サイエンス

空腹には慢性的な痛みを抑える効果があると研究者が指摘


激しい運動により筋肉の炎症を起こした時やケガをした時など、完治するまでの間、慢性的な痛みを伴うことがあります。通常、このような痛みを抱えているときは、痛み止めの薬を飲んだり、湿布を貼ったりして、痛みに対処するものです。ペンシルバニア大学のアンバー・アルハデフ氏らによると、空腹時であれば、ケガや炎症などによる慢性的な痛みを感じなくなることが、マウスの実験で示されたそうです。

A Neural Circuit for the Suppression of Pain by a Competing Need State - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867418302344

Hungry Mice Feel Less Pain | GEN
https://www.genengnews.com/gen-news-highlights/hungry-mice-feel-less-pain/81255625

Hunger is a gatekeeper of pain in the brain
https://www.nature.com/articles/d41586-018-04759-0

アルハデフ氏らの研究チームは、24時間エサを与えられなかったマウスが、空腹時に感じる痛みに対して、どのように反応するか実験を行いました。すると、空腹のマウスは、定期的に食事を与えられているマウスと比較して、慢性疾患やケガによって感じる炎症痛をほとんど感じないことがわかりました。対照的に、熱を加えたり、力を加えたりする直接的な痛みには反応したとのことです。


また、研究チームは、このときのニューロンの動きも確認しており、分析対象としてアグーチ関連タンパク質(AgRP)を発現するニューロンに着目しています。脳の視床下部には、食べ物の摂取に関与する仕組みの1つである弓状核が存在します。この弓状核は、AgRPを発現するニューロンの集団を持っており、このニューロンの集団を活性化させると「食事の必要があること」を脳に伝達します。

研究チームは、AgRPの発現によるニューロンの刺激が、炎症の痛みを感じる信号を抑制し、鎮痛効果をもたらしていることを確認しました。逆にAgRPの発現を抑えることで、炎症痛が引き起こされることがわかっており、「炎症痛の抑制」と「AgRPの発現」が相互に関係することが示されています。

また、熱などの直接的な痛みを与えると、AgRPの活性が急激に抑えられ、脳が別の行動を促すようになっていたとのこと。つまり、AgRPの発現によって、すべての痛みの感覚が抑制されるわけではないことも示されました。


アルハデフ氏は「今回の結果で示されたものは、動物たちにとって理にかなったものです。動物がケガなどで痛みを抱えていたとしても、生きるために食べ物を探すときは、炎症痛を克服するというメカニズムを持っています。痛みにはいろいろな種類があるにも関わらず、炎症痛のみを抑えるということは、とても素晴らしいことです」と語っています。

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in サイエンス, Posted by log1j_ty