サイエンス

ビタミンCなどの抗酸化物質を摂取しすぎるとがん腫瘍の増殖が促進されるかもしれない


体内に取り込んだ酸素のうちの数%は「活性酸素」となり、体内の代謝過程においてさまざまな成分と反応し、過剰になると老化やがんのリスクになる細胞傷害をもたらします。この活性酸素による影響を弱めたり活性酸素を除去したりする物質が「抗酸化物質」で、ビタミンCやビタミンA、セレン、亜鉛などが抗酸化物質として知られています。これら抗酸化物質の過剰摂取はがん腫瘍の増殖を促進する可能性があるという研究結果を、スウェーデンにあるカロリンスカ研究所の研究チームが発表しました。

JCI - Antioxidants stimulate BACH1-dependent tumor angiogenesis
https://www.jci.org/articles/view/169671


Taking dietary supplements full of antioxidants could actually help cancerous tumors grow - Study Finds
https://studyfinds.org/dietary-supplements-help-tumors/


血管新生とは、既存の血管から新たな血管を形成して血管網を構築することです。血液は細胞に栄養を供給するためのパイプであり、がん腫瘍が増殖する上でも血管新生が重要な役割を持っています。体内の一部で酸素の供給が不足すると、「低酸素誘導性因子(HIF)」と呼ばれるタンパク質が安定化し、血管を生成する遺伝子の転写が始まることで血管新生が始まると考えられています。

新たに研究チームは、血管新生の遺伝子発現がHIFだけでなく、「BACH1」と呼ばれるタンパク質によっても制御されていると報告しました。このBACH1は「酸化還元感受性転写因子」と呼ばれ、活性酸素レベルが低下すると安定化し、酸化ストレスを引き起こすことがわかっています。

研究チームはBACH1を過剰発現する細胞とBACH1を発現しない細胞を用意し、それぞれの血管新生遺伝子の発現を調査しました。その結果、血管新生遺伝子の発現がBACH1を過剰発現する細胞では増加し、BACH1を発現しない細胞では減少しました。


また、研究チームがHIFを発現しない細胞と通常の細胞を低酸素状態にし、低酸素応答を活性化するHIF-PH阻害剤を投与したところ、どちらでもBACH1が安定化したこともわかりました。研究チームは、BACH1もHIFとは別に血管新生の遺伝子発現を促す効果を持つと論じました。

さらに、研究チームが肺がんの腫瘍細胞にビタミンC・ビタミンE・N-アセチルシステインなどの抗酸化物質を投与したところ、BACH1に由来する血管新生の遺伝子発現の増加が確認されたとのこと。また、新しくできた血管に血管新生阻害剤を投与したところ、高い感受性が示されたと報告しています。


研究を主導したカロリンスカ研究所のマーティン・ベルゴ教授は「抗酸化物質が、がん腫瘍につながる新しい血管を形成するメカニズムを活性化することがわかりました。これまで抗酸化物質には健康を保護する効果があると思われていましたが、これは驚くべきことです」とコメントしています。

研究チームの一員であるティン・ワン氏は「これまで血管新生阻害剤の有効性について、多くの臨床試験で評価されてきたものの、血管新生阻害剤がよく効くケースもあれば、効果がほとんどなかったケースもあり、その結果は決して有効的といえるほど良くはありませんでした。私たちの研究は、がん腫瘍における血管新生を防ぐより効果的な方法を明らかにします。つまり、腫瘍でのBACH1レベルが高い患者は、BACH1レベルの低い患者よりも血管新生阻害剤の恩恵をより得られる可能性があります」とコメントしています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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