サイエンス

300億年で1秒しかずれない水準のストロンチウム光格子時計が完成、「秒」の再定義に必要な水準へ


中国科学技術大学のジーポン・ジア氏らの研究チームが、大学で運用してきたストロンチウム光格子時計に改良を加え、装置や環境によるずれの見積もりを9.2×10の-19乗まで小さくしたと報告しました。ジア氏らはこの性能が将来の「秒」の再定義で求められる水準に達したとしています。

Improved systematic evaluation of a strontium optical clock with uncertainty below 1×10−18 - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1681-7575/ae449e

This New Clock Is So Precise It Could Soon Redefine The Second - ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/this-new-clock-is-so-precise-it-could-soon-redefine-the-second


国際ルールでは、1秒はセシウム133という原子の決まった振動をもとに定義されています。具体的には、セシウム133が91億9263万1770回振動する時間が1秒です。一方で、光を使う「光学時計」はセシウム原子時計よりもっと細かく時間を測れる可能性があるため、新しい時間の基準の候補として研究が進められています。

ジア氏らが今回改良したのは、中国科学技術大学が運用しているストロンチウム光格子時計の一台である「Sr1光格子時計」です。ジア氏らは、この時計で装置や周囲の環境によるずれの見積もりを9.2×10の-19乗まで下げたと報告しました。サイエンス系メディアのScience Alertはこの水準について「約300億年動かし続けてもずれが1秒程度にとどまる精度」だと説明しています。


ジア氏らは時計の精度を乱す大きな要因として、周囲の物体が出す熱の放射で原子の振る舞いが少しずれる「黒体放射シフト」や、原子を閉じ込めるレーザー光そのものが時計の読みを少しずらす「格子光シフト」などを詳しく調べました。

黒体放射シフトについては、空気をできるだけ抜いた容器の中で熱がどう広がるかを装置を細かく分けてコンピューターで計算する方法で評価し、不確かさを6.3×10の-19乗まで抑えたとしています。


また、ジア氏らは原子を閉じ込めるレーザー光を太くして原子の密集を減らしました。真空容器の外に置いた装置で光を広げた結果、光の太さは従来の37µmから155µmへ大きくなったとのこと。その結果、原子同士の影響で時計がずれる量は、時計を通常動かすときの条件で-5.7×10の-19乗となり、ジア氏らは以前の研究の約30分の1まで小さくなったとしています。

さらに、ジア氏らは時計を通常動かすときの条件で格子光シフトの大きさをおよそ80.5×10の-19乗、その見積もりの幅を6.3×10の-19乗だと評価しました。レーザーの周波数を安定させる装置にゆらぎの少ない高性能ミラーを使った結果、長時間にわたって非常に安定した動作ができるようになり、3万秒平均で6.2×10の-19乗の周波数安定度に達したとのことです。

こうした改良を積み重ねた結果、この時計は「秒」の再定義で求められる「単一時計の2×10の-18乗条件」に達したとジア氏らは位置づけています。

ただし、再定義に向けては同じ基準を使う光学時計を別々の機関で少なくとも3台運用し、いろいろな誤差要因を全部合わせたずれの見積もりをそれぞれ「2×10の-18乗以下」に抑えることが重要な条件の一つだとジア氏らは説明しています。今回の成果だけで「秒」の定義がすぐ変わるわけではありません。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1b_ok

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