「ホラーを書くならシェイクスピアに学べ」というアドバイス
理解を超えた超自然的な出来事や、読者の不安や恐怖をあおるゴーストや怪物、心臓をきゅっとつかまれるような恐ろしい事件や犯罪者など、ホラー作品は長く愛され続けています。ホラー作品の魅力を高めるには、より生々しく恐怖を誘う描写力が必要ですが、そのような技術を会得するためにはイギリスのルネサンス演劇を代表する劇作家であるウィリアム・シェイクスピアのストーリーに学ぶべきというアドバイスを、作家のニコラス・ビンゲ氏が語っています。
What Teaching Shakespeare Taught Me About Writing Horror ‹ Literary Hub
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ビンゲ氏はスコットランド在住の教師兼作家で、2023年4月にはアメリカで初めて小説「Ascension」を出版しました。「Ascension」は突然現れた山の謎に科学者たちが立ち向かうホラー・ミステリーとなっていますが、ビンゲ氏はこの作品を含む自身のスリラーやホラーの執筆の際に、「シェイクスピアの教え」が強く影響していると語っています。
シェイクスピアは四大悲劇「ハムレット」「マクベス」「オセロ」「リア王」で知られているように、悲劇作家としても有名です。ビンゲ氏によると、シェイクスピアの悲劇作品における描写はかなり恐怖をそそる内容として優れており、ビンゲ氏は少なくとも悲劇を書いている時は、シェイクスピアをホラー作家として認識しているとのこと。ビンゲ氏は「おそらく彼は、英語全体においてゴシック、ひいては現代のホラーの伝統に、最も大きな影響を与えた人物かもしれません」と述べています。
ビンゲ氏は、シェイクスピア最初期の悲劇作品である「タイタス・アンドロニカス」を例に挙げて、ホラー作家としての魅力を解説しています。「タイタス・アンドロニカス」は、ローマ帝国の武将・タイタスが古代ゲルマン系民族であるゴート族との戦争に勝利した結果、ゴート族の生き残りである元女王から仕返しを受け、さらにその報復として元女王の一族を殺害する、というストーリーになっています。この「元女王からの仕返し」「タイタスの報復」がともに、絞首刑や斬首、生き埋めなどを含むかなり陰惨な内容となっており、「シェイクスピア全作品中、最も残虐で暴力にあふれている」と言われています。このような内容にもかかわらず、「タイタス・アンドロニカス」は後期作品ほどの高い評価を受けていないことから、「観客の感情を揺さぶるには、表面的な殺害や肉体的な痛みよりも良い方法があると、シェイクスピアは作家として成長するにつれて学んでいったのです」とビンゲ氏は指摘しています。
一方で、「マクベス」は戦場で戦果をあげたマクベスが、迷いながらも王を殺害して国王となり、罪悪感や亡霊への恐怖から不安を高めていくストーリーとなっています。最後には予言を受けたとおりにマクベスは敗死することになりますが、「タイタス・アンドロニカス」のように陰惨な暴力をマクベスが行うわけではなく、マクベスの死も過度に暴力的なものではありません。しかし、高貴な戦士だったマクベスがアイデンティティや道徳心、正気を失っていく様子は、観客を作品に巻き込んで強い恐怖をもたらします。「マクベス」には魔女、幽霊、荒涼とした風景、古城など、後にゴシックホラーのインスピレーションとして主流となる要素が数多く含まれている点でも優れています。
また、「オセロ」は登場人物たちの信頼について不確実性をあらわにするようなストーリーで、それほど恐ろしい設定ではないにもかかわらず、恐怖を与えるシェイクスピアの高い能力が出ているとビンゲ氏は述べています。実際に、19世紀には「オセロ」で悪巧みを働くイアーゴという人物を演じた俳優が、演技の途中で激怒した観客に射殺された事件もあったそうです。「オセロ」のラストシーンでは、内なる葛藤の激しさから登場人物が窒息死してしまうシーンは「『タイタス・アンドロニカス』のどんな残虐シーンよりもひどい」とビンゲ氏は表現したうえで、「登場人物が見せる精神のもろさや強い感情は、私たちの魂の奥深くに住んでいる恐怖を物語るものがあります」とシェイクスピアの力について解説しています。
ビンゲ氏はシェイクスピアの悲劇から得られる教訓として「見る人を恐怖させるものは、ベッドの下に潜む化け物や暗い棚の中にいる魔物でもなく、荒れ果てた荒野の上に現れるものでもありません。本物の恐怖とは、私たちが愛して信頼していると思う人々の中に住んでいます。それは私たちの心の奥底で生まれ、欲望や疑念、自己正当化などの中で繁栄します」と語っています。
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in メモ, Posted by log1e_dh
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