氏の基礎代謝量は1日1800kcal前後。運動だとほんの数百kcal分走っただけで息が上がってしまうことを考えると、これは破格の数値です。


まとめると、摂取エネルギー量から消費エネルギー量(基礎代謝量+運動量)を引いたものが充電量で、充電量がマイナスであれば体重が減っていくことになります。ここまで理解したカルパシー氏は次に実践的なダイエット法を考案します。

カルパシー氏は、ストレスを抱えたり、空腹を感じたりする減量はやりたくなかったとのこと。自分が達成できそうな目標値として、1週間当たり約1.5kgの減量を掲げます。これは、おおよそ1日あたり500kcalずつ充電量を減らしていけば目標を達成できるということ。

ダイエットのため、カルパシー氏は低炭水化物中心のダイエットに取り組みました。カルパシー氏はほぼすべての砂糖と加工食品を断ち、すぐに糖分に分解されるような炭水化物の多い食品を避けてリンゴやバナナなどの植物性食品を食べ、ソーダ、オレンジジュース、アルコールなどの飲み物を飲まないという食生活を実施。


さらに、週に数回の定期的な有酸素運動を始め、筋肉に負荷をかけるレジスタンストレーニングなどを始めました。定期的にサボりつつ1年間実施した結果、90kgあった体重は約75kgにまで減少したそうです。以下がカルパシー氏の体重の推移を示したグラフで、1日500kcal減生活を始めた120日目以降、1週間で約0.26kgずつ減少したとのこと。


カルパシー氏は「全体として、1日平均500kcalずつ減らすことで、1年間で体重が15kg減少しました。さらに重要なことはATPを『充電』するというのを学んだことにあります。余分なエネルギーは脂肪として体内に蓄積されるため、摂取量を減らすか、運動によってエネルギーの一部を浪費して放電させ、体重を減らす必要があります。このようなトピックを独学で勉強するのはとても楽しいことでした」と締めくくりました。

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in , Posted by log1p_kr

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