InstagramのTwitter代替アプリ「Threads」はプライバシー面の問題でEUではまだリリースされない
InstagramアカウントでTwitterライクなテキストベースのコミュニケーションが取れる「Threads」がついに登場しました。1日のツイート閲覧可能件数に制限が設けられるなど、日に日に使いづらくなっていくTwitterの代替アプリとして期待されているThreadsですが、「プライバシー面は悪夢のよう」と海外メディアのTechCrunchが報じています。
Meta’s Threads app is a privacy nightmare that won’t launch in EU yet | TechCrunch
https://techcrunch.com/2023/07/05/threads-no-eu-launch/
Appleの提供する公式アプリストアであるApp Storeでは、2020年12月からアプリがどのようなユーザーデータを収集しているかを明記する「プライバシーラベル」を導入しています。このプライバシーラベルの登場により、一部のアプリはユーザーデータを収集し過ぎなのではないかと批判されるようになりました。
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FacebookやInstagramを開発・運用するMetaによる新しいSNSアプリのThreadsも、このプライバシーラベルによりどのようなユーザーデータを収集しているかが明らかになっています。Threadsは収集可能なユーザーデータをほぼすべて収集しているということで、ユーザーからは皮肉を込めて「Threadsは私の母親よりも私について知っています」というツイートが投稿されています。
Threads Privacy Report knows more about me than me own mum! 👀 pic.twitter.com/fxQJDK1sTk
— Basic Apple Guy (@BasicAppleGuy) July 4, 2023
TechCrunchは「Threadsの開発元であるMetaは、ウェブユーザーのトラッキングおよびプロファイリングを行い、行動広告のマイクロターゲティングツールを通じてユーザーの注目を集めることで収益を得ていることを考えると、これは驚くべきことではありません」と指摘。
また、Metaは2023年初頭に「FacebookとInstagramでユーザー追跡広告を強制表示していた」ことがEUの一般データ保護規則(GDPR)に違反していたとして、3億9000万ユーロ(約610億円)の罰金を科されています。そのため、EUにおいてThreadsをリリースできるかどうかについては「疑問が生じる」とTechCrunchは指摘しました。
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その後、上記の訴訟においてMetaは「広告用データの処理に関する正当な利益」を主張していましたが、EUの最高裁判所はMetaの主張する法的根拠は同社の行動広告を掲載するのに適切なものではなく、ユーザーに同意を求める必要があるという判決を下しました。EUでは健康データなどの機密情報を処理するには、GDPRに準拠するために、高い基準の明示的な同意をユーザーに求める必要があります。つまり、Metaは機密データを収集するならば、ユーザーに許可を求める必要があるというわけです。
さらに、EUのデジタル市場法やデジタルサービス法では機密データを広告に使用することが全面的に禁止されており、広告プロファイリングのためにデータを組み合わせる場合、企業側はユーザーに明示的な同意を求める必要があります。
しかし、Metaはユーザーにユーザートラッキングやプロファイリングを拒絶するオプションを一切提供しておらず、収集したユーザーデータを行動広告ビジネスに当たり前のように活用しています。そのため、Metaの既存の行動広告ビジネスは、EUにおいて法的不確実性が今後さらに増大する可能性があると、TechCrunchは指摘。
加えて、MetaはEUのFacebookユーザーのデータをアメリカのサーバーに転送したことがGDPRに違反しているとして、12億ユーロ(約1880億円)の罰金を科せられています。これはFacebookに対して科せられた罰則ではあるものの、EUユーザーのデータを適切に保護(エンドツーエンドの暗号化など)していない場合は同じ罰則を適用される可能性があり、Threadsにはそのようなプライバシー保護機能は搭載されていません。
Metaに過去最高の罰金1800億円が科される、Facebookからの個人データ転送で - GIGAZINE
MetaがEU法に準拠するには既存の行動広告ビジネスを根本から変える必要がありますが、2023年7月6日にリリースされたThreadsが多種多様なユーザーデータを収集していることを考えると、「Metaの計画にEU法に準拠するという選択はないようだ」とTechCrunchは指摘しています。
さらに、「明らかなことは、ThreadsはEUではまだリリースされないということで、そして恐らくThreadsがEUでリリースされることはないだろうということです。少なくとも、Metaがユーザートラッキングをユーザーの選択制にするという根本的なアプローチ変更を取らない限り、EUでリリースされることはないでしょう」とも記しています。
実際、Independent.ieがアイルランドのデータ保護委員会(DPC)に問い合わせたところ、「MetaがThreadsをEUでリリースする予定は現時点ではない」という回答が得られたそうです。The Guardianも、Metaの内部情報筋からの話として「法的不確実性を理由にMetaはEUでのThreadsのリリースを延期した」と報じています。なお、TechCrunchはMetaに対してThreadsをEUでリリースする予定があるかを問い合わせていますが、回答は得られなかったそうです。
一方で、EUから離脱したイギリスではThreadsがリリースされる予定となっています。ただし、イギリスのデータ保護制度は依然としてGDPRに基づいているため、技術的に言えば個人データの処理に関する問題はイギリスでも顕在化する可能性があります。一方で、イギリスのデータ保護監視機関であるICOは悪名高いほど監視広告業界による組織的侵害に対して無関心であるとTechCrunch。そのため、MetaはイギリスでのThreadsのリリースを決めた可能性があると指摘されています。
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