「キャラを深掘りする」「読者がキャラの感覚を体験できる」など優れた戦闘シーンを書くために意識すべきポイントとは?

ケンカ、武道の試合、戦争やファンタジーなバトルを含め、「戦闘シーン」が物語で重要な場面となることは多いはず。しかし、迫力ある動きを絵で伝えられるアニメやマンガと異なり、小説の文章で戦闘シーンを描写するのは難しいもの。そんな優れた戦闘シーンを書くためのアドバイスを、ニューヨーク大学でフィクション分野の修士号を取得した作家のリタ・チャン・エッピグ氏が語っています。
Rita Chang-Eppig on How to Write a Fight Scene ‹ Literary Hub
https://lithub.com/rita-chang-eppig-on-how-to-write-a-fight-scene/

エッピグ氏は「文学小説では戦闘・格闘のシーンはあまり見られません。ほとんどの人が、少なくとも兄弟や姉妹の争いの中で肉体的な争いをしているにもかかわらず、闘うシーンが書かれないのは不可解です。おそらくそれは、どれだけ経験があっても書くのが妙に難しいからかもしれません」と、戦闘シーンを書くことの難しさを述べています。
エッピグ氏自身は肉体的な争いに参加したことはないものの、ボクシングで試合形式のスパーリング練習をした経験はあり、「そこで学んだいくつかのことが、戦闘シーンで何が起こるかを理解するのに役立っていると思いたいです」と話しています。またエッピグ氏は、素晴らしい戦闘シーンを描いた作品としてケイティ北村氏の「The Longshot」を挙げ、その理由として「北村氏は卓越したダンサーであり、総合格闘技に熱心な興味を持っているため、ほとんどの人が理解していない方法で身体性を理解しています」と説明しています。すなわち、戦闘シーンを魅力的に描写したい場合、自ら体を動かしたり興味を持って実際の戦闘を見たりといった方法で、身体の動きについてよく知る必要があるとエッピグ氏は指摘しています。

合わせて、「戦闘シーンが何を意味しているか」が重要だとして、エッピグ氏は大きく分けて3種類の例を挙げています。
一つ目は、プロットとキャラクターを前進させる手段として、戦闘シーンを利用するという手法です。ケンカや争いのような戦闘は、キャラクターの感情が極度にストレスにさらされたり、我慢していたものが爆発したりした場合に起きるため、キャラクターの性格が暴露される場面として描くことができます。また、戦闘スタイルによって、「正々堂々のぶつかり合いを望む人」「砂を投げつけるなど臨機応変に勝ちを求める人」など、キャラクターの本質的な性質をあらわにすることもできます。
また、戦闘を行う人の内心を描写することも、戦闘シーンによりキャラクターの性質を浮き彫りにする重要なポイントとなっています。闘うための構えをした時、握りこぶしならボクサーを連想させ、開いた両手は組技系の格闘術を連想するように、熟練した格闘家同士だと、最初の打撃が交わされる前に精神的なプロセスがいくつも含まれています。「このような思考プロセスを説明することで、物語的に得るものがたくさんある可能性があります」とエッピグ氏は述べています。

戦闘シーンを生かす二つ目の例として、戦いの結果として起きる展開に焦点を当てる方法があります。体にケガや損傷ができたり、自信の喪失や心的外傷後ストレス障害(PTSD)など精神的なダメージが残ったり、あるいは自我や人間関係、意志決定などに影響したりと、キャラクターの状況を大きく変化させる結果につながると、戦闘シーンが効果的になります。
さらにエッピグ氏は、三つ目の優れた戦闘シーンの例として、キャラクターに与えられる傷やダメージが、読者を物語により引き込むために用いることができると解説しています。エッピグ氏は「最高の戦闘シーンでは、読者がそのキャラクターの体内にいるかのような感覚を体験することもできます」と語っており、そのような素晴らしい戦闘シーンを描いた例として、ジョン・アーヴィング氏の「ガープの世界」という小説を挙げています。

優れた戦闘シーンでは、耳鳴りや手のうずき、傷の痛みなど、キャラクターが感じていることを、読者も感じて顔をしかめてしまうような感覚が発生します。優れた戦闘シーンの例として、エッピグ氏は「ガープの世界」の以下のシーンを引用しています。以下は、襲ってきた兵士を看護師がメスで撃退するシーンを描写していますが、兵士の動作は「swiped(振り回す)」であるのに対し、女性の看護師の動作は「pawed(引っかく)」とすることで、動詞の選択により各キャラクターの性質を明らかにしつつ、リアリティを出しています。それと同時に、襲われた看護師が耳鳴りを覚え、頭を打ったことでめまいを感じるなど、戦闘によるダメージをしっかり描写しています。アーヴィング氏は元レスリング選手でレスリングコーチの経験もあることから、実際に頭をケガした時の感覚を熟知しており、それにより真に迫った戦闘シーンを描写できているとエッピグ氏は指摘しています。
The soldier screamed. On his feet and falling back, he swiped at Jenny's head with his uncut arm, boxing her ear so sharply that her head sang. She pawed at him with the scalpel, removing a piece of his upper lip the approximate shape and thinness of a thumbnail.
「右ジャブを放ったが、それをかわして左膝で反撃した。彼はそれを回転してよけた」というように、単に打撃を書いただけの戦闘シーンは「イライラさせるもの」とエッピグ氏は述べています。戦闘シーンは動きを視覚化するだけのものではなく、キャラクターを強調したり、物語をさらに深く進めたり、読者をより没入させたりといった効果を期待できます。エッピグ氏は「戦いについて読むことは、見ることほど刺激的ではないかもしれませんが、それよりもはるかに満足感を与えることもできるのです」と語っています。
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