内臓も味覚のように「食べ物を評価している」ことが判明、何を食べるべきかの判断にも影響
過去の研究により、腸が人の感情や気分に与える影響は「第2の脳」と形容されるほど大きいことが分かっています。さらに、マウスの胃に直接エサを注入して摂食行動が味覚の影響を受けないようにした実験により、内臓が脳と連携して何を食べるかを決定するメカニズムの詳細が明らかになりました。
The Brain and Gut Talk Together To Create Food's "Magic Hold" | Technology Networks
https://www.technologynetworks.com/neuroscience/news/the-brain-and-gut-talk-together-to-create-foods-magic-hold-333144
A major organ plays an unprecedented role in choosing what you eat
https://www.inverse.com/mind-body/gut-brain-axis-controls-food-choice
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ポルトガルのシャンパリモー診療センターの神経学者であるアルビーノ・オリベイラ・マイア氏によると、動物が食べ物を摂取した後の反応は大きく分けて2つに分類されるとのこと。1つ目は「食べている最中」のもので、これはその食べ物が安全なのか危険なのか判断するプロセスです。
そして、2つ目が「今後は何を食べるべきか」を判断する上で重要な学習プロセスで、オリベイラ・マイア氏はこれを「摂取後の学習」と呼んでいます。既に消化してしまった食べ物がどんな味だったのか確かめる方法はありませんが、オリベイラ・マイア氏は何らかの仕組みにより肉体が食べ物の栄養価を評価することで、個人の食べ物の好みに大きな影響を与えていると考えました。
そこで、オリベイラ・マイア氏らの研究グループは、「摂取後の学習」の影響を検証すべく、マウスを用いた実験を行いました。この実験では、マウスに2つのレバーを示し、マウスが片方のレバーを押すと「高カロリーなエサ」を、もう片方のレバーを押すと「低カロリーなエサ」を与えるようにします。また、エサを与える際はマウスに食べさせるのではなく、マウスの胃にエサを直接注入して、マウスが味を感じることができないようにしました。
実験の結果、味覚でエサを味わうことができない状況だったにもかかわらず、マウスが高カロリーなエサのレバーを押す可能性は明らかに高かったとのこと。これは、マウスのエサの好みが「味覚ではなく内臓による栄養価の評価」で決められたことを意味しています。
研究グループは次に、具体的にどの内臓が栄養価を評価しているかを検証しました。オリベイラ・マイア氏らが特に注目したのが、肝臓です。これまでの研究により、腸と脳が連絡を取り合っていることはよく知られていますが、肝臓に注目した研究はほとんどありませんでした。そこで、研究グループがマウスの体内をめぐる迷走神経のうち、肝臓と脳を接続する部分を損傷させたところ、予想どおりマウスは「摂取後の学習」を行うことができなくなったとのことです。
by Sasha the Okay Photographer
オリベイラ・マイア氏はこの結果について「腸は消化している食べ物の栄養価について十分な情報を持っていませんが、肝臓は大腸から流れてきた血液をろ過して栄養素を蓄える重要な役割を持っています。つまり、肝臓は肉体を代表する栄養センサーとして機能するのに絶好のポジションについているわけです」と話しました。
さらに、研究グループが脳のドーパミン神経の働きを調べたところ、肝臓と脳をつなぐ迷走神経が損傷したマウスでは、ドーパミン神経の反応が鈍いことも判明しました。
これらの結果について、論文の共著者であるルイ・コスタ氏は「例えば、甘い菓子を舌で味わった時にもドーパミン神経が脳の報酬系に作用することが分かっています。今回の研究により、食べ物が内臓に到達した時にもドーパミン神経が活性化し、これにより食べ物を求める行動が促されることが明らかになりました」と述べて、内臓は味覚と同様のメカニズムで食べ物の好みに影響を与えているとの見解を示しました。
また、オリベイラ・マイア氏は「今回の研究だけで何かを判断するのは早計ですが、ドーパミン受容体と肥満の関係を示唆する今回の発見は、摂食障害の理解を深めるのに役立つと考えています」と話しました。
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