英語が母語ではない研究者は科学誌を読むのに2倍の時間がかかる
科学分野で共通言語として英語が用いられていることは、英語を母語としない研究者の貢献に対する障壁となっています。これまで、英語を母語としない研究者のキャリア形成にどれぐらいの影響が出ているのか定量化した研究はほとんどありませんでしたが、クイーンズランド大学の研究者らにより、「英語の論文を読むときにネイティブスピーカーと比較して2倍の時間を費やしている」などの事実が明らかになりました。
The manifold costs of being a non-native English speaker in science | PLOS Biology
https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3002184
The true cost of science’s language barrier for non-native English speakers
https://doi.org/10.1038/d41586-023-02320-2
クイーンズランド大学の天野達也氏らは、少なくとも査読済みの英語論文を1本以上執筆している、8カ国の環境科学の研究者908人を対象として調査を行いました。
研究では、英語能力がそれほど高くない国出身の研究者は、英語が母語の研究者に比べて論文執筆にかかる時間が50%ほど多いことがわかりました。
また、論文を読むときには90%ほど長い時間を必要とすることも明らかになりました。
天野氏はイギリスやオーストラリアで長年働いたため、ネイティブスピーカーが書いたものに思えるほどの英語論文を書くことができますが、「舞台裏では、そのレベルに到達するまでに非常に多くの時間を費やさなければなりません」と科学誌のNatureに述べています。
調査は査読プロセスに関しても行われ、英語が母国語ではない研究者はライティング問題を理由として論文を却下される頻度が、母語話者に比べて2.5倍であることもわかりました。
コロンビア人でブラウン大学古気候学者のリナ・ペレス・エンジェル氏によると、エンジェル氏の英語が研究の質に疑問を投げかけたり、ラテン系・ヒスパニック系のファミリーネームに基づいた方法で厳しくフィードバックを送ってきたりするケースがあるとのこと。
エクアドル人生態学者のポーラ・イトゥラルデ・ポリット氏は、問題が論文やプレゼンに限らず、学者になるプロセスそのものにも存在していると指摘。英語が堪能ではないことによって、研究プロジェクトに資金を提供してもらうための助成金申請に時間がかかり、間違いが増えることによってアドバイザーによるレビューにさらに時間がかかると述べています。
また、学会での発表において、同じプレゼンテーション時間を与えられてもネイティブスピーカーとそれ以外では言えることが異なってくるとのこと。
天野氏は「英語を母国語としない人が世界人口のほぼ95%を占めています。私たちがその95%を支援しなければ、多くの世界的な課題を解決することはできないと確信しています」と述べました。
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