サイエンス

新型コロナウイルス感染症の後遺症「ロングCOVID」はセロトニンの枯渇に関連しているという研究結果が示される


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した患者の中には、疲労感や息切れ、認知機能の低下といった症状が感染から数カ月以上も継続する「ロングCOVID」という後遺症に苦しむ人が多数いることが報告されています。新たに、ペンシルベニア大学の免疫学者アンドレア・ウォン氏らの研究チームが、ロングCOVIDに苦しむ人はセロトニンが不足している可能性があることを発表しました。

Serotonin reduction in post-acute sequelae of viral infection: Cell
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(23)01034-6


A Crucial Pattern Behind Long COVID May Have Been Identified : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/a-crucial-pattern-behind-long-covid-may-have-been-identified

COVID-19の後遺症と考えられるロングCOVIDは、慢性的な疲労感や息切れ、関節痛、頭痛といった身体的症状が現れることに加えて、「ブレイン・フォグ」と呼ばれる、頭にもやがかかったような感覚がして、認知機能や集中力が低下するといった症状があることが報告されています。

ウォン氏らの研究チームは、ロングCOVID患者58人の血液サンプルを収集し、分析を行いました調査の結果、ロングCOVIDに苦しむ被験者と、ロングCOVIDにならず完全に回復した対照群の被験者の間には、さまざまな違いがあることが発見されました。

ロングCOVID患者では、ドーパミンやノルアドレナリンの制御を行い、精神を安定させる働きをするほか、睡眠や体温調節などに関与する神経伝達物質である「セロトニン」のレベルが減少していることが明らかになりました。また、ロングCOVID患者の便からは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の残骸が検出されたことも報告されています。


研究チームによると、ロングCOVIDに関連するウイルス性の物質が、患者の体内でウイルスから身を守るためのシグナル伝達タンパク質である「インターフェロン」を体内の免疫系に対して過剰に送り出す引き金になるとのこと。過剰に放出されたインターフェロンは、体内で炎症反応を引き起こし、腸内でセロトニンを作るためのアミノ酸である「トリプトファン」の吸収が阻害されてしまいます。

また、炎症が長引くと、セロトニンを体中に運ぶ役割を持つ血小板の働きが阻害されます。その結果、体内でのセロトニンの循環が悪化し、脳や腸、その他の臓器の間で信号を送る迷走神経の働きが悪くなってしまいます。

研究チームのマーヤン・レヴィ氏は「ロングCOVIDに関する『ウイルスが体内に残る』『炎症が長引く』『迷走神経が機能障害を起こす』などの仮説は、『セロトニンレベルの減少』という単一の原因によって関連付けられている可能性が示唆されました」と述べています。

Our findings suggest that several of the current hypotheses for the pathophysiology of #LongCOVID (viral reservoir, persistent inflammation, hypercoagulability, vagus nerve dysfunction) might be linked by a single pathway that is connected by serotonin reduction. (8/10) pic.twitter.com/cVjq4OWa2N

— Maayan Levy (@MaayanLevy_Lab)


研究チームはさらに、意図的にセロトニンレベルを低下させたマウスを用いて記憶力に関するテストを行いました。すると、マウスの迷走神経の活動が抑制されただけでなく、記憶力テストの成績も悪化しました。その後、研究チームがマウスのセロトニンレベルを回復させたところ、迷走神経の機能障害は和らぎ、記憶力テストの成績も向上しました。

レヴィ氏は「今回の発見が、COVID-19の診断やモニタリング、治療のための新たなツール開発に必要な臨床研究につながることを期待しています」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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