【訃報】リチウムイオン電池開発の第一人者のジョン・グッドイナフ氏が100歳で死去

リチウムイオン電池の共同開発者として知られ、2019年に吉野彰氏らとともにノーベル化学賞を受賞したアメリカの材料科学者、ジョン・グッドイナフ氏が2023年6月25日(日)に亡くなりました。100歳でした。

UT Mourns Lithium-Ion Battery Inventor and Nobel Prize Recipient John Goodenough - UT News
https://news.utexas.edu/2023/06/26/ut-mourns-lithium-ion-battery-inventor-and-nobel-prize-recipient-john-goodenough/

Lithium-ion battery creator John Goodenough dies at 100 | Engadget
https://www.engadget.com/lithium-ion-battery-creator-john-goodenough-dies-at-100-171553322.html

Battery boffin John Goodenough powers down • The Register
https://www.theregister.com/2023/06/26/john_goodenough_obit/

イギリスのオックスフォード大学教授として在任中の1980年にグッドイナフ氏は、物理学者の水島公一氏らとともに、リチウムイオン電池の正極の材料として、リチウムと酸化コバルトの化合物であるコバルト酸リチウムなどのリチウム酸化物を提案しました。コバルト酸リチウムの導入によって、リチウムイオン電池におけるエネルギー密度が向上し、従来の鉛蓄電池やニッケルカドミウム電池と比較してバッテリー容量が約2倍に拡大したとされています。

グッドイナフ氏らの発見によって、リチウムイオン電池において安定して扱いやすい正極の使用を可能にする炭素ベースの開発につながりました。

その後、グッドイナフ氏らの発見をもとに旭化成工業の吉野彰氏らが1985年、炭素材料を負極として、リチウムを含有するコバルト酸リチウムを正極とする新しいリチウムイオン二次電池の基本概念を確立しました。

リチウムイオン電池は携帯電話やコンピューター、ペースメーカー、電気自動車など日常のあらゆるデバイスで用いられており、いまや現代生活では欠かせない存在にまで成長しました。

2011年にグッドイナフ氏はアメリカ国家科学賞を受賞しただけでなく、2019年にはリチウムイオン電池の開発における功績が認められ、グッドイナフ氏と吉野氏らに対してノーベル化学賞が贈られています。94歳でノーベル化学賞を受賞したグッドイナフ氏は当時、「97歳まで生きれば何でもできる」と語っていました。

グッドイナフ氏は90歳を超えてもなお精力的に研究に取り組み、2017年には爆発や発火の心配のない新型バッテリーを発表しました。

しかし2023年6月26日、グッドイナフ氏が教員を務めていたテキサス大学オースティン校は、グッドイナフ氏が6月25日に亡くなったことを発表しました。テキサス大学によると、グッドイナフ氏はテキサス州・オースティンのアシスティッド・リビングで亡くなったとのこと。死因は明らかにされていません。

テキサス大学オースティン校のジェイ・ハーツェル学長は「優秀な科学者であったグッドイナフ氏が科学界に残した遺産は計り知れません。彼の発見は世界中の何十億人もの人々の生活を改善しました」と述べています。さらに「彼は何十年にもわたって科学研究の最先端を進み、革新的なエネルギー貯蔵ソリューションへの探求を止めることはありませんでした」と振り返っています。

またテキサス大学コックレル工学部のアルムガム・マンティラム教授は「グッドイナフ氏は現代で最も偉大な頭脳の一人であり、常に私たちにインスピレーションを与えてくれる人物でした。私はこれからもグッドイナフ氏と過ごした時間を大切にしていきます」と述べています。