メモ

オンライン空間で子どもを保護するための法案をLGBTQ+コンテンツのブロックに使うことをアメリカ上院議員が示唆


オンライン空間と現実社会の関わりが密接になるにつれて、子どもたちをオンラインの有害なコンテンツから保護することの必要性が高まっており、アメリカではプラットフォームに未成年者の保護を義務づけるKids Online Safety Act(KOSA:子どもオンライン安全法案)が議論されています。そんな子どもオンライン安全法案については、「合法的な言論やアーティストの作品がブロックされてしまう懸念がある」という問題点も指摘されています。新たに、法案を議会に提出した中心人物である共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員が、子どもオンライン安全法案を「LGBTQ+コンテンツのブロック」に使用する可能性を示唆したことが報じられています。

U.S. Senator: "Kids Online Safety Act" will target trans content
https://www.losangelesblade.com/2023/09/03/u-s-senator-kids-online-safety-act-will-target-trans-content/


Kids Online Safety Act would target trans content, senator confirms | Mashable
https://mashable.com/article/kids-online-safety-act-would-target-trans-content-says-marsha-blackburn

子どもオンライン安全法案は未成年者のソーシャルメディアへのアクセス制限や表示されるコンテンツの管理、プラットフォーム上でのプライバシー保護および保護者による監督機能の強化を目的とする法案です。法案は超党派の議員グループによって推進されており、2023年5月に提出された修正案はジョー・バイデン大統領の支持受けています

ところが、子どもオンライン安全法案については実際に子どもたちを保護する上では役に立つのかどうか疑問が呈されているほか、オンライン空間における検閲強化に使われる懸念も提起されています。デジタル空間の権利を擁護する電子フロンティア財団は、「これは安全法案ではなく、監視と検閲の法案です。上院議員と代表者にそれを通過させないように伝えてください」と強く主張しました

子どもオンライン安全法案がこれほどまでに懸念されているのは、企業が対策するべき対象が曖昧であり、自由な言論やLGBTQ+の情報やコンテンツなどが規制対象になる可能性があるからです。法案では子どもにおける「不安・うつ病・摂食障害・物質使用障害・自殺行動」などの問題を防止するため、ソーシャルメディア企業が対策を取る必要があると定められていますが、規制対象が具体的にどういうものを指すのかは曖昧です。


子どもオンライン安全法案を民主党議員らと提出した共和党のブラックバーン上院議員は、反LGBTQ+を強硬に主張するスタンスで知られています。ブラックバーン上院議員は過去に同性婚を認める法案やLGBTの従業員に対する差別を禁止する法案に反対しており、歌手のテイラー・スウィフトから「かつらをかぶったトランプ(ドナルド・トランプ前大統領)」と批判されたこともあります。

8月末に、ブラックバーン上院議員へのインタビュー動画がアメリカの保守系団体・Family Policy AllianceのYouTubeチャンネルで公開されました。動画では、インタビュアーの「今、保守派が注目するべき問題、行動を起こすべき問題のトップは何だと思いますか?」という質問に対し、ブラックバーン上院議員は「いくつかあります。もちろん、未成年の子どもたちをこの文化のトランスジェンダーやその影響から守ること。それに加えて、ソーシャルメディア上で何が起きているのか監視することです。子どもオンライン安全法案は、おそらく今年の夏には成立するかと思います」と答えています。

Sen. Marsha Blackburn's Top Priority is Social Media. Here's Why. - YouTube


このインタビューについて、「反LGBTQ+のグループが子どもオンライン安全法案をLGBTQ+コンテンツのブロックに使用できることを示唆している」として、オンライン上で懸念する声が高まっています。実際にどのようなコンテンツを規制するのかは州ごとに異なるとみられており、州司法長官が反LGBTQ+的な姿勢を持っている場合、子どもオンライン安全法案がLGBTQ+コンテンツのブロックに使用される可能性があるとのこと。


たとえば2022年にはテキサス州のケン・パクストン司法長官が、子どもたちの性別適合治療を「児童虐待」として調査するように指示したほか、2023年にはミズーリ州のアンドリュー・ベイリー司法長官が未成年者の性転換治療を差し止める緊急規制を公布するなど、一部の州司法長官は反LGBTQ+的な姿勢を打ち出しています。また、保守系シンクタンクで子どもオンライン安全法案への支持を表明しているヘリテージ財団は、「ビッグテックが子どもをトランスに変える方法」という記事で、トランスジェンダーの治療が子どもたちの自殺率を悪化させると主張しています。

自身もトランスジェンダーである記者のエリン・リード氏は、「この文脈を考えると、彼らがオンラインでトランスジェンダーのコンテンツをターゲットにするために新しい法案をどのように行使するかを予測するのは簡単です。これは単なる臆測ではありません。反LGBTQ+団体は、この法案に関する意図を明確に表明しています」と述べました。


また、たとえ立法や司法による的を絞った対策が行われなくても、ソーシャルメディアは子どもオンライン安全法案により問題視される前に、LGBTQ+コンテンツを自己検閲してしまう可能性があるとのこと。リード氏は、「ソーシャルメディアプラットフォームは、そのようなコンテンツを自己検閲することですでに知られています。LGBTを擁護する非政府組織・GLAAD報告によると、LGBTQ+コンテンツは収益化の剥奪や削除、シャドウバンに直面することがよくあります」と述べています。

なお、ブラックバーン上院議員はこの件について報じたウェブメディアのロサンゼルス・ブレードへの電子メールで、「これは誤りです。これら(子どもの保護とLGBTQ+の問題)は文脈から外れた、2つの異なる問題です。子どもオンライン安全法案は個人やコミュニティを標的にしたり、検閲したりすることはありません」とコメント。また、ブラックバーン上院議員と共に法案を提出した民主党のリチャード・ブルーメンソール上院議員も、「子どもオンライン安全法案はLGBTQコミュニティのメンバーを含む誰かを標的にしたり検閲したりしません」「スタッフと私は、LGBTQグループを含む利害関係者と広範かつ協力的な会話を行い、法案の意図をよりよく反映するように立法テキストを明確にしました」と声明で主張しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
大量のアプリやウェブサイトに子どもの保護を義務づける法案が可決され「ネットユーザーの顔スキャン」が加速する危険性 - GIGAZINE

子どもが親の同意なしにSNSアカウントを作成することを禁止する法案が可決される - GIGAZINE

GoogleやFacebookなどが参加するテクノロジー業界団体が「子どもを守るための児童安全法が子どもに害を及ぼす」として訴訟を提起 - GIGAZINE

Twitterなどが加盟する業界団体NetChoiceが「未成年者のアカウント開設時に親の許可を求める法律」を巡って州を提訴 - GIGAZINE

Appleが「子どもを守るためにスマホのメッセージや画像をスキャンする法案」への反対を表明 - GIGAZINE

デジタル世界の「自由」は徐々に失われており「DRM義務化」「VPN非合法化」「アプリ更新への政府介入」といった最悪の状況に突き進む可能性がある - GIGAZINE

「インターネット検閲」は自由なはずの国にまで広がっているとの指摘、日本ではどうなのか? - GIGAZINE

フロリダ州の「ゲイと言わないで法」に州知事が署名、低学年の子どもへのLGBT教育が禁止に - GIGAZINE

同性婚を合法化すると10代の若者の自殺率が減少するとの調査結果 - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.