サイエンス

「ロングCOVID」による認知機能の低下は新型コロナ感染から2年以上も持続するケースもあることが判明


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は一部の患者において「ロングCOVID」と呼ばれる後遺症を引き起こし、感染から数カ月が経過しても強い疲労感や認知機能の低下といった悪影響が続くことが知られています。新たに、イギリスのキングス・カレッジ・ロンドンの研究チームが行った研究では、「ロングCOVIDを患う人は感染から2年が経過しても認知機能の低下が持続する場合がある」という結果が示されました。

The effects of COVID-19 on cognitive performance in a community-based cohort: a COVID symptom study biobank prospective cohort study - eClinicalMedicine
https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2023.102086


Some people's brain function still affected by Long COVID years after infection - King's College London
https://www.kcl.ac.uk/news/some-peoples-brain-function-still-affected-by-long-covid-years-after-infection

Brain Function Can Still Be Affected by COVID Years After Infection, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/brain-function-can-still-be-affected-by-covid-years-after-infection-study-finds

日本では2023年5月8日から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染法上の分類従来の「2類相当」から「5類感染症」へと移行し、感染法の上では季節性インフルエンザや水痘(水ぼうそう)、後天性免疫不全症候群(エイズ)などと同等の扱いとなりました。しかし、法的枠組みが変わったからといってCOVID-19の症状が変わるわけではなく、発症すれば高熱や全身の筋肉痛などさまざまな症状が現れます。

また、COVID-19の後遺症として知られるロングCOVIDは集中力や記憶力、認知機能などの低下といった症状を引き起こすことが知られています。その社会的影響は深刻なものだと危険視されており、世界中で数千万人がロングCOVIDを患っているという推定もあります。

新型コロナウイルスの症状が長期にわたって続く「ロングCOVID」は知られている以上に危険だという指摘 - GIGAZINE


そこでキングス・カレッジ・ロンドンの研究チームは、2020年にCOVID-19を発症した患者を対象に2021年と2022年に実施された認知タスクパフォーマンスの結果を分析しました。テストでは記憶力・注意力・推論能力・情報処理速度・身体の制御といった12項目について、被験者の能力を評価したとのこと。実験への参加を呼びかけた被験者のうち2021年のテストを完了した人は3335人で、2021年と2022年のテストをいずれも完了した人は1768人でした。

分析の結果、COVID-19の症状が12週間以上続くロングCOVIDを患う被験者で最も認知能力の低下が著しく、10年の老化に匹敵する悪影響が確認されました。また、2回目のテストは被験者がCOVID-19を発症してから約2年後に実施されましたが、ロングCOVIDを経験している人では認知機能の改善がみられなかったと研究チームは報告しています。

論文の筆頭著者であるキングス・カレッジ・ロンドンのNathan Cheetham博士は、「今回の結果から、COVID-19を発症した後に長期間症状を抱えて生活していた人々において、言葉や図形を思い出す能力などの精神的プロセスに新型コロナウイルスが及ぼす影響は、最初の感染から平均2年近くが経過した時点でも検出可能であることが示唆されました」と述べています。


一方で、ロングCOVIDを患っていた被験者であっても、自分自身が「新型コロナウイルスから完全に回復した」と感じていた場合、COVID-19を発症したことがない人と同程度の認知機能を持っていたこともわかりました。これは、たとえロングCOVIDになってしまったとしても、時間の経過と共に認知機能が回復する可能性があることを示しています。

Ceetham氏は、「COVID-19が完全に回復したと感じている人のテストでは、たとえ数カ月間にわたる症状がありロングCOVIDを経験しているとみられていても、成績に影響が出なかったという結果は朗報です。これはCOVIDによって脳機能が最も影響を受けた人々をモニタリングし、認知機能の症状がどのように続いているのかを確認し、回復に向けたサポートを提供する必要性を示しています」と主張しています。

キングス・カレッジ・ロンドンの臨床老化研究者であるクレア・スティーブスは、「最初の感染から2年が経過しても完全に回復したとは感じられず、コロナウイルスの長期的な影響によって人生が影響を受け続けている人がいるという事実があります。なぜこのようなことが起こるのか、そして患者を助けるために何ができるのかを理解するためには、もっと研究が必要です」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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