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YouTubeが「ミュージシャンの声を使った動画を作成するためのAIツール」のリリースに向けてメジャーレーベルと協議を進めている


近年は生成AIテクノロジーの発達により、誰かの声をAIに学習させてスピーチを読ませたり歌わせたりすることが技術的に可能になっており、2023年4月にはカナダのラッパー・Drakeの声でThe Weekndの「heart on my sleeve」を歌わせる動画が登場して話題を呼びました。そんな中、YouTubeが「ミュージシャンの声を使った動画を作成するためのAIツール」のリリースに向け、メジャーレーベルと協議していると報じられました。

YouTube Is Developing an AI Tool to Help Creators Sound Like Musicians – Billboard
https://www.billboard.com/pro/youtube-developing-ai-tool-creators-sound-like-musicians/


YouTube Working on AI Tool That Lets Creators Sing Using Musicians' Voices - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-10-19/youtube-working-on-tool-that-would-let-creators-sing-like-drake

YouTubeは2023年9月に開催した年次イベント「Made on YouTube」で、クリエイター向けにAIを活用したツールを複数発表しました。発表されたAIツールには、テキストからショート動画用の背景を生成できる「Dream Screen」や、動画内のセリフにAIが自動で字幕を付ける「YouTubeCreate」、視聴者の好みから動画のアイデアを提案する機能などがあります。

YouTubeがAIを駆使してYouTubeショートの背景や字幕を自動で作成したり視聴者に受けるネタを提案したりする機能を発表 - GIGAZINE


芸能メディアのBillboardは、YouTubeはMade on YouTubeで「好きなアーティストの声を使ってクリエイターが動画を作成できるAIツール」を発表することを望んでいたと報じました。しかし、まだメジャーレーベルとの契約が締結されていないため、イベントでこのAIツールが発表されることはなかったとのこと。

情報提供者によると、YouTubeはユニバーサルミュージックグループソニー・ミュージックエンタテインメントワーナー・ミュージック・グループといったメジャーレーベルと、引き続きAIツールにアーティストの声を使用する権利の交渉を続けているそうです。

アーティストと生成AIを取り巻く関係は複雑であり、ユニバーサルミュージックグループは「AIのトレーニングに楽曲が使用されるのを阻止してほしい」とSpotifyやApple Musicに要求しています。しかし、AIという最新テクノロジーを拒否し続ければ業界の不利益になるという懸念もあるため、YouTubeと提携して「アーティストや作品を守りながらAIを活用するための3原則」を発表するなど、AIを受容する姿勢も見せています。

YouTubeが「アーティストや作品を守りながらAIを活用するための3原則」を大手音楽企業と提携して発表 - GIGAZINE


特にYouTubeの親会社であるAlphabetはAIへの投資を積極的に行っており、音楽業界がAIを取り入れる上でのよいパートナーになり得ます。かつてYouTubeにはユーザーがさまざまな海賊版音源をアップロードしていたため、音楽業界の関係は複雑でしたが、近年は音楽業界に対するロイヤリティの支払いを増やしたことで関係も改善されているとのこと。ある情報筋は、このメジャーレーベルとYouTubeの契約は、将来のYouTubeのAIイニシアチブにおけるフレームワークとなる可能性があると述べました。

一方で、アーティストにとって「クリエイターが自分の声を使って自由に動画を作成できるAIツール」に参加するハードルは高く、あるレーベル幹部はBillboardに対し、取り組みに参加してくれるトップアーティストを見つけるのが難しいと語ったそうです。また、実際に動画に使われたアーティストだけでなく、AIモデルのトレーニングに使われたアーティストへの収益分配はどうするのか、アーティストがオプトアウトするオプションは付けられるのかといった点も、交渉における重要な課題となっています。

Billboardは、「契約条件は複雑かもしれませんが、情報筋によれば音楽の権利者たちは契約を成立させようと誠実に行動しているそうです。これは、AIのようなテクノロジーは避けられないものであり、音楽ビジネスが今ライセンス契約を結ぶテーブルにつかなければ、時代に取り残されてしまうという考えが支配的だからです。しかし、交渉に詳しいある情報筋は、このような態度によって音楽会社が不利な立場に置かれることにもつながっていると言っています」と述べました。

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in ソフトウェア,   ネットサービス,   アート, Posted by log1h_ik

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