AIによる音声クローン作成サービスを著作権侵害サイトとして認めるようにアメリカレコード協会が要請

アメリカレコード協会(RIAA)は、人間の歌声をデータとして学習させることでその歌声を再現するAI音声モデルを作成できるサービス・Voicify AIを著作権侵害の潜在的な脅威であるとみなし、アメリカ政府に対して「潜在的な著作権侵害市場のリスト」に追加するように提案しました。

Comment from Recording Industry Association of America
https://www.regulations.gov/comment/USTR-2023-0009-0019

RIAA wants AI voice cloning sites on government piracy watchlist - The Verge
https://www.theverge.com/2023/10/11/23913405/riaa-ai-voice-cloning-threat-copyright-ustr

Voicify AIは伴奏なしで歌うアカペラ音源を用意してアップロードしてモデルに学習させることが可能。さらに歌わせたい音源をアップロードすると、自動で歌声と伴奏を分離した上で、学習したモデルに歌わせた音源を作成してくれます。さらにYouTubeのアドレスを入力することで、その動画の曲を歌った音源も用意してくれる機能も実装されています。

例えば以下のムービーでは、イギリスの歌手・アデルの「Skyfall」を、クイーンのボーカルであるフレディ・マーキュリーにAIで歌わせた音源を聞くことができます。

Skyfall - Freddie Mercury ( AI Cover ) - YouTube

以下はマーク・マーテルによる「ボヘミアン・ラプソディ」のカバーを、マイケル・ジャクソンの歌声にAIで吹き替えた音源です。

[AI] Michael Jackson - Bohemian Rhapsody (Cover) WIP - YouTube

RIAAはアメリカ合衆国通商代表部(USTR)への提出文書で、音声ファイルから有名人の歌声を再現してしまうVoicify AIを「AI音声クローンサービス」と呼び、著作権侵害や偽造を促進しているとされる組織のリストにVoicify AIを追加するように要請しました。このリストにはAliExpress、WeChat、The Pirate Bayなどが掲載されていることで知られています。

RIAAは「ユーザーがYouTubeなどの動画をダウンロードして歌声だけのトラックをコピーした後、AIのボイスモデルを使って修正させています。無許可で行われている一連の行為は著作権を侵害しているだけでなく、アーティストのパブリシティ権も侵害しています」と述べています。

また、RIAAは「2023年には無許可のAI音声クローンサービスが急増しており、声のクローンを作成されているアーティストの権利だけでなく、ベースとなる各楽曲の音源を所有するアーティストの権利も侵害しています」と主張しました。

潜在的な著作権侵害市場のリストは、USTRによって2024年初頭に発表される予定です。ただし、記事作成時点ではAIがパブリシティ権を侵害するかどうかの議論が進んでおらず、肖像権の保護範囲も州によって異なるため、IT系ニュースサイトのThe Vergeは「2023年のリスト見直しでは、『AI音声クローンサイト』というカテゴリーを追加することすらできない可能性もあります」と述べています。