サイエンス

「甘味・塩味・苦味・酸味・うま味」に続く第6の味覚はサルミアッキに感じる「塩化アンモニウム味」である可能性


五感のひとつである味覚は摂取した化学物質が舌や口蓋(こうがい)味覚受容体と相互作用するものであり、「甘味塩味苦味酸味うま味」という5つの味が基本とされています。新たに南カリフォルニア大学とコロラド大学の研究チームが、北欧の有名なお菓子・サルミアッキなどに含まれる「塩化アンモニウム」が第6の味覚であるという証拠を発見しました。

The proton channel OTOP1 is a sensor for the taste of ammonium chloride | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-023-41637-4


A sixth basic taste may join sweet, salty, sour, bitter and umami on the tongue
https://dornsife.usc.edu/news/stories/the-sixth-taste/

New taste: Sweet, salty, bitter, sour, umami and … ammonium chloride?
https://newatlas.com/biology/tongue-detects-ammonium-chloride-as-a-basic-taste/

Scientists Think They've Identified an Unknown Taste in Human Cells : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-think-theyve-identified-an-unknown-taste-in-human-cells

味覚のうちのひとつである酸味を感じる食品は水素イオン指数(pH)が低い、つまり水素イオン濃度が高い物質であり、酸味受容体に触れると細胞膜を水素イオンが通過して電気信号が生成されます。カリフォルニア大学の神経科学者であるエミリー・リマン氏らの研究チームは2019年の研究で、Otop1というタンパク質が酸味受容体細胞に酸味を検出する能力を与えることを発見しました。

リマン氏らは新たな研究で、Otop1が塩化アンモニウムに反応するかどうかを調べる実験を行いました。塩化アンモニウムは医薬品や肥料などに使われるだけでなく、一部のアジア諸国ではスナックに添加されているほか、北欧で伝統的に食べられてきたサルミアッキに用いられています。サルミアッキ特有の「ゴムに塩と砂糖をまぶしたよう」とも評される独特の風味は塩化アンモニウムによるものであり、科学者らは以前から舌が塩化アンモニウムに強く反応することを知っていたものの、どの受容体が塩化アンモニウムを検出しているのかは不明だったとのこと。


研究チームは培養したヒト細胞にOtop1遺伝子に導入し、そのうちのいくつかを酸または塩化アンモニウムにさらしました。その結果、塩化アンモニウムが酸と同じくらい効果的にOtop1受容体を活性化することがわかりました。

さらにマウスを用いた実験では、Otop1遺伝子を持たないマウスは塩化アンモニウムを含む食品を食べても気にしませんでしたが、Otop1遺伝子を持つマウスは塩化アンモニウムを含む食品を避けることが確認されました。つまり、Otop1は酸味だけでなく塩化アンモニウムの受容体としても機能するとのことで、塩化アンモニウムが第6の味覚になり得る可能性が示唆されています。

リマン氏は、「あなたがスカンジナビア半島の国々に住んでいるなら、塩化アンモニウムの味をよく知っていて、それが好きかもしれません」と述べました。


研究チームは、塩化アンモニウムを検出する能力は有害物質を避けるために発達した可能性があると推測しています。リマン氏は、「アンモニアはやや有毒です。そのため、塩化アンモニウムを検出するために味覚メカニズムを発達させたのは理にかなっています」とコメントしています。

今回の研究結果は第6の味覚の存在を示唆するものですが、実際に「塩化アンモニウム味」を新たな味覚に追加するべきかどうかを判断するには、さらなる研究が必要です。ウェブメディアのNew Atlasは、「食べ物を『塩化アンモニウム味』と呼ぶのは、味を表現する上で魅力的な方法ではありませんが、おそらく食通たちはもっと良い名前を考え出すでしょう。いつの日か、塩化アンモニウム味が5つの基本の味に加わる日が来るかもしれません」と述べました。

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in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

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