Amazonに2200億円超の収益をもたらした価格を釣り上げライバルを蹴落とすための秘密計画「プロジェクト・ネッシー」の詳細が明らかに
Amazonは反競争的な慣行によりアメリカ連邦取引委員会(FTC)および複数州の司法長官から訴えられています。この訴訟の中で明らかになっていた、Amazonが行っていた秘密計画「プロジェクト・ネッシー」の詳細が明らかになりました。
Amazon Used Secret ‘Project Nessie’ Algorithm to Raise Prices - WSJ
https://www.wsj.com/business/retail/amazon-used-secret-project-nessie-algorithm-to-raise-prices-6c593706
New report details ‘Project Nessie’ algorithm flagged in FTC lawsuit against Amazon - SiliconANGLE
https://siliconangle.com/2023/10/03/new-report-details-project-nessie-algorithm-flagged-ftc-lawsuit-amazon/
Amazon Used Secret Algorithm to Raise Prices and Influence Rivals - The Messenger
https://themessenger.com/tech/amazon-used-secret-algorithm-to-raise-prices-and-influence-rivals
Amazon duped buyers out of more money with a secret algorithm
https://www.androidheadlines.com/2023/10/amazon-project-nessie-algorithm-price-increases-ftc-lawsuit.html
Amazon reportedly used a secret algorithm to jack up prices - The Verge
https://www.theverge.com/2023/10/3/23901840/amazon-project-nessie-algorithm-antitrust-ftc-complaint
2023年9月26日、アメリカ連邦取引委員会(FTC)が17の州の司法長官と共にAmazonを提訴しました。FTCによると、Amazonは買い物客向けの「オンライン・スーパー市場」と、販売者が取引を行う「オンライン・マーケットプレイス・サービス市場」の2つで反競争的行為を行っているとのこと。具体的には、Amazonは消費者向けサービスで、販売者に制裁を科して他のネットサービスでAmazonより安い価格をつけられないようにしており、マーケットプレイスではAmazonの配送サービスを利用しなければ「Amazonプライム対象商品」の資格を取得できないようにしていることなどが問題視されています。この訴訟に際してFTCが裁判所に提出した訴状には、「プロジェクト・ネッシー」という謎の言葉が記載されていたのですが、関連項目は黒塗りで非公開となっていたため、詳細は不明でした。
Amazonが規制当局と17州から独禁法違反で提訴される、「プロジェクト・ネッシー」なる謎の価格操作アルゴリズムの存在も明るみに - GIGAZINE
ウォール・ストリート・ジャーナルはAmazonの元従業員や、FTCの訴訟に詳しい人物から得た情報として、プロジェクト・ネッシーの詳細を報じています。同紙によると、プロジェクト・ネッシーは価格を釣り上げ、他の小売業者が追従するかどうかを監視するためのアルゴリズムです。競合する小売業者がAmazon側の価格釣り上げに追従してこない場合、プロジェクト・ネッシーが自動でAmazonが出品する商品の価格を通常のものに戻すとのこと。
報道によると、Amazonが2019年にプロジェクト・ネッシーの使用を中止するまで、同アルゴリズムはさまざまなショッピングカテゴリで使用されており、商品の人為的な価格釣り上げに貢献した模様。なお、プロジェクト・ネッシーを用いることで、Amazonは15億ドル(約2200億円)以上の収益を上げたと推測されています。
FTCは「Amazonは他のオンラインストアが低価格で商品を販売することを阻止するという明確な目的のためにアルゴリズムを実装した」と訴状の中で主張。Amazonの元従業員がウォール・ストリート・ジャーナルに語った内容によると、競合他社の「Amazonの割引に合わせようとする取り組み」が、他の小売業者が商品の価格を引き下げるきっかけとなったケースもあるそうです。
なお、Amazonの競合他社よりも商品の価格を極力釣り上げながら、価格の引き下げを行うプロジェクト・ネッシーのようなアルゴリズムの存在は、ジェイソン・デル・レイ氏による著書「Winner Sells All: Amazon, Walmart, and the Battle for Our Wallets」でも指摘されています。
Amazon.co.jp: Winner Sells All: Amazon, Walmart, and the Battle for Our Wallets (English Edition) 電子書籍: Del Rey, Jason: Kindleストア
FTCのダグラス・ファーラー報道官は、ウォール・ストリート・ジャーナルに対して「我々はAmazonに対して、全容を隠蔽しているプロジェクト・ネッシーに関する情報を公開し、違法な独占行為の全容をアメリカ国民に開示するよう改めて求めます」と述べました。
一方で、Amazonのグローバル公共政策担当上級副社長兼法務顧問のデビッド・ザポルスキー氏は、FTCの訴訟に対して「FTCの訴訟は、競争力のある価格帯のオファーのみを強調する当社の慣行と、他の小売業者が提示する低価格に合わせる当社の慣行が、何らかの形で価格上昇につながっていると主張するものです。しかし、これは競争の仕組みに反しています。もしFTCがこの訴訟で勝利すれば、Amazonが低価格の商品を提供し、アピールするために行っている多くの慣行を止めなくてはならず、その結果は反競争的で反消費者的なものになるでしょう」という声明を出しています。
なお、FTCは訴状の中で、プロジェクト・ネッシー以外にもAmazonは市場を支配するためにさまざまな反競争的な手法を取ってきたと主張しています。
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